薫
薫
薫
花蓮
及川達を連れて歩いて行く薫と入れ違うようにして、花蓮さんが俺に歩み寄って来る。 戸惑いを隠せずに、薫と花蓮さんとの間で視線を泳がせていると、花蓮さんは目を丸くさせて首を傾げていた。
岩泉
俺の言葉を聞いた途端、花蓮さんはその瞳を大きく見開く。それから、驚きを吐き出すようにため息をついた。
花蓮
花蓮
岩泉
痛みをひた隠してヘラリと笑う。 ずっとずっと、そうしてきた。花蓮さんが彼氏の谷川さんと喧嘩をする度にこうして、話を聞いてきた。
花蓮
少しの沈黙の後、花蓮さんは目を伏せると、違う大学に通いだしてすれ違いが起きている谷川さんとの話をぽつりぽつりと零し始めた。
辛いですね。花蓮さんは我慢しすぎなんですよ。もっと伝えたらいいのに。 毎度お馴染みの言葉を連ねながら、泣き出しそうにウンウンそうだよねって頷く花蓮さんを見つめながら、何て拷問なんだよコレって内心息をつく。
花蓮
ごめんね、と弱々しく、笑わなければという風にぎこちなく微笑む花蓮さんに、胸がかっと熱くなり、余裕無く額に手をやった。
そんなこと言うなよ。俺“には”とか、まだ望みあんのかなとか思うだろ。 花蓮さんはズルい。そうやって俺に漬け込む隙を与えるクセに、いつもアンタはあの人しか見てなくて、結局は俺は手も足も出ないんだ。
岩泉
花蓮
俺だったらちひろさんにそんな顔させない。ずっと笑わせる。不安にさせない。
そんな、紡ごうとした言葉は、唐突に何の前触れもなく喉の奥でぐっと留まった。
怖気付いたわけじゃない。背後、離れたところから聞こえた声につい意識がいってしまって
振り向けば、何やら国見に頭を押さえつけられて手をバタバタと振り動かす薫の姿があり、それを視界に入れた瞬間、昂っていた気持ちがしゅるしゅると萎んでいった。
花蓮
花蓮さんの声にはっとして向き直す
…今何で気が削がれた?あんな変態になんでだ?
岩泉
もう、言葉の先を言う気なんて起きず、誤魔化すようにしてヘラリと笑顔を張り付けた。
薫
薫
…もし仮に、ここで俺が花蓮さんと上手くいったと伝えれば、薫はどんな顔をするんだろう。
薫
岩泉
岩泉
薫
裏のない笑顔を向けられ、ぐっと押し黙った。
片想いなんて、報われなければもどかしくて切ないばっかりだ。でも、薫から感じられるのは、キラキラして、楽しい一面だけ。
岩泉
零しながら空を仰いだ俺に、薫は、へ?と間の抜けた声を上げる。
岩泉
そうやって真っ直ぐ人を想えることができる薫がいっそ、羨ましい。 分からない。ちっとも理解できない。どう生きてきたらそんな風になれんの?
薫は丸くさせた瞳をぱちぱちと数回瞬かせた後、ゆっくりと口を開いた。
薫
胸の前で手をわたわたとさせて話す薫の様子に、自分の中にある気持ちを言語化しようと必死なのが見て取れた。
薫
えへへ、ちょっと何言ってるのか分かんなくなっちゃいました。 はにかむ薫に、ストレートな気持ちに、胸を打たれた。
ーーああ、何か、薫を知りたいと思った。惹かれたかもしれない。 こいつの瞳に映る世界ってどんな色でどんな形で輝いてんだろう。
岩泉
薫
薫が吹き出した鼻血が放物線状に弧を描くのを見ながら、ああこんな漫画みたいな鼻血ブーってマジであんのか…とどこか客観的に見つめていた。
バタリ… ギィィィー
及川
及川
及川
及川
次回 ペアルックのジャージ
♡500…欲しい
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体育館が火曜サスペンス劇場…
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