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夕日ひなみ

あ、1時限目なんだっけ

ボーッと目の前で大口を開けて話す友人を見つめる。 時刻は7時15分を指していて もうすぐHRが始まる時間に差し掛かっていた。

長浜 みなみ

ひなみ!まーた余所事考えてる!

時間が規則的に回るように 私の日常は特に変わらない。 余所事考えてる私を諭すみなみ それを見て微笑ましそうに見るイツメン いつものことだ。

夕日ひなみ

ごめんね。もうすぐホームルームじゃん?気になっちゃって

夕日ひなみ

それで、なんだっけ?

長浜 みなみ

もー、ひなみ酷いよ〜!

長浜 みなみ

うちのクラスに転校生が来るって噂!ほら、青木が昨日口滑らせてたじゃん?

そういえば、昨日のLHRで青木先生がふざけて女子をイジる男子に一喝入れていた。 その時に確かに「新しい人間を受け入れるには幼稚なクラスだぞ。」と苦言を呈していたのだ。 それを聞いて、喝を入れられ不貞腐れていた男子らも目をキョトンとしていた。

夕日ひなみ

あー、確かに。いつなんだろうね?
というか昨日の出来事なのに噂流れるの早くない?

長浜 みなみ

それが!ひなみの近所に引っ越してきた人いたじゃん?その人だよ!
すれ違い姿かっこよかったぁー!

祈るように胸の前で手を組みながら騒ぐみなみに、思わず苦笑してしまう。 確かにかっこいい男性だったけど、同い年ぽくないし なにより一人暮らしぽい。 「早とちり」はみなみの得意芸だ。

夕日ひなみ

嘘だぁ、みなみ顔広いから話したら広がるのも納得かも。

長浜 みなみ

もー、すぐ人の事馬鹿にした顔で見るのやめなさいよ〜!
もし当たってたら奢ってね?
ば・い・て・ん!

夕日ひなみ

はいはい

私の事娘と言う割に負けず嫌いの彼女は子供のように下唇を突き出す。 その顔が面白いのか、態度が可笑しいのか分からないがなぜか愛おしく感じて笑みがこぼれた

キーンコーンカーンコーン

私たちの会話が終わったのを察したかのようにHRの始まりを告げるチャイムが鳴る。 名残惜しそうに席に戻るみなみに 「また後で」と微笑んだ

ガラガラ 青木先生が入ってくる いつものように出席を取る。 出席名簿の記入が終わったのか 何か言いたそうな面持ちで教室を見渡し再び口を開いた。

青木 裕司

全員居るな。

青木 裕司

実は今日、うちのクラスに新しい仲間ができるぞ!
高校2年生で遊びたい盛りなお前らだろ。仲良くしてやってな。

そう言い扉に目をやった。 私たちも生唾を飲み込み、一点を凝視する。

青木 裕司

入っていいぞ。

その一言を待っていました、と言わんばかりにすぐ開かれた扉の前には一人の男子が立っていた。

酷く緊張してるせいか、両手両足が綺麗に揃っている。 本人は真面目なのだろう、顔色一つ変えない。

髙田 涼介

あーと、髙田涼介です。
好きな食べ物は肉
嫌いな食べ物はブロッコリーです。

髙田 涼介

ハンドボール部に入部しようと思ってます。
よろしくお願いしマス。

片言敬語で自己紹介をする髙田くんに クラス全員が拍手をする。 みなみは予想が外れたことに残念そうな顔を初め浮かべていたが、 髙田くんの顔を食い入るように見つめている。

長浜 みなみ

イケメン!

目を輝かせて口パクで伝えるみなみに呆れながら 「それな」 と返しておく。 髙田くんこの後の質問責め大変そうだなと他人事に思いながら前を向く。

青木 裕司

あ、席は…そうだなぁ

青木 裕司

青木 裕司

夕日ひなみの隣に行きなさい。

青木 裕司

おーい、夕日!後で先生の所に来て欲しい。じゃあ以上!

夕日ひなみ

はーい。

笑みを浮かべながら私の隣の席に着く高田くん。 程よく小麦色の肌に良く似合う白い歯が眩しいくらい笑顔が似合う。

髙田 涼介

よろしくね?えーっと、夕日さん?ひなみちゃん?

夕日ひなみ

ひなみでいいよ。

髙田 涼介

おう!ひなみ。

新しく隣の席に座る彼はきっと意地悪だ。 悟った瞬間だった。

使われていない空き教室に言いつけ通りの時間に着く。

あの後の髙田くんの人気には圧巻された。 関わることは隣の席とはいえ少ないかなと思うくらい。

青木 裕司

ごめん。待たせた。

夕日ひなみ

いえ、先生。それで要件は?

青木 裕司

伝えることが多くてな、態々すまん。

青木 裕司

まずは、髙田に教科書見せてやって欲しい。教材がなかなか届かなくてな。
早くて1週間後に郵送で東京から届くからな。

夕日ひなみ

あー、はい。

夕日ひなみ

それは構いませんが…

私が言わんとすることがわかったのだろうか、顔を申し訳なさそうに歪める。 異様に居心地が悪くなり、咄嗟に校庭に目を移す。 丁度3年の先輩方が体育の準備を始めているようだった

青木 裕司

考えてくれたか?

青木 裕司

例の件。

心臓がとびでそうだった。 準備体操の声が小さく聞こえるほど心臓の音がうるさく響く。

夕日ひなみ

いえ、まだ。

青木 裕司

先生は、本気でお前のこと…

被せるように一限目のチャイムが鳴る 少し考える素振りを見せてから 私の頭に手を乗せる。

ああ、何故だろう。 昔から期待の目を向ける人のこと見切りつけれないんだ。 頭に手を乗せる先生の目は優しい目をしていた。

夕日ひなみ

わかってる。

小さく呟く。 こんな優柔不断な自分が大っ嫌いだ

青木 裕司

取り敢えず、考えておいて。
先生いい答え待ってるからな。

夕日ひなみ

はい。

がたっ

頭から手が離れると同時に 廊下から聞こえる音にお互いの肩が跳ねる。 瞬時に廊下を見に行った先生がこちらに顔を向け首を横に振った。

青木 裕司

取り敢えずは授業に戻ろうか。先生から教科担に伝えておくから。

夕日ひなみ

ありがとうございます。

周りの視線を身体に穴が空くくらい受けながら自分の席に戻る。

HRの事が記憶に新しいのか、 何していたのかという好奇心の目で見つめる人はいなかった

青木 裕司

青木 裕司

…という事なので、すみません。

教科担任

ああ。分かりました。

青木 裕司

じゃ、お前ら真面目に授業受けろよ〜!

昨日の件もあってか、念を押しつつ先生は教室を出ていった。

教科担任

夕日さん。黒板に大切なこと、テストに出る所は書いてあるからね。
分からないことがあれば、隣の人に聞きなさい。

教科担任

髙田くん、よろしくね。

髙田 涼介

はい!

元気よく返事をしたかと思うと 身体を私の方へ寄せてきた

夕日ひなみ

髙田くん、今の所は大丈夫だよ。
ありがとう。

それでも、縮める事も離れる事もせずに何か言いたそうにしかめっ面している。

机の上には教科書をプリントしてもらったのだろう。紙が散乱しており、 二重線が引いてある。 意外と真面目なんだな。

トントン

夕日ひなみ

ん?

涼介

プリントの端に走り書きのように書かれている文字をシャーペンでつつく髙田くんと目が合う。

涼介ってよんで。

“涼介”とぶっきらぼうに書かれた文字の隣に書かれた文字に笑みがこぼれた。 コクンと頷けば、まだ何か話し足りない様な顔はしたものの 再び黒板に目を戻す彼に釣られて授業に集中した。

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