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時だった
「おーい、そこのお前ちょっといいか?」……ん?俺のことかな……なんか呼ばれた気がするが俺は気にせず弁当を食べようとする
「おいってば!」
今度は肩を叩かれたので渋々振り返るとそこにはいかにもヤンキーですというような風貌をした男子生徒が立っていた
「何ですか……」
俺は面倒事に巻き込まれる前にさっさとここから立ち去ろうとそそくさと教室から出ていこうとする
「ちょっ、待ってくれよ」
すると男は慌てたように追いかけてきた
「なんなんだよあんた、何か用でもあるのか?」
「いやぁ、いきなり声かけて悪かったと思ってさ、そんなことよりも少し話があるんだ」
「だからなんなんだ?」
そんなことよりも俺は早く帰りたいんだ! 目の前にいる白衣を着た女は、俺の話を聞いていなかったのか?
「あのなぁ……さっきから言ってるが、これはお前たちのためでもあるんだよ!」
「何回同じ話をすれば気が済むんですか!? こっちにも予定があるんですよ!!」

そう、俺は今日中に家に帰って明日提出予定のレポートを仕上げなければいけないのだ!! こんなところで時間を無駄にしている暇はない!
「だーかーらっ! いい加減にしろよお前!!」
「……?」
「だからなんでそこで首傾げるんだよ!」
「……」
「うぉい無視すんな!! あぁもう分かったよ、じゃあ何だよ。言いたいことあんならさっさと言っちまえってんだ」
「……」
「ほれほれ言ってみろ? 聞いてやるから。まぁどうせろくなことじゃないだろうけど」
「……」
「おいっ!? 今なんか言ったのか!? おい聞こえてんぞこらッ!!!」
「あー……えっと、じゃあこうしましょうよ。あたし達三人は友達で、たまたま一緒に遊びに行く約束をしてたけど、ちょっとドタキャンされたんでしょう? それで、あたし達は暇を持て余してて、なんとなくゲームセンターに入ったんです」
「いやお前それ完全に俺のことディスってんじゃねえか!」
「だから違うんだってば! そういうことじゃないんだってばぁっ!! ああもう、どうすれば分かってくれるのぉっ!!」
「何言ってんのか全然わからんぞ……! なあおい、マジで大丈夫なのかよこいつ?」
「……うん。私もよく分からない」
「そっか……じゃあ俺達みたいなボランティアの他にも、天獄と戦う奴らがいるんだな?」
「はい、その通りです。先程お伝えしましたが、彼らは「護翼軍」と呼ばれています。正式名称はもっと長いのですが……」
「いーよそんなん長ったらしくて覚えられねえって!要はその護羽軍とか言う連中に、あのトカゲ野郎どもを倒して欲しいって話だろ!?」

「えっと、ここかな?」
「うん。ここで合ってると……思うけど」
そこは、小さな部屋だった。窓はなく、電灯だけが頼りなく照らす薄暗い空間だ。壁際に並んだ棚の上には用途不明の小物類が置かれており、中央のテーブルにも工具箱が置かれている。
部屋の主であろう人物は、どうやら奥にいるらしい。こちらに背を向ける形で座っているようだ。
「あのー? すみませーん! ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど!」
少年――真紅郎は扉の前で声をかけるが返事はない。少し強めにノックしてみても同じ結果だった。
「いないのか……うぅっ!?」
真紅郎は思わず鼻を押さえて顔をしかめる。強烈な臭いが漂っていたからだ。慌てて袖口で鼻を覆うと、部屋の主に問いかける。
「あ、あのぉ~! 誰かいませんかぁ~!」
するとようやく反応があった。部屋の主だろう人物の声が聞こえてくる。
「なんじゃい、うるさいのう」
どこかしゃがれている老人のような口調。おそらく男性だろうと当たりをつけると、真紅郎は扉越しに声をかけた。
「あの、ここはどこですか?」
「ふん、見れば分かるじゃろ。ワシの部屋じゃよ」
確かに見ての通りだが、そんなことは聞いていない。質問の意図を理解していない様子に苛立ちを覚えたが、どうにか堪えながら再度尋ねることにした。
「そうではなくてですね、ボクたちはどうしてここにいるんですか?」
「なんでってそりゃあお前さんらが、勝手に入ってきたからじゃないか」
その返答を聞いて真紅郎は確信する。
やはりこの部屋に自分以外の誰かがいるのだ。それも複数人の気配がある。

「死なずの薬」を売りさばく裏社会の連中に そして今、人類の新たな希望たる彼ら彼女らが集う場所がある。そこは、世界唯一の特別収容施設にして、人類最後の砦。そこの名は、東京拘置所。通称、特監。咎人の集まる監獄だ。
――――――
「……つまり、僕達は、何の為に生まれてきたのか?」
そう言って、目の前の少女は首を傾げる。
「それって、そんなに大切かなぁ?私、あんまり興味無いかも」
僕は答えられずにいた。少女の言葉の意味を理解してしまったからだ。僕の中の何かが崩れ去りそうだった。
「そんなこと……できるわけがない!」
思わず声が出た。少女は悲しげな表情を浮かべると僕に背を向けた。
「できない? なぜ?」
「だって、死んだらおしまいじゃないか! なのにそれを無理やり引き出すなんて」
「ふぅん」
少女は少し考える素振りを見せると再び口を開いた。
「じゃあ君はどうして生きているんだい?」
「えっ」
思いがけない質問に面食らう。なんと答えればいいのかわからない。そもそも僕は何のために生きているのだろう。
「生きるってことはね、死んでいないということだよ。君はまだ生きてここにいるんだ」
そう言い放った男がいる。
彼は、今や人類の半数を殺し尽くすことに成功した殺人鬼だ。彼はある日突然、無差別な大量殺戮を始めた。人々は彼をこう呼んだ。死神、と そんな彼の名を知っているか? 答えはノーだ。知る由もない。何故なら彼にその名は無いからだ。名前など、とうの昔に捨ててしまったから。ただ、一つだけ分かることがあるとすれば、彼が「殺人鬼」であることだろう。
「……っ!!」
「おっと!危ないよ!」
彼は今日も人を殺める。殺すことに躊躇いはない。だって生きているから。死にたくないから。殺してでも生きたかったから。だから、彼は殺す。目の前にいる、自分よりも弱い相手を。
「あーあ……逃げられちゃった……」
今日も、また1つ命が失われた。
***
「ん?」
彼は不意に足を止める。そこは、路地裏だった。ゴミ箱の中を漁っている小さな生き物を見つけたからだ。薄汚れてボロ布のような衣服に身を包んだ子供だ。
「どうした?腹が減っているのか?」
声をかけてみる。こちらに気付いた子供の瞳が大きく見開かれる。
「……誰ですか?」
「俺か?俺はただの通りすがりだよ。名前は……まぁ、好きに呼んでくれ」
そう言うと少年は少し考えてから口を開いた。
「じゃあ、お兄さんって呼びますね!」
「いいぞ。それで、お前は何をしているんだ?」
「見て分かりませんか?盗みです」
「ふむ……。何が欲しいんだい?」
「パンと水ですね。今月の家賃を払ってなくて……」
「ならこれをやるよ」
男は腰につけた革袋の中からパンを取り出す。少年はそれを受け取ると不思議そうな顔をして男を見た。

「どうして僕なんですか? 他にも優秀な学生さんがいるでしょう?」
「いえ、あなただからお願いしたいのです。私どもとしては、ぜひとも」
「……なぜです?」
「あなたのお父様が偉大な研究者であったからですよ。私どもはそのご子息たるあなたを高く評価しているのです」
「父はただの研究者であって、別に偉大だなんてこと――」
「いいえ! あなたはとても素晴らしい才能をお持ちなんです!」

「……っ!?」
「私どもの期待に応えていただけませんか?」
「い、嫌です!! 僕は絶対にやりません!!」
「そうですか……残念ですね。それなら仕方ありません。別の方を探すとしましょう」
私は目の前の女性の言葉に落胆の色を隠すことができなかった。
「ごめんなさいね、あなたみたいな優秀な人材を失うことは私たちにとっても痛手なんだけど……」
女性―――主任研究員は申し訳なさそうな表情を浮かべながら続ける。
「まあ、そういうことですので、こちらの方で新しく求人を出しておきますよ。それでよろしいでしょうか?」
「えぇ、ありがとうございます。」
私のような研究者にとって仕事があるということは何にも代え難い喜びだ。たとえそれがどんなに薄給であったとしても。
「いえいえ、こちらこそお力になれずすみません。ところで話は変わりますけど、新しい職場には慣れましたか?先日いらっしゃった時とは随分雰囲気が変わったようですし」
「えぇ、とてもいい所ですよ。同僚も良い人たちばかりだし、毎日刺激があって楽しいくらいです」
「……そうか」
青年の言葉に、男はどこか安堵するような声色だった。
男の名は、アロウ・フォンティーヌ。この国の最高権力者の一人だ。
今二人がいる場所は、首都たる帝都ゼーバッハの中央に位置する高層ビル群の一角。その中でもとりわけ巨大な建造物――通称『議事堂』の最上階だ。
本来なら厳重な警備が敷かれているはずのこの場所だが、今は二人以外に誰もいない。
否、正確に言えばもうすぐ誰か来るだろう。それこそ、彼が待っていた人物たちが。
「まぁ、お前が元気にしているようで何よりだよ。俺としても嬉しい限りさ」
「ありがとうございます。これも、閣下のご助力あってのことです」

「なあに、これくらい造作もないよ。君達の研究のおかげで、我々にも研究費というものが入るようになったんだしね」
「いえ……私どもなど、ただの道具でしかありませんから」
「そう謙遜するものでもないさ。君はもう立派な研究者だ。あの時のことを思い出すよ。私が君の歳の頃なんて、まだ何も考えず実験に明け暮れていたものだ」
「そんな、私は……」
「まあいいじゃないか。ともかく、これからもよろしく頼むよ。何しろ君達は人類の救世主なんだから」
「はい……」
「ああそうだ。今日この後空いているかな? 少し付き合って欲しいところがあるんだけれど……」
「えっ?」
「ほら、最近君と一緒に居られる時間が少なくなってしまっただろう? だからね、たまには二人でお出かけしたいなって思ってさ。駄目かい?」
「いえ! 全然大丈夫です!」
デートのお誘いだった。私は思わずガッツポーズを取りそうになる腕を押さえて、必死に平静を装う。
「本当かい!? ありがとう! じゃあまた後で連絡を入れるよ。楽しみだなぁ!」
「はい、お待ちしておりますね」
電話越しにも伝わる喜びの声に微笑みながら通話を切る。
これで今日の仕事は全て片付いた。後は帰るだけなのだけれど……
(さすがに疲れましたねぇ)
朝早くから起きて準備をし、それからずっと働き詰めだったのだ。少しくらい休んでもいいだろう。幸いなことにここは休憩室。誰もいないし仮眠を取るにはちょうどいい場所だ。
(それならもう少し仕事をして帰りましょう

薄暗い部屋の中で、少年はそう呟いた。部屋の隅に置かれたパソコンからはコードが伸びており、コードは壁際に座った青年へと繋がっている。
「いや、お前まだ未成年だろ? いい加減帰れよ」
青年の言葉を聞きながら、少年は手元のスマートフォンを操作している。画面に並ぶのはゲームアプリのアイコンだが、その内容はどれも同じだった。
(こんなに頑張ってるんだし、少しくらい褒めてくれてもバチは当たらないと思うんですけどね)
そんな事を考えつつ、少年はゲームに勤しむ。
すると突然、部屋の扉が開かれた。
「おーっす! 帰ったぞー!」
声の主を見て、少年は小さく溜め息をつく。
「あぁ、おかえりなさい。兄さん」
部屋に入ってきたのは、長身の男性。
黒いスーツに身を包み、ネクタイまで締めているが、それを台無しにするかのように髪を伸ばしっぱなしにしていた。服装や髪型だけでなく、顔つきまでもが野暮ったく、まるでホストのような雰囲気の男だった。
「あれぇ? 今日は『先輩』じゃなくて良いのか?」
「別にいつも『死』なんて目にしてんだろ?」
「それってさ、つまり、『死』が怖いんじゃなくて、自分が死ぬのが嫌なんだよな」
「死んだら終わりなんだぜ? そりゃあ怖いだろ」
「それにお前だっていつかは死ぬだろうよ。そんなことも分からないのか」
そう、これは、俺の話ではない。ただ単に、そういう奴がいるという話だ。
「おい! いつまで寝てるつもりだよ!」
声とともに裏社会の影にて 死への恐怖から逃れんとする者たちの手へと渡り かくして、世界の死に対する価値観は一変した。
人々は、死に怯えることをやめた。
今や死とは、ただの日常だ。
―――『死の肯定』

著:N.Y.C.S.E 第一章 紅い瞳の少女 1
「今日からここがお前の家だよ」
そう言って僕を抱き上げた男は、少し痩せていて、目の下にクマができていた。
僕のお父さんだと名乗ったその男の名前は確か、リヴァイアサンと言ったと思う。
僕は、生まれつき身体が弱くてずっと病院暮らしだった。
お母さんの話によると、赤ちゃんの頃はお医者さんが泣いてしまうくらいよく泣いたらしいけど、最近はすっかりおとなしくなってしまったようだ。
そんなわけだから当然、お父さんなんてものは生まれて初めて見たし、ましてや抱き上げられるなんて経験をしたことはなかった。
病室のベッドの上か、或いは棺桶の中か あるいは、自ら命を絶つか 兎にも角にも、人間は必ず死ぬものだ。誰もがそれを知っているし、受け入れることが出来るだろう。だが同時に、多くの人間がそれを受け入れられず、抗っていることも知っている。そうして死にゆく人々の中で、一部の人々は、その現実を受け入れられずにいた。彼らの望みとは、不老不死であった。永遠の若さ、永遠の美貌、無限の命……それらは人の願望であり、人類の夢だ。そういった願いを抱く者は少なからず存在する。
だが、それらの人々の思いとは裏腹に、世界は急速に死に近づいていくこととなる。2030年代を境に、各地で起こる暴動。そして相次ぐテロ。それらはいずれも、人々が「死の抽出」を求めた結果だった。人々は恐れたのだ。死を恐れるが故に、死をもたらす力を求めたのだ。

ゼーバッハ中央製薬はその成功に味をしめたのか、更なる研究を進めた。2040年代には、ついに死者蘇生さえ可能とするまでになった。
人々は、死から逃れられないことを悟った。そして、それに対抗する術を求めて、再び動き出す。
そんな中、ゼーバッハ中央製薬の社長、アネモネ・アーデンは、密かに、かつ大胆にも、自らの研究の成果を用いて、世界の秩序を保つための機関を作り上げる。表向きには世界平和のための慈善団体として。
だが真の狙いは違った。彼の目的は、自らが神になることだったのだ。彼は死の抽出の技術を独占していた。それを秘密裏に使用し、莫大な富を得ていた。そして彼が作り出す薬は全て人を死に至らしめるものだった。
人々は、彼の存在を恐れるようになった。ある日突然、彼が自分の命を狙いに来るのではないかと怯えて眠れなくなった。そうして、人々は彼を悪鬼と呼び始めた。
それでも彼は止まらなかった。ついに自らの存在を公に明かしてしまう。人々は彼に救いを求めた。しかし、彼の行動はもはや誰にも止められなかった。
かくして、世界は一度終わりを迎えることとなる
―――……さあ、お伽噺を始めようか これは、かつてあったかもしれない世界の話だ あるいは、これから起きる未来の話かも知れない まぁどちらにせよ、どうせすぐ終わるんだから関係ないんだけどね? ◆ ◆ ◆
「なるほど、大体わかったよ」
そう言って、目の前の男はニヤリと笑った。
「つまり、俺達は君の実験の為に呼ばれたってわけかい?」
「えぇ、概ねその通りです」
「ふぅん……で、君は誰なんだい?」
「私は……いえ、私達こそが貴方を呼んだのです」
薄暗い部屋だった。光源は天井に備え付けられた照明のみ。そこに佇む影二つ。
その内の一つは、黒を基調としたスーツに身を包んだ男だ。やや長い髪は整えられており、眼鏡の奥からは理知的な光が覗いている。
男は目の前の人物に対して敬意を払うように頭を垂れていた。もう一方の人物は女性だ。それもまだ幼い子供と言って差し支えのないような少女。
だが彼女の纏う雰囲気は明らかに子供のそれではない。大人びているという次元ではなく、老成してさえいる。
「……あなたは、誰?」
彼女が問うてくる。僕は少し考えて、答えた。
「僕の名前は『ヒビキ』だ」
そう名乗ると、彼女は目を丸くして驚く。
「どうして私の本当の名前を? それにどうしてこんな所に……まさか、私を殺しに来たの!?」
彼女は警戒心を強めて後ずさった。けれどすぐに思い直したように言う。
「待って! 私は確かにもう長くはないけど、だからと言って死にたいわけじゃない!」
「あぁいや違うんだ。君を殺すつもりなんて無いよ。ただ、ちょっと話を聞かせて欲しいだけで」
「話を聞くためだけにここに来たっていうの?」
「うん。まぁね」
僕の返事を聞いて、彼女は困惑の色を強くした。
「信じらんない。ここが何なのか知らないの?」
「ここは、何なの?」
「やっぱり何も知らずに来たんだ。ここは死人の墓場だよ。死んだ人間が集められている場所」
「じゃあ君は死んでるのか」
「えぇそうよ。ずっと前にね」
彼女は諦めた様子で肩を落とした。
「私が誰か分かるなら、私についてきなさい」

少女はそう言った。俺は何も分からなかった。何も思い出せなかった。ただ、俺は何かに導かれるように、彼女の後を追っていた。それだけだった。
俺は、自分が何者でどこから来たのかすら分からない。だから、彼女が誰なのかなんて分かりようがなかったし、そもそも自分のことすら分かっていなかった。そんな状況だというのに、なぜ彼女に付いて行こうとしたかと言えば、それは全くもって説明できない衝動だ。強いて言うならば、直感のようなものだろう。
彼女は、黒い髪を揺らしながら振り返ることなく進んでいく。俺も黙ったままついていく。しばらく歩くと、開けた場所に出た。そこには、一台の車が停まっていた。車と言っても、俺たちがよく知っているようなものではなく、車輪のない、空を飛ぶためのものだ。
彼女は慣れた手つきで運転席に乗り込むと、助手席を指し示した。乗れということらしい。よく見れば後部座席には小さなトランクが一つ置かれているだけだった。どうせ何を聞いても答えてくれないだろうと諦め、大人しく従うことにする。彼女が乗り込んだのを確認してから車を発進させると、彼女は黙って窓の外を見たまま一言も喋らなかった。車内に沈黙が流れる。何か話そうかとも思ったけれど、何を言っていいのか分からず結局僕も口を閉じたままだった。
車は国道へと出て順調に進んでいった。しばらくすると前方に大きな建物が見えてきた。病院だ。総合病院なのかいくつもの棟が見える。駐車場に入ると、彼女の運転する車はそのまま一番奥まで進んだ。そこにあったのは見覚えのある赤いスポーツカーだった。
「えっ?」思わず声が出た。まさかそんなことになっていようとは思いもしなかったからだ。
「え? じゃなくてさぁ……。だから、そういうわけなんだよ」
彼はそう言って、少し困ったように頭を掻いた。
「そっか、わかったよ」
僕はそれだけ言うと、再びパソコンに向かった。
「おい! ちょっと待てって!」
「何だよ」
僕が再びマウスを動かすと、彼は慌てたように声を上げた。
『ちょっ!ちょっと待ってくださいよ!』
「どうしました?何か不都合な事でもありましたか?」
『いや……まあ、不都合と言う程ではないんですけどね』
「ふむ、聞かせてもらえますか?」
僕は彼の言う通り一旦手を止めて、彼に向き直った。
『いや、実はですね。今現在私達のいる世界線とは別に、もうひとつ別の世界線が並行して存在するんです』
そう語る女の声に、俺は思わず顔をしかめた。
ここは俺の自宅だ。決して怪しい宗教勧誘の類ではない。……多分。
「またそれかよ。お前の話はいっつもそれだよなぁ」
『えぇー! いいじゃないですか別に!』
目の前にいるのはホログラムの女。
半透明の姿でぷんすこと頬を膨らませている様はまるで子供だが、こいつはれっきとした成人女性らしい。
名前は「ハルカ」。なんでも、並行世界の管理をしているとかなんとか。
「まあどうせ平行世界なんてもんは存在しないってオチなんだろ? SF小説じゃよくある話だ」
そう言って男は目の前に置かれたグラスを傾けて中身を飲み干す。それを見ていたもう一人の男が苦笑して言った。
「お前さん、現実逃避にしてもそりゃあんまりじゃないか?」
「馬鹿野郎! これが夢ならどれだけ良いことか!」

男の叫びに店内が一瞬静まる。だがすぐに周囲の客たちは何事もなかったかのように談笑を再開した。
「いやな、俺は今朝まで普通に生きてたんだぜ!? なのに起きたらここだ。わけがわかんねえよ」
「……まあ、確かに俺らって不老長寿だしなぁ……」
「そういうことよ。ついでに言うならアタシ達は、そのゼーバッハの中央研究所で生まれ育ってきたエリートだからね。」
「じゃあお前はともかく俺はなんで捕まったんだよ!お前と一緒に!」
「そりゃアンタ、アタシのこと捕まえられるくらい強いからに決まってんでしょ?」
「……うーん、つまりアレか?あの時のお嬢ちゃん達が言ってたのはこういう事なのか?」
「えぇそうよ。今あなた達がいる場所は、私達の世界の『地獄』と呼ばれている場所なの」
俺達は現在、先ほどまでいた森の中ではなく、石造りの建物の中にいる。どうやらここは地下らしく、薄暗い明かりの中、壁際に松明が並んでいる。床にも天井にも岩肌が見える事から察すると、恐らく鉱山跡だろう。
そして、目の前にいるのは、さっきまでの黒猫ではなく、赤い瞳をした金髪の少女だ。年齢は10歳くらいに見えるが、背中には黒い羽があり、頭からは角が出ている。服装は何故か白いワンピース姿だが……。
「ここが地獄ねぇ……」
俺は周囲を見回してみる。
目の前には、俺と同じように不安げな表情を浮かべているクラスメイト達がいた。
それも当然だ。何せここは――教室なのだから。
いつも通り登校してきて、先生が来るまでの暇潰しにスマホゲームをしていたら、突然視界がブラックアウトしたと思った次の瞬間にはこの場所にいたのだ。戸惑わない方がおかしいだろう。
それにしても……どこなんだ? ここ。

さっきまで見ていた風景とは全然違うんだけど。いや、そもそも学校じゃないよな、これ。だって机とか椅子がないもん。床一面石畳だし。それに何だか薄暗いし……って、え? 俺の部屋だよここ!? どうなってんの! 慌てて周りを見てみると、見慣れたものばかり目に入ってくる。教科書とかノートとか、あと筆記用具もあるし。ただ、一つだけ異質なものがあったんだよね。
そう、剣。壁に立て掛けてあったんだ。よく分からないけど、あれが本物だったら危なくないか? 一応確認しておこうかな。俺はゆっくりと近付いていき、恐る恐る触れてみると――あ、案外軽い。
ちょっと振ってみるか。剣道なんてやったことないから、とりあえず適当に振り回せばいいだろう。そんなことを考えていた時だった。
「うおっ!」
いきなり眩しい光が辺りを包み込んだんだよ。目が覚めたら目の前に美少女の顔があったんだ。それも超至近距離だよ? 誰だって驚くだろ? 俺が驚いている間にもその子はどんどん近づいてきて……。唇に柔らかい感触を覚えたところで意識を取り戻した俺は、反射的にその子を突き飛ばしたね! 女の子って意外と重いなぁなんて考えながらさ。そしたら案の定、バランス崩して倒れちゃったよ。慌てて助け起こそうとしたんだけど、なんか凄い目つきで睨まれたから止めた。どうせならもっと優しくしてくれればいいのになーとか思いつつ、しばらく睨み合ってたら彼女が口を開いた。
「あんたが私を助けてくれたのか?」
「……えぇ、そうよ」
目の前の少女が言うことに嘘はないと感じた。彼女の目には真摯な思いやりがあるように感じられたからだ。
それにしてもここはどこだろう?私はどうしてここにいるんだろう? 疑問だらけだ。だけどそんなことよりも今はただ眠い。体が重いし怠いし頭が痛む。
「ねぇ、ちょっと待って! あなた今自分がどういう状況か分かってないんじゃない!? 大丈夫? ねえ!」

「……あぁ?」
薄暗い部屋の中で目が覚めた俺が最初に目にしたのは見知らぬ天井だった。いや、そもそもここはどこだ? 俺は確かあの時――。
「あっそうだ、思い出してきたぞ」
そうだよ、俺はあそこであいつに刺されたんだ。
だがどうして生きてる? それになんなんだこの状況。まるで牢獄のような部屋に鎖で拘束されている。
「おい! 誰かいないのか!!」
大義名分を掲げながら 裏社会はその力を利用しようと企む 世界の裏側で暗躍する者たちは、常に表社会の敵となり得る存在だった。彼らの存在は表社会にとって不利益にしかならないことは明白な事実であった。故に、彼らは表世界の平和を脅かす悪者として認識されており、時にその存在そのものが抹消されることさえあった。だが、彼らは決して諦めなかった。ただ一度の敗北を認め、二度と敗北しない為に、彼らの戦いは続く。
かつて、人々は争い合っていた。国同士の諍い、部族間の抗争など、理由は様々であったが、それらの全てに共通するものは「殺し合い」という概念だ。それがある限り、争いは絶えることなく続いていく。だからこそ、彼らは考えた。どうすれば争いを止めることができるのか……?答えは実に簡単だった。互いに互いを殺し合えばいいのだ。そうして生まれた新たな命は、新しい世代の礎となって死んでゆくだろう。それを繰り返せば繰り返すほど、より強い絆が生まれ、文明を発展させてゆくはずだ。そう信じていた。だから彼らは実行に移した。自らの意思を以て、同胞の命を奪った。その結果、多くの血が流れた。けれど、それでも彼らは止まらなかった。何故なら、既に彼らの心の中に「戦い」の概念が定着してしまっていたからだ。一度芽生えた概念を取り除くことは容易ではない。彼らはもう、自らの意思で戦うことをやめることができない生き物になっていた。故に、彼らは何度も同じ過ちを繰り返した。何度殺しても、また別の誰かが同じことをしだす。結局のところ、彼らの戦いに終わりはなかった。だが、そんな時にある考えが生まれた。ならばいっそ、全ての人間が死に絶えてしまえばよいのではないか……と。確かに、世界の人口は70億を超えていると言われている。つまりそれだけの数の人間が生きているということであり、このままではいずれ限界が訪れることは明らかであった。そこで彼らが思いついた方法は、まさに究極にして唯一の方法だったと言えるだろう。全人類の抹殺。単純明快な結論ではあるが、実現するのは容易なことではない。ましてや、たった一人では不可能に近い話であろう。しかしながら、彼らにはそれを為しうる力があった。
核ミサイル発射ボタンひとつで、全てを終わらせられるだけの力が……。

西暦2080年、日本・東京。都心からやや離れたベッドタウンの一角に、1人の少年の姿があった。
彼の名は「水瀬悠真」。都内の公立高校に通う高校二年生だ。
一見するとごく普通の高校生だが、実は彼は少し特殊な事情を抱えている。
「……よし、今日も誰もいないな」
自宅マンションの前で周囲を確認した後、小さく呟く。そして手提げ鞄の中から鍵を取り出し、玄関を開ける。

扉の向こう側は、とても静かだった。いつもなら学校から
の帰り道、近所の子供たちの声などが聞こえてくるものだが、今はそれが一切ない。
(まあ当然だよな。俺以外の家族全員が、今頃病院にいるんだし)
そんな事を考えながら、私は薄暗い廊下を走る。息が上がるのを感じつつ角を曲がると、目の前に見慣れた背中が現れた。
「おーい! こっちだ!」
「……っ、ああもう! なんなんだよ今日は!!」
そう叫びつつも、私──ハルカ・コガネは、彼の元へと駆け寄った。
「あ〜腹減って死にそうだぜ〜」
「だからっていきなり呼び出すか!? 普通!」
「いいじゃねえかよ、たまにはさぁ」
「よくねーよ!」
ここは、王都アルデバランの外れにある小さな食堂。時刻は既に午後6時を過ぎているせいもあって店内はほぼ満席だった。
「まあまあ落ち着けって。ほら、これやるから」
「なんだこれ?」
差し出された紙袋を開けると、そこにはパンが入っていた。それも1つではない。
「焼きたてホヤホヤのクロワッサンだ。美味いぞぉ」
「……お前が作ったのか?」
「まさか」
彼は苦笑しながら肩をすくめた。
「知り合いがくれたんだ。俺も食べたけど、すげえサクサクしててめちゃくちゃ美味かったよ!」
そう言って差し出された紙袋を受け取った男は、中身を確認しながら尋ねた。
「……なあ、これって本当にお前が貰ったんだよな?」
「そうだぜ? だからさっさと食ってくれ! 俺はもう腹ペコだ!!」
「まぁ、確かに貰いもんなら遠慮なくいただくわ。サンキュー」
礼を言いつつ、男は自分の席に戻る。それからすぐに包装紙を破り捨てると、中から出てきたものをしげしげと見つめる。そこには黒い石のようなものが入っている。
「これが……」
男は感慨深げな声を上げた。手の中でそれを転がしながら、しばしの間見惚れていた。
「おめでとうございます! これであなたも『不老』です!」
受付嬢の言葉を聞きながら、彼はもう一度手に持ったそれを見た。これは確かにすごいものだ。だが同時に、自分が本当にこれを使えるのか不安になった。
「大丈夫ですよ。ちゃんと使えますって」
そんな彼の気持ちを見透かしてか、受付嬢は明るい声で言った。
「本日こちらに来た方々は皆そう言いましたよ。まあ中には『自分はもう歳だからいらん!』なんて言って帰る人もいましたがね」
受付嬢は冗談っぽく笑った。
「それで、どうします? 今すぐ始めます?」
「はい。お願いします」
「かしこまりました」
受付嬢は笑顔のまま立ち上がった。
「それじゃあまずは採血ですね。そしたら奥の部屋に行きましょう」
受付嬢「あのーすみません、ここって『死者蘇生』のお医者さんですよね?」
先生「はいそうです」
受付嬢「実はうちの息子が昨日交通事故に遭って……」
先生「あぁそれなら大丈夫です。息子さんの身体は既に死んでいますよ」
受付嬢「えっ!?どういうことですか?そんなはずありません!だってさっきまで元気にしてました!」
先生「お子さんが事故に遭ったときの様子を教えてください」
受付嬢「あー!今日も疲れたなぁ……っと。」
同僚A「おつかれさん、ほらよコーヒーだ。」
受付嬢「ありがとね……うっわ苦い……」

同僚B「そんなもんブラックなんだから当たり前だろう?」
受付嬢「そりゃそうだけどさ?やっぱり甘い方がいいよねぇ。」
同僚C「私は甘ったるいカフェオレ派かな。」
受付嬢「えー!?何それ美味しいのぉ?」
同僚D「あんまり好きじゃないけどまあまあいけますよ。」
受付嬢「いいな〜私にも頂戴!」
同僚E「はいどうぞ。」
受付嬢「んぐ……ぶほっ!!」
同僚F「おい大丈夫かよw」
同僚G「汚いなぁもうw」
受付嬢「げふぅ……ごめんなさい。ってこれ酒じゃん!」
同僚H「お前ってさ、いつも一人で飯食うよな」
H「俺らと一緒に食いに行こうぜ?」
H「……あー、いいわ。また今度誘ってくれ」
H「そうか?んじゃ、お疲れさん」
H「おいおい!マジかよ!」
H「え!?」
H「あいつ死んだのかよ……」
H「ああ……、つい昨日だったらしいぞ」
H「なんでだよ……。まだ若いじゃねぇか……」
H「なんか、事故に遭ったとか聞いたけど」
H「自殺じゃねえだろうなぁ……」
H「そんなことないだろ。あんないい奴なんだし」
H「まぁ、そうだよな。変なこと言って悪かった」
H「最近物騒だからよ」
H.P.ラヴクラフト『時間からの影』第1章より抜粋
―――――
「おい!起きろ!」
「うーん……あと5分寝かせてくれよぉ……」
「馬鹿かお前は!?早くしろ!!」
俺の名前は上川優斗 どこにでも居る普通の高校生だ。……普通ってなんだっけ?
「くそ……こんな時になんなんだよ……」
「いいからさっさと来い!!仕事の時間だろうが!!!」
そう言いながら布団を剥ぎ取るのはこの部屋の主、父さんこと上川一樹 職業は科学者兼傭兵 なんでもありの何でも屋みたいなことをして生計を立てているらしい。
そんな親を持つ俺は当然のように幼い頃から色々な訓練を受けさせられた。
射撃訓練はもちろんのこと、護身術に始まり近接格闘術まで様々な事を学ばされた。
今となってはそのおかげで大抵の事なら一人でなんとか出来るようになったし、銃火器の扱いだってお手のものになった。俺達はいつも通り今日も今日とて殺しの依頼をこなしていた。
「おい!まだかよ!」
「うるせえなぁ!もうちょっとだ!」
俺はそう怒鳴って、目の前にいる男に向かって弾丸を放つ。男は倒れ、血を流しながら息絶える。
「よし、終わったぞ。これで何人目だったっけ?」
「あー?確か8人くらいじゃねえかな。」
「ああそうだな……さすがに疲れてきたぜ……」
俺らはそう言ってため息をつく。ここ最近ずっとこうだ。殺人依頼ばかり受けているせいで、そろそろ体が鈍ってきている気がしてならない。そんなことを考えていると、相棒のアルスが口を開いた。
「なぁ、今度の休みにどっか遊び行かね?」
俺はそれに答えようかと思ったが、ふと思い留まる。
「悪いけど、パスさせてくれ」
するとアルスは意外そうな顔をし、こちらを見る。
「珍しいじゃねぇか、お前が断るなんてよ」
確かにそうだ。今までどんな誘いにも応じてきた俺だが、今回はどうも気分が乗らなかった。

確かにそうだ。今までどんな誘いにも応じてきた俺だが、今回はどうも気分が乗らなかった。
「さて諸君、本日の講義を始めようか」
講堂の中央に立つ初老の男性講師がそう告げると、講義室内の生徒たちは一斉にノートを開きペンを構えた。

「まずは我々にとって最も身近な問題、死の恐怖についてだ。皆知っていると思うが、現在地球上の人口はおよそ70億人にまで達している。このままいくと2050年には80億人を突破、100年後には90億人の大台に乗るだろうと言われている。そこで、だ……」
講師の男が黒板に大きく文字を書き連ねていく。
『人口増加による食料危機』
「この問題を解決するにはどうすればいい?分かる者はいるかね?」
生徒の一人が手を上げる。男は当てると、答えを促すように視線を向けた。
「あの……先生?質問なんですけど、どうして僕らは今こんな話を?」
教室内の空気が固まる。教師の顔色が変わる。
「お前ら!まだそんなことを言っているのか!?」
教室内は喧騒に包まれる。何せここは高等学校だ。それも進学校。将来有望な人材を育てるための教育機関。にもかかわらず、生徒たちはまだ死という概念について考えていたのだ。当然だろう。
「いいか?何度も言うぞ?俺たちはもう20年前とは違うんだ!」
男の言葉にクラスメートたちは渋々と言った様子で着席し、授業が再開される。だが皆、どこか上の空だった。
この世界には、未だかつて誰も成し得なかった偉業がある。死の克服。人類の夢と言ってもいいかもしれない。だが、それは決して叶わない夢ではないということを、ここに示そうと思う。我々人類は今まさに新たな一歩を踏み出そうとしていた……
ーーーーーー
『本日、午後5時頃、都内の某所で殺人事件が発生しました。犯人はまだ捕まっておらず、被害者は20代前半の女性と見られています。』
テレビからはそんなニュースが流れてくる。最近はこんな物騒な事件が多い。ついこの間も隣の県であったばかりだと言うのに……全く気が休まらない。
俺はそんな事を考えながら朝食を食べていた。

俺の名前は佐藤隆也。ごく普通の高校に通う3年生。自分で言うのもなんだが成績優秀、スポーツ万能な完璧超人だ。まぁ勉強に関しては少しズルをしているんだけどね……そんな俺は今人生最大のピンチを迎えている!何故かって?理由は簡単さ!なんと明日は入学式なのだよ!!えっ!?何がヤバいのかわからないだって?それなら教えてあげようじゃないか!何故こんなにも焦っているかと言うと……実は入学先は女子校なのだよ!!! そうです!俺は女の子大好きっ子なのです!特に可愛い子大好きなのです!だからめっちゃ楽しみにしてます!はい! ーーーーーー 次の日 ピピピッ ピピピッ 目覚まし時計の音で目を覚ました。今日から高校生になると思うとドキドキしてなかなか寝付けなかったけどなんとか眠れたみたいだ。よし、準備するか。制服を着て鏡の前でくるりと回ってみる。うん!いい感じだ!そろそろ行くかな。玄関に行き靴を履いているとリビングの方から母さんの声が聞こえてきた。
「ちょっと待ちなさい!」
はあ〜もう朝っぱらからうるさいなぁ。まだなんかあんのかよ……。
「お弁当忘れてるよ!」
「あーごめんごめん!ありがとー!」
「いってらっしゃーい」
私は今日から高校生だ。新しい制服に身を包み、鞄を持って家を出る。高校までは徒歩で10分ほどの距離だが、入学式のため早めに出ることにした。
通学路の途中の交差点に差し掛かると、ふと足を止める。そこには小さな女の子とそのお母さんらしき女性が立っていた。どうやら手を繋いで信号待ちをしているようだ。
親子連れを見るとつい目がいってしまう。私にもあんな頃があったんだなぁ……なんて感傷に浸っていると、不意に後ろから声をかけられた。
「あのっ!」
振り返るとそこには男の子の姿がある。小学校低学年くらいかな?見覚えのない子だった。

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