テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
バスケ部の放課後練習が終わった体育館。
日はすっかり落ちて、窓の外は藍色に染まっていた。
部員たちはすでに引き上げ、体育館には2人だけ。
残ってシュート練習をしていた望帆は、
リバウンドを取ろうとして大きく踏み出した───その瞬間。
佐嶋 孝則(さじま たかのり
ガタンッと音がして、ぐらりと視線が傾いた。
支えられたのは、孝則の腕だった。
彼の胸にしがみつくような形で、望帆は体勢を整える。
ドキン───と、胸の奥が跳ねた。
洞内 望帆(ほらない みほ
佐嶋 孝則(さじま たかのり
孝則の声は、少しだけ怒っているように聞こえた。
洞内 望帆(ほらない みほ
反射的にそう返してしまう。
素直になれない自分が、また嫌になる。
2人の間に、少しだけ沈黙が流れた。
お互いの息が近い。距離も近い。
望帆の耳が、顔が、じんわり熱を帯びていく。
洞内 望帆(ほらない みほ
望帆が目を逸らしながら言うと、
孝則は一瞬だけ目を見つめ返したあと、ふっと身を引いた。
佐嶋 孝則(さじま たかのり
そう言って、背を向ける彼の背中を、望帆はそっと見つめた。
洞内 望帆(ほらない みほ
リバウンドよりも、リングの音よりも、
佐嶋の鼓動の方が、耳に残って離れなかった。