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君との距離、0センチ

第11話 - 願結

2025年07月10日

#恋愛

#青春

#学生

#告白

ような。

ピロンッ

黒崎　蓮斗

…？

突然の通知にノートを捲る手が止まる

黒崎　蓮斗

…寺本？

画面を見つめたまま手が止まる

黒崎　蓮斗

…ほんとさ

黒崎　蓮斗

（俺だって会いたいと思ってるんですけど）

黒崎　蓮斗

（…でも、ちゃんと大事なこと乗り越えて、寺本の隣に立ちたい）

黒崎　蓮斗

（受験が終わったらちゃんと言わなきゃいけねぇな）

黒崎　蓮斗

（後ちょっと、頑張らないとだな）

受験前日

図書館に夕陽が差し込む

分厚い参考書を閉じ、シャーペンをしまう

黒崎　蓮斗

…よし

黒崎　蓮斗

（明日は本番）

黒崎　蓮斗

（今までずっと頑張ってたからいつも通りにいけば大丈夫だ）

黒崎　蓮斗

（ねみぃ…）

黒崎　蓮斗

（やべぇ、最近寝てなさすぎてたな）

黒崎　蓮斗

（今日は流石に早く寝らねぇと）

荷物をカバンに詰め込む

黒崎　蓮斗

（…帰るか）

ガシッ

黒崎　蓮斗

…？！

目の前に現れたのは

寺本　詩

く、黒崎先輩っ！！

黒崎　蓮斗

は？寺本…？

今1番会いたかった人

寺本　詩

良かった、間に合った…

黒崎　蓮斗

どうしたんだよ

寺本　詩

えと、これ…！

黒崎　蓮斗

…！

寺本　詩

お守り、です

お守りを差し出す詩の手にはたくさんの絆創膏が貼られていた

黒崎　蓮斗

お前、その手…

寺本　詩

受験の時、黒崎先輩のそばにいるのは足手纏いな気がして

寺本　詩

でも、頑張ってる黒崎先輩を1番に応援したかったんです!

寺本　詩

…こんなことしかできないですけど、少しでも力になればなって

黒崎　蓮斗

…寺本

寺本　詩

黒崎先輩がずっと頑張ってきたの、知ってます！

寺本　詩

毎日遅い時間に既読がついてたのも気づいてました

寺本　詩

その度に今先輩頑張ってるんだって

寺本　詩

私も先輩のために何かしたいって思ったんです

寺本　詩

…不器用で、ボロボロなんですけど、

寺本　詩

明日、頑張ってください！

黒崎　蓮斗

…はぁ

不格好なお守りを受け取る

黒崎　蓮斗

ありがとう

黒崎　蓮斗

これが1番力になるかも

寺本　詩

そ、そんなことは、ないですけど…

黒崎　蓮斗

明日頑張るから

黒崎　蓮斗

このお守りも、1番近くにつけてるから

寺本　詩

…はい！世界で1番応援してますから!

黒崎　蓮斗

なんだそれ

黒崎　蓮斗

（好きだな、やっぱり）

黒崎　蓮斗

（今日会えて良かった）

黒崎　蓮斗

（受験が終わったら、ちゃんと…）

1番伝えたいこと、伝えるから

受験当日　夕方

寺本　詩

（うぅ、先輩もうすぐ終わる時間だ…）

寺本　詩

（こっちまで緊張する〜）

寺本　詩

（長いこと会うの我慢してたけど、今日が終わったらまた会えるようになるのかな…）

寺本　詩

（私は誰よりも黒崎先輩が好き）

寺本　詩

（ちゃんと恋人として付き合っていきたい）

寺本　詩

（この気持ち、伝えたい）

寺本　詩

（でも受験終わってすぐ言うのってやっぱ待ってました、みたいで嫌だよなぁ）

寺本　詩

（でも、会いたい…）

寺本　詩

（今はそれだけなんだよ）

ピロンッ

寺本　詩

（メッセージ？誰だろ…）

寺本　詩

く、黒崎先輩？！

寺本　詩

（良かった、無事終わったんだ…）

"会いたいんだけど"

寺本　詩

っ…！

寺本　詩

（私も、会いたいです）

迷わず部屋を飛び出した

子供達の笑い声が響く

バスケットボールがバウンドする音が聞こえる

コートの柵に寄りかかっていた黒崎先輩が見える

寺本　詩

（…いた！）

寺本　詩

黒崎先輩！

目が合った瞬間、思いが胸に込み上げてくる

黒崎　蓮斗

良かった、来てくれて

寺本　詩

当たり前です!

寺本　詩

（やばい、嬉しい）

寺本　詩

（黒崎先輩を見ただけで泣きそうになっちゃう）

黒崎　蓮斗

ちょっと前に受験終わってここ来た

寺本　詩

受験、ほんっとにお疲れ様でした！

寺本　詩

…どう、でしたか？

黒崎　蓮斗

うん、手応えはそこそこあるよ

寺本　詩

ほんとですか！

黒崎　蓮斗

…ほら

黒崎先輩は手からお守りを出す

寺本　詩

…これ

黒崎　蓮斗

うん、1番近くで持ってた

黒崎　蓮斗

今日1日ずっと寺本に見守られてる気がした

寺本　詩

そんな大げさな笑

黒崎　蓮斗

これまでもずっと、支えてくれてたよ

黒崎　蓮斗

メッセージも、あんまり返せなかったけど通知が来るだけですげぇ嬉しかった

黒崎　蓮斗

お前が応援してくれて、頑張ろうって思えた

黒崎　蓮斗

今日頑張れたのは、全部お前のおかげだよ

寺本　詩

っ、そんなこと、ないですっ！

寺本　詩

（嬉しくて、飛んでいきそう…）

寺本　詩

（私が、黒崎先輩をちゃんと支えられてたんだ…）

寺本　詩

（…よし）

寺本　詩

（今まで言いたくても言えてなかったこと、今日はちゃんと伝えるって決めた）

寺本　詩

（先輩の恋人になりたい）

寺本　詩

（先輩は勇気を持って受験してきたから今度は私が頑張る番）

寺本　詩

（私たちの関係、このままじゃ嫌だ）

寺本　詩

先輩、私ちゃんと先輩に伝えたいことがあって…！

黒崎　蓮斗

うん、俺もあるんだけど

黒崎　蓮斗

先、言っても良い？

寺本　詩

へっ…？

寺本　詩

は、はい…

黒崎　蓮斗

受験で会えないときが続いたけど俺の中には寺本しかいなかったよ

黒崎　蓮斗

離れてても、ずっと考えてた

黒崎　蓮斗

お前は会いたいって言ってくれてたけど、俺だっておんなじだったよ

黒崎　蓮斗

ちゃんと大事なこと乗り越えて、全部伝えたいって思ってたんだ

黒崎　蓮斗

俺が、思ってること

寺本　詩

…！

寺本　詩

（先輩が、思ってること…）

寺本　詩

（それって…？）

黒崎　蓮斗

"好き"って言ってたけど、その後1番大事なこと、言えてなかった気がする

黒崎　蓮斗

あの時からずっと、"寺本の隣にいたい"って、そう思ってたよ

黒崎　蓮斗

だからさ─

黒崎　蓮斗

詩、俺と付き合って

寺本　詩

っ…！

息が詰まる

1番、聞きたかった言葉

寺本　詩

（だめ、泣きそう…）

黒崎　蓮斗

…返事、してほしいんだけど

寺本　詩

よ、よろしくお願いしますっ！

声を出した瞬間、涙が溢れ出る

寺本　詩

私、実はずっと好き同士のままで、それ以上にはならないって思ってました

寺本　詩

けど、黒崎先輩とその先を行きたくて

寺本　詩

でも、先輩にとってそれが迷惑になったら嫌だからって思って

寺本　詩

せめて受験終わったら伝えて、無理なら諦めようってけじめつけてたんです…

寺本　詩

なのに、先輩も同じこと思ってくれてた…

寺本　詩

黒崎先輩が、そう思ってくれてたことが嬉しくて…

黒崎　蓮斗

遅れてごめん

黒崎　蓮斗

俺らもう、ちゃんと好き同士の先、行ってるから

寺本　詩

…はい！

寺本　詩

て、ていうか！さっき私のこと、名前で呼んで…

黒崎　蓮斗

何、別に良くね？

黒崎　蓮斗

彼女になるんでしょ

寺本　詩

…！

寺本　詩

（彼女…！）

寺本　詩

（私、やっぱり彼女になったんだ！）

寺本　詩

はい、私、黒崎先輩の彼女ですっ!

黒崎　蓮斗

…てか、お前はずっと黒崎先輩なのかよ

寺本　詩

…えっ？！

黒崎　蓮斗

距離、縮まんないけど

寺本　詩

え、で、でもっ

寺本　詩

（黒崎先輩を名前で呼ぶなんてっ!）

寺本　詩

（むり、むりむりむり心臓壊れそう！）

黒崎　蓮斗

言えねぇの？

寺本　詩

…！

寺本　詩

言いたい、です

黒崎　蓮斗

早く言えよ

寺本　詩

れ、れんっ、れん、と…くん？

黒崎　蓮斗

ぎこちな

寺本　詩

う、うるさい！

繋がりあった2人の想い

オレンジに照らされた二つの影が並ぶ

"好き同士"より先の世界

この世界であなたと離れないように

二つの手が今、絡み合う

君との距離、0センチ

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