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放課後の帰り支度の音が響く教室で、
私は自分の心臓がうるさいほど脈売っているのを感じていた。
あの子 ┈┈┈┈┈ 淡いピンクベージュの髪、まっすぐ落ちる前髪、
静かな表情の奥にある強いまなざし。
彼女は大夢くんへそっとプリントを差し出し、控えめな声で言った。
?
知らない子。
でも、ただのクラスメイトという感じじゃなかった。
大夢くんはいつもみたいに優しく笑った。
稲尾 大夢
┈┈┈┈ 枝國さん。
名前を呼ぶ声が、私の胸に妙に刺さった。
大夢くんは誰にでも優しい。
それは知ってる。
でも、彼のあの柔らかい笑顔が、誰かに向けられているのを見るのは┈┈┈┈
たぶん、初めてだった。
枝國愛子ちゃんは、大夢くんの言葉に小さく微笑んだ。
枝國 愛子
隣。
その瞬間、胸の奥がぎゅうっと締めつけられた。
毎日、ずっと彼の近くにいる。
毎日、彼の声を聞いている。
毎日、彼の横顔を見ている。
そんなの、私だって…。
気づけば、手が小さく震えていた。
自分でも驚くほど、動揺していた。
稲尾 大夢
仲庭 乃彩
突然名前を呼ばれて、心臓が跳ねた。
いつもの優しい目で私を見ている。
稲尾 大夢
仲庭 乃彩
返事に力が入った。
大夢くんは照れたように笑う。
だけど ┈┈┈┈
その後ろで、愛子ちゃんが静かにこちらを見ていた。
ほんの少しだけ、切なそうに。
枝國 愛子
帰り際、彼女は私に向かって小さく会釈した。
柔らかくて、澄んだ声。
枝國 愛子
その“またね”の響きが、
なぜかとても深い意味を持っているように感じてしまった。
まだ何も知らない。
愛子ちゃんがどんな子なのかも、大夢くんとの距離も。
けれど確かに ┈┈┈┈
この子は、ただの女の子じゃない。
そう思った瞬間、胸がざわざわして苦しくなる。
春の風は優しいのに、私の心は静かに波立ち始めていた。