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第6話 作:田中樹
―彼side―
電車で15分揺られ 8分ほど歩く
いつもと同じ帰り道
―私side―
いつも通りの あなたの帰りをつ待つ
いつもと違う私
「ただいま〜」
『…おかえり』
「どうしたの?そんな 暗い顔して」
『話があるって言ったじゃん?』
スーツをかけ冷蔵庫を開けて いつものビールに手を伸ばす 彼の背中に話しかけた
「うん、なんかあったの?」
『あのね…』
『別れたいんだ』
長い沈黙が二人の時を止める
永遠にも感じるこの沈黙を 彼のありきたりな質問が遮る
「なんで?」
『…好きじゃなくなったんだ』
あなたに初めて嘘をついた
あなたにとっての私との時間を “凡庸なラブストーリー” のままにしておきたくて
男女が出会って別れる、 どこにでもあるラブストーリー
―僕side―
僕たちの過ごした時間は 特別だった
他の誰とも違う僕たちだけの ありきたりな時間
ありきたりなキス
君を凡庸なラブストーリーで 終わらせたくなかった
こんなことなら 始まらなきゃ良かった