とある旅行雑誌の取材で、私と2つ上の先輩はかなり有名な温泉地に来ていた。
私
よし、今日の分の取材はおしまい!

私
そういえば宿とってなかったんですよね

私
まあ平日だし空いてるかな~

先輩
うん、大丈夫でしょ

先輩
温泉入ってゆっくり休もう

私
そうですね!

私
そういえば会社からは宿泊費いくらもらってるんですか?

先輩
それがね、2人で1万円しかないの

私
それは少ないですね...

先輩
まあどこかしらあるでしょ

私
ですね笑

私
観光案内所あるので聞きましょう

観光案内所の人
宿お探しですか?

先輩
そうなんですよ。けど2人で1万円分しかなくて...

先輩
これでも泊まれるいいとこありますかね?

観光案内所の人
(うーん...あそこなら...まぁ大丈夫かな)

観光案内所の人
ありますよ。少し我慢してもらうこともあるかもしれませんが、温泉は最高ですし、ご満足いただけるかと思います

先輩
おー、じゃあそこでお願いします。どの辺にありますか?

観光案内所の人
この道を奥に入ったところにあるので、地図お渡ししますね。どうぞ

先輩
ありがとうございます!安心しました

私
ありがとうございます

観光案内所の人
いえいえ、それではお気をつけていってらっしゃいませ

観光案内所の人
.......

私
良かったですね。良い方で

先輩
うんうん、結構いい温泉地だし高いと思ってたから

私
日が沈む前に地図に沿っていきましょ

先輩
うん。えっとね、この道を奥に進んだところにあるみたい。奥地の温泉は格別だよ!

私
楽しみになってきました!

先輩
ここみたいだね。ちょっと古いけど庭の感じで管理はされてるみたいだよ

私
じゃあ中に入りましょう

女将さん
こんばんは。ようこそいらっしゃいました。お二人様ですか?

私
はい。夕食と朝食付きで1泊分お願いします

女将さん
分かりました。まず、温泉を案内させていただきます

先輩
分かりました。

女将さん
ここの廊下をまっすぐいって右に曲がったところです。チェックアウトまでならいつ入っても大丈夫です。それではお部屋を案内させていただきます

私
分かりました。

女将さん
3階のつきあたりのお部屋です。鍵をどうぞ。

先輩
ありがとうございます。

私
それにしても広いですね。迷ってしまいそうです笑

女将さん
詳しくは各階、各部屋にありますマップをご覧下さい

女将さん
それではごゆっくりどうぞ

先輩
ありがとうございます

私
良さそうなとこですね!

先輩
これで1万円とは思えないねー

私
じゃあ部屋に行きましょう

私
3階のつきあたりでしたね

先輩
うん、行こうか

私
めちゃくちゃいい部屋じゃないですか。景色もいいし

先輩
ほんとだー。ここにして良かったね

先輩
じゃあ温泉行こうか

私
いやー、迷いましたねw

先輩
うん、温泉も左だったし笑

私
じゃあ今日の記事まとめたら寝ましょう。明日は午前取材で午後東京に帰るんですよね?

先輩
そうだね。がんばろう!

女将さん
温泉はどうでしたか?

私
すごい良かったです!食事もおいしかったですよ

女将さん
それは良かったです。ではお布団をひかせて頂きます。部屋の端のほうに移動してもらっていいですか?

布団がひき終わり、押入をしめると、頑丈そうな鍵でしめた。
先輩
押入にも鍵閉めるんですね

女将さん
あ、そうですよ...

私には女将さんの目が冷たくなったのが感じ取れた...
女将さん
ではごゆっくりどうぞ

11時頃、記事もまとめ終わり、寝ようとしたそのとき
私
え?地震?

先輩
びっくりしたね。まあそんな揺れてないし良かった。

私
そんな大きな地震じゃないですね。寝ましょう

地震の衝撃で押入が開いていた。女将さんはしっかり閉められていなかったようだった
気になって押入の中をのぞいた瞬間後悔した。天井に御札がたくさんはってあった。
私
わぁ!!!

女将さん
地震は大丈夫でしたか?

先輩
はい。大丈夫でしたよ。「私」ちゃん、今どうしたの?

私
え...

女将さん
なにかありましたか?

私
え、いや、虫かと思って...

女将さん
あら、そうでしたか。大丈夫ですね。

私
あー、今何時だろう。

私
え、先輩は?

私
電話かけてみよう

私
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不在着信

私
あれ?温泉かな?

完全にパニックになった私は、急いで部屋に戻ろうとした
私
え?え?え?

私
きゃー!!

前を見ると、女将さんが生きているとは思えない表情でこちらを見ていたのだった
先輩
大丈夫?

私
先輩...

私
ここは?

先輩
町の病院だよ。寝ている途中に叫んで意識を失ったから救急車を呼んだの。

私
あー...夢か

時計を見ると、午前中の10時だった。話を聞くと、ずっと意識を失っていたらしい。
観光案内所の人
この度は本当に申し訳ございませんでした。

私
え?どうしたんですか?

先輩
あの宿、女将さん何年か前になくなってたんだって。今は違う人がやってるみたい。

観光案内所の人
実はあの宿は女将さんがなくなってからよく出たんですよ。普段は何も無いんですが、ある部屋で御札を見てしまうともうだめなんですよ...

私
あー、じゃああの女将さんは亡くなっていたんですね。

観光案内所の人
はい。本当に申し訳ございません

観光案内所の人
さっき除霊師に来てもらったので、もう大丈夫です

私
あー。それなら良かったです。

私
もう気にしなくて大丈夫ですよ。

観光案内所の人
本当に申し訳ございませんでした。もし今後なにかありましたら、すぐにご連絡ください。

観光案内所の人
それでは失礼します

私
はい。

先輩
ふう、良かったね。これからは安いところには気をつけよう

私
はい...

先輩
疲れたと思うから、もう帰ってていいよ。私があとはやっとくから

私
すみません、ありがとうございます。お言葉に甘えて、お先に失礼します。

先輩
復帰できて良かった。またがんばろうね!

私
はい。よろしくお願いします

何ヶ月かにその宿を検索してみると、もう潰れていた。どうやら、旅行会社が取り扱わなくなったことで客が激減したようだった
作者
ここまでご覧頂きありがとうございました。初めての投稿ということもあり、くどい部分が多くなってしまい、申し訳ないです。

作者
厳しめの評価をいただけと、これからのためになります。よろしくお願いします。
