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第一話③

♥

35

2022年12月18日

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男にその声が聞こえたかは分からないが、すぐに背を向けその場から消えた

岩泉

立てるか?

あなた

うん

及川

ケガしてない?

あなた

大丈夫
ごめんね

岩泉

・・・

及川

・・・

苦笑いで謝る□□を見て、俺も及川も何て声をかけていいのか分からなかった

あなた

ありがとね、じゃあ私帰るね

及川

送るよ!

あなた

え?

及川

岩ちゃんが!!

岩泉

おい

及川

もう遅いし、女の子ひとりじゃ危ないし

あなた

え、いいよ家近いし

岩泉

いや、送る。じゃあな、及川

及川にそう言って、□□の腕を掴んだ

あなた

・・・・ズッ

腕を掴んだまま歩いていたら、後ろから鼻をすする音がした

岩泉

わりぃ。痛かったか?

自分のペースで歩いてしまったのと、少し強く掴んでしまった自覚はあった 掴んでいた腕を離し□□の顔を覗き込む

あなた

ううん

首を横に振るも、そこから動こうとしない 髪の毛で顔が隠れていてどんな表情(かお)なのかも分からない

どうしたものかと、周りも見渡すと自販機とその先に公園が見えた

ずっと前にあの公園の近くに住んでいるという会話を思い出した 部活のロードワークで通る公園 その話を聞いてから土日の部活で通るたび少しソワソワしていた

岩泉

少し休むか

また□□の腕を掴み、引っ張りながら自販機で買ったココアを持たせ公園のベンチに座らせる

あなた

・・・お金

岩泉

気にすんな

あなた

ありがと・・

岩泉

話したくないなら
話さなくていい

あなた

・・・

岩泉

話した方が少しでも楽になるなら
いつもみたく話せよ、聞いてやる

そう言いドカッと隣に座った

あなた

・・・やるって

少し笑いながら突っ込む そして、ポツリ、ポツリと話し始めた

少し前から連絡や会う頻度が減ってきたこと

会うにも向こうの都合次第 ドタキャンはもちろん 会えないと言われたのに急に会おうと言われたり

今日は待ち合わせの時間になっても来なくて、連絡がついたと思ったらやっぱり無理と言われたと

あなた

いやぁ、1時間くらい待ち惚けくらってドタキャンは初めてだったよ

ドタキャンの連絡を受けてからどうしたものかとブラブラしていたら、知らない女の子と歩いている彼氏を見つけた、と

あなた

おーお、ドラマかマンガですか?って思ったよね

あなた

でも、楽しそうに話してる姿見たら2人の前に私いつの間にか立ってたの

あなた

私に気がついたアイツは、女の子の前でコイツは元カノだのストーカーだの言われちゃって

あなた

コイツ頭おかしいから、危ないからカフェで待ってて!なんて言って

あなた

ふたりになって、罵声を浴びせられ

あなた

ビンタしたら岩泉達がきた

本当に糞野郎だな と、改めて思った

あなた

糞野郎って思ってるでしょ

岩泉

・・・ああ

あなた

本当にね。でもさぁ…

あなた

ま、だ…すきなん、だよね…

そう言いながら泣き始めた

なんて声をかけていいか分からなかった

ただ、タオルを渡すことしか出来なかった

あなた

あり、がとぉぅ…

□□が落ち着くまでただただ空を見ていた

岩泉

落ち着いたか?

あなた

あなた

泣いたら少し楽になったかも
ありがとね

岩泉

じゃあ、帰るか

□□を家の近くまで送ると優しいねと言われた

それはお前の事が好きだからだ

岩泉

じゃあな

とは言えなかった

あなた

ありがと、また学校でね

つづく 2022/11/21

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