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放課後の旧校舎、図書準備室。
埃っぽい空気の中に、悠(ゆう)の明るい声が響いた。
悠
悠
悠は身長158センチ。小柄だが、ひまわりが咲いたような笑顔でクラスのムードメーカーだ。
そんな彼の左右には、学校中の女子(と一部の男子)の視線を釘付けにする二人のイケメンが立っている。
一人は彰。
バスケ部の次期キャプテンで、野性的で情熱的な瞳を持つ、いわゆる「陽」のオーラ全開の男だ。
もう一人は怜。
成績学年トップ、弓道部の主将も務めるクールで理性的な美形で、こちらは「静」のカリスマを纏っている。
彰
彰がニヤリと笑い、悠の頭を大きな手で乱暴にかき回した。
悠
悠
彰
悠
悠が首を傾げると、横から冷ややかな、しかしどこか甘い声が割り込んだ。
律
怜が悠の肩にそっと手を置く。
その指先が、悠の鎖骨のあたりをかすめるように動いた。
悠
悠
彰
律
律
二人からの視線が悠に集中する。
だが、鈍感界のファンタジスタである悠は、二人の間に散る火花に全く気づかない。
悠
彰と怜は同時に深いため息をついた。
彰
律
二人の声が重なる。
悠は「相変わらず息ピッタリだなあ」と感心しながら、重い図書箱を持ち上げようとした。
律
悠の手が届く前に、彰と怜が同時に箱の端を掴む。
彰
律
悠
「「ダメだ」」
即答だった。
悠は頬を膨らませたが、二人の親切心(と独占欲)を無下にするのも悪いと思い、大人しく一番軽い名簿だけを持った。
その日の帰り道。夕焼けが歩道をオレンジ色に染めている。
三人はいつものように並んで歩いていた。真ん中に悠、右に彰、左に怜。
悠
悠がワクワクした様子で尋ねる。
彰
と彰が面倒そうに言う。
律
怜の瞳がわずかに細められた。
悠
悠
彰
彰が笑いながら悠の脇腹を小突く。
悠
悠が身をよじると、バランスを崩して彰の方に倒れ込んだ。
彰は待ってましたと言わんばかりに、悠の細い腰をガッシリと受け止める。
彰
悠
彰
彰の腕が悠の腰に回されたまま、離れない。
「過保護だなあ」と思いながら、彰の体温の高さに少しだけドキドキした。
律
怜が冷徹な声で、悠の手首を掴み、自分の方へ引き寄せた。
悠
律
律
彰
彰が怜を睨みつける。怜は無表情のまま、悠の手首を優しく、だが逃がさないように握りしめていた。
悠
悠は能天気に笑った。
そんな日常が数日続き、ついに文化祭の準備が本格化した。
執事喫茶の衣装合わせの日、悠はクラスの女子たちが用意した特注の燕尾服に袖を通した。
悠
カーテンを開けて出てきた悠を見て、教室中の空気が凍りついた。
白シャツに黒のベスト、そして細いリボン。
小柄な悠が着ると、執事というよりは「お坊ちゃま」あるいは「可愛すぎる給仕」だった。
彰
彰が絶句し、顔を覆った。指の間から見える耳が真っ赤だ。
律
怜が眼鏡の縁を触りながら、悠をじっと見つめる。
その瞳には、隠しきれない独占欲が渦巻いていた。
悠
不安になった悠が鏡を見ようとすると、彰が慌てて肩を抱いた。
彰
悠
律
律
彰
二人の言い争いは、当日になっても続いた。
文化祭本番。
執事喫茶は大盛況だった。
特に悠の「一生懸命だけどどこか危なっかしい接客」は、女子客だけでなく他校の男子生徒からも注目の的になっていた。
休憩中、中庭で一人休んでいた悠に、他校の男子生徒が恥ずかしそうに手紙を差し出してきた。
悠
悠が受け取ろうとしたその時、背後から二つの影が落ちた。
彰
彰が悠の肩に腕を回し、他校の生徒を威圧するように睨む。
律
律
怜が悠の手を制し、手紙をスッと抜き取って相手に返した。
悠
悠は慌てて教室に戻っていった。
残された彰と怜は、去っていく生徒を一瞥し、互いに顔を見合わせた。
彰
と彰が低く呟く。
律
文化祭の打ち上げも終わり、後片付けが終わった夜の校舎。
悠は屋上に呼び出されていた。
悠
月明かりの下、二人が悠の前に立っていた。
彰
彰が真剣な表情で一歩踏み出す。
悠
悠の満面の笑みに、二人はわずかに表情を歪めた。
律
怜が静かに歩み寄り、悠の頬を両手で包み込んだ。
律
律
悠
悠の思考が停止する。
彰
彰が反対側から悠の手を握った。
彰
彰
悠
悠の顔が、一瞬で真っ赤に染まった。
悠
悠
彰
律
二人の真摯な瞳が、悠を逃がさない。
悠は心臓が口から飛び出しそうなほど激しく打つのを感じた。
悠
悠は自分の胸に手を当てた。
彰に抱きしめられた時の、あの安心感と高鳴り。
怜に優しく触れられた時の、あの甘い痺れ。
どちらも、自分にとってかけがえのないものだった。
でも、その「好き」の形が、少しずつ違うことに気づき始めていた。
悠は深呼吸をし、二人を見上げた。
悠
悠
悠がゆっくりと手を伸ばし、その指先が一人に触れた。
悠
悠
選ばれた彰は、信じられないというように目を見開き、次の瞬間、悠を力いっぱい抱きしめ上げた。
彰
悠
悠はジタバタしながらも、彰の広い胸に顔を埋め、幸せそうに笑った。
一方、選ばれなかった怜は、ふっと自嘲気味に微笑んだ。
律
怜が悠の額に、別れを告げるような、けれど熱のこもったキスをした。
律
律
悠
彰
彰が悠を隠すように抱え込み、怜を威嚇する。
そんな二人のやり取りを見ながら、悠はいつものように笑った。
悠
鈍感だった少年は、ようやく自分の気持ちに気づき、新しい関係へと踏み出した。
けれど、小柄な彼を巡る「過保護な争奪戦」は、これからもずっと続いていくに違いない。
放課後の空には、三人を祝福するように、満天の星が輝いていた。