愛の仕方

知らないお兄さんの体には

血が沢山付いていて

自分の家族を殺したのはこの人なんだって

分かったのに

体が動かなくて

逃げられない

知らないお兄さんがナイフを振り上げる

あぁ、死ぬんだなと直感で分かった

家族の所に

行かせてくれるのだろうか

死んで欲しくなかった

僕だけを残して

姉だけを褒めないで欲しかった

僕も褒めて欲しかった

僕を

誰よりも

何よりも

愛して欲しかった

天国に行ったら

愛してくれるのだろうか

いや

どうせまた姉の事ばかりだ

僕なんか、興味も無いのだろう

誰にも愛して貰えない世界なんか

もう、必要無いや

僕は死を、受け入れることにした

でも

最後にこれだけはさせて欲しかった

僕は家族の方を向く

知らないお兄さんはナイフを振り上げた状態のまま固まっていた

僕がした行動に、驚いたのだろう

僕は

母親の頬を

父親の腹を

姉の頭を

順番に殴った

なんの反応もなかった

僕は痛かった

殴った手よりも

心が痛かった

でも、これだけはしたかった

そして

この言葉を言いたかった

あぁ、スッキリした

これで死ねる

天国に行けそう

いや、家族を殴ったから地獄かな？

別になんでもいい

もう、どうでもいい

そこから意識が無くなり

気がつけばここにいた

お兄さんが言うにはここはお兄さんの家らしい

広くて綺麗だけど

なんだか不思議な匂いがした

生臭いような、少し甘いような

まるで生肉と女性の香水が混ざったような匂いだった

怖い

怖い怖い怖い怖い

人を食べる....？

なんだそれ

化け物じゃないか

僕の家族を食べるのか...？

なら、僕もいつか.......

想像するだけで、足が震える

死ぬのは別に問題無かった

でも、食われるのはまた別だろう

ﾊﾟｧﾝｯ(頬を叩く)

痛い

今、叩かれた....？

叩かれるのが、こんなに痛いなんて知らなかった

頭を撫でられる

優しい手つき

でも

この手は

今僕の頬を叩いた手だ

怖い

死んでしまう程に怖い

逃げたい

ここから、今すぐに

ちゅっ♡