友達は訳あり神様だった

『すちくんの事』

今から1000年以上前の話

俺はこの村に住んでいた

家族もいない、名前もない、帰る家もない

俺は『孤児』と村の人に言われていた

俺は村の人に支えられて生きていた

だから、逆らう事も出来なかった

追い出されたら生きていけないから

俺は毎日殴られてボロボロだった

その年は晴天の日が続き、川の水は無くなって

農作物が育たなくなった

俺が◯されようが、止める人は居ないから

足手まといも居なくなるから

きっと、俺は村の人にとって『最適な道具』だったんだろうねぇ…

当時の俺から見たら突然だった

俺は生贄になれと言われた時

『これで楽になれる』

そう思ってしまった俺はもう…壊れていたんだろうね

その夜、俺は初めてまともな食事をとった

お風呂だって入れた

俺の「特別」は村の人からは「当たり前」なんだろう

温かいごはん、温かいお風呂、温かいお布団

俺はこの夜が幸せだった

翌日

俺は見たこと無い程の綺麗な着物を着て生贄としてどこかに向かった

そこはただの井戸

不思議な事に俺の手足は震えていた

「生きたい」そんな言葉が今更身体に訴えてきた

その瞬間

ドボンッ

俺は深い深い井戸の中で必死に藻掻く

でも、泳いだことの無い

綺麗な着物は水を吸って重くなる

俺は諦めて

グサッ

小刀で自分の胸を刺した