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◆人形制作1日目
『週刊 藁人形を作ろう』の創刊号が届いた。
定価は2980円。
高校生の俺にとって、3000円近い出費は痛い。
だが、創刊号は特別価格の666円だった。
俺
梱包を解いてみる。
マニュアルの他に、チラシ・ロウソク5本・鉢巻・白装束らしきもの・でかいブランデーグラスが箱の中にどんよりと横たわっていた。
さすが、呪いのグッズといったところか。
俺
白装束らしき物体をどけると、ピコピコハンマー(ピコハン)、五寸釘(約15センチ)が顔を覗かせた。
俺
俺
人形の主材料であるはずの藁(わら)だが、1本だけ入っていた。
五寸釘は100本も入っているというのに。
いま気づいたが、送り主(販売業者名)『ケツアゴスティーニ』となっている。
本家と間違えて購読を申し込んでしまう被害者が、俺の他にも居そうだ。
チラシに視線を落とすと、楽し気な文字が目に飛び込んできた。
どうやら、その他の商品紹介をしているようだ。
“週刊 ランボルギーニ・ディアブロを作ろう 創刊号は10万円”
コンプリートには、4000万円ほどかかるらしい。
俺
俺
俺
俺
おっと、白装束ではなかった。
白いバスローブだ。 ブランデーグラスが付属している理由に合点がいった。
このブランデーグラスを持つと、バスローブが映えるからだろう。たぶん。
藁が1本しかないため、今日は制作に取り掛かれない。
バスローブを装着した俺は、 ラテン系の麻薬王になった気分で、 でかいブランデーグラスをグリングリンと回した。
◆2日目
長さ160センチほどの藁が届いた。
剥き出しで送られてきたのには驚いたが。
藁の重さは25キロ。
何本あるのか、見当がつかない。
マニュアルによれば、数体の藁人形が作れるらしい。
人形のタイプは2種類あるそうだ。
ひとつは、ノーマルタイプ。藁を束ねて人型をつくるという、初心者向けの藁人形だ。
もうひとつは、ハイグレードタイプ。
完成形は似たり寄ったりだが、呪いの効果が段違いらしい。
藁を編み込んで作るものだ。
俺はノーマルタイプを選んだ。
簡単なほうがいい。
◆10日目
作り始めて、指10本を折り曲げるくらいの日が経ったころだ。
藁がワラワラと6畳間に集結していた。
ほどよい量の藁が集まるまで、作業を中断していたのだ。
そのせいか、部屋の中は屋根を葺(ふ)けそうなくらい、大量の藁で溢れている……。
俺
夢中になって作業を続けた甲斐あってか、今日1日で人形の胴体部分が完成した。
見ればみるほど、“水戸納豆”っぽい。
160センチという大きさだが。
俺
◆20日目
納豆ができた。いや、出来てしまった。
少し前に仕込んだ大豆が良い感じに発酵したようだ。
ちなみに、納豆はおいしくいただいた。
◆21日目
一度人形をバラして、藁を洗った。
だがしかし、ほんのりと藁が納豆臭を放っている。
ネバネバも取り除けなかった。
藁は、大量に残っている。
複数体の人形を作れる仕組みのようだ。
社名はアレだが、侮れんな、ケツアゴスティーニ!
ハイグレードタイプの藁人形制作に切り替えるとしよう。
手間はかかるが、マニュアルには作り方が丁寧に解説されている。
挑戦するしかない。ついでに、人形制作と並行して納豆を製造することにした。
◆22日目
わらじが完成した……。
なにかの呪いだろうか。
◆23日目
ソンブレロっぽいものが出来上がった。 つばの広い帽子だ。
メキシコ人が被っているイメージがあるので、“ドンタコスったら、ドンタコス”と歌いながら踊ってみたが、虚しくなってきたので、やめた。
油性マジックで鼻の下に描いた“チョビひけ”が消えない。
俺
俺
◆24日目
“遅刻、自爆、地殻変動ぉ~”とか言いながら、スマホを咥えて爆走する女子高生とすれ違った。
俺
俺
そんなことより、ひとこと言いたい……。
俺
◆25日目
人形を作っていたはずだが、トートバッグが出来上がった。
ちなみに、昨日描いたチョビひけは残っている。
鼻の下がチョビっているのだ。
藁を届けてくれた配送業者のお兄ちゃんが、俺の顔を二度見した。
調子に乗って眉毛をゲジゲジにしたせいだろうが、俺は気にしない。
◆人形製作X日目
ようやく藁人形の誕生日を迎えた。
出来上がった藁人形のサイズは、160センチ。
『大』と言う文字を模した立派なブツが完成した。
俺
俺
俺
俺
怨念を込めながら、藁を編み込んでいたせいか。
人形が完成したら、怨みなど、どこかへ消えてしまった。
仕返しなんて、もうどでもいい。
いまは、こうして藁人形を抱き枕にして使っている。
おわり
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