一話完結物語

『あの雨の日に』

君はそう言っていた

冬の寒い雨の日にずぶ濡れで

玄関で泣いていた

汗をかいているのに震えていた

こんな話で始まる僕たちの

逃避行だ

そんな泣いてる君に僕は言った

君はすごく驚いた顔をした

でもどこか緊張がとけた顔をした

財布をもって

ナイフをもって

携帯もゲームもカバンに詰めて

壊してしまおう！！

あの写真も

あの日記も

今となっちゃ

いらないさ！！

人殺しとダメ人間の

逃避行だ！！

そして僕らは逃げ出した

この狭い世界から

家族も友達も全て捨てて

君と

2人で！！

2人で死のうよ！！

僕らは誰にも愛されたことが無くて

そんな嫌な共通点で

簡単に信じあって来た

君の手を握った時もう既に震えはなくなって居た

誰も居ない線路の上を歩いた

金を盗んで

2人で逃げて

どこにでも行ける気がした

今更怖いものなんてなかったんだ！！

額の汗も

落としたメガネも

今となってはもう

いらないさ！！

いつか夢みた

誰にも好かれる"主人公"なら

汚くなった僕達も優しくしてくれる

でもそんな夢なら捨てたよ

だって現実はみんなシアワセの4文字だって

知らなかったんだから

今までの人生で思い知っただろう

自分は何も悪くないとみんなきっと思ってるだろう

なくなって来た水も

盗み出す度に

迫り来る鬼達の怒号に

馬鹿みたいにはしゃぎあい

ふと君は

ナイフをとった

そして君は

首を切った

まるで映画のワンシーンだ

白昼夢を見ている気がした

気付けば僕は捕まって

君だけがいなくて

そして時がすぎて冬が来た

家族も友達もいるのに

君だけがいなかった

君を今でも探してる

あぁまた会いたいな

『終わり』