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デイリー・クロニクル新聞社

受付の男

社長のモルドンなら、不在です

受付の男は、落ち着いた声で言った。

ルシア

では、私も会いに行きます

ルシア

モルドン氏は何処に?

受付の男

ラグナーク邸です

受付の男

お一人で、取材に向かわれました

ルシア

取材? 一人で?

ルシア

あんな記事を書いといて…

ルシア

あなたたち、公爵様が怖くないの?

 受付の男が皮肉気に笑う。

受付の男

モルドン様は正義の記者ですから

受付の男

どんな権力にも屈しません

受付の男

必ずや、巨悪を暴いてださるでしょう

受付の影

別に殺されはしねえよ

受付の影

ラグナーク公爵は善人だ

受付の影

好きに捏造させてもらう

ルシア

……ああ、そっか

ルシア

あなたたちは情報屋

ルシア

公爵様の噂の真偽ぐらい知ってて当然、か

 私はぼーと呟いて、直後、ブチ切れた。

ルシア

自分たちが害されないのを知ってるから…

ルシア

あの人を、舐めてるのか

激情に反して、熱はない。

脳は冷たく冴えわたり、思考だけが冴えていく。

私は受付カウンターの奥へ視線を向けた。

新聞社の人間がせわしなく働く作業スペース。

そこで、ひとりだけ机に肘をつき、爪を磨いている女がいる。

淡い栗色の髪をゆるく巻いた、砂糖菓子みたいな女だった。

影の声に耳を澄ます。

嫉妬、虚栄、独占欲。

ルシア

ぜんぶ、聞こえた

私は女を指さした。

ルシア

そこの女性、この職場で三人の男性と関係を持っています

ルシア

そのイヤリングは向かいのデスクの方

ルシア

指輪は隣の席の男性

ルシア

ネックレスは受付の男性からの贈りものです

一瞬、空気が凍り付く。

三人の男たちが、アイコンタクトで、私の言葉が事実だと確かめ合う。

次の瞬間、新聞社は修羅場になった。

怒号と罵声、悲鳴と弁解が入り乱れ、紙束が宙を舞う。

ルシア

訂正記事を書いてくれればそれでいい

ルシア

そう思っていたんですが…

ルシア

気が変わりました

ルシア

モルドンさんには、何一つ容赦しません

私が言い捨てた言葉は、誰も聞いていなかった。

いつの間にか、喧騒は刃傷沙汰に発展している。

刃物を持った男が、傷だらけの男に取り押さえられているのが見えた。

 私は荒れ果てた新聞社を後にした。

ラグナーク邸は、王都の北区にある。

左右の門柱に据えられた、牙を剥いた獣の石像に迎えられた。

ルシア

入りづらいよ、何なのこの像

門扉には棘のような装飾が絡みつき、何だかものものしい。

正面玄関へ続く道の両脇には、黒薔薇の低木が並んでいた。

整然とした庭は、美しい。

一方で、すべてが出来過ぎていて、作り物めいた不気味さも感じる。

ルシア

……怖いな、ここ

ルシア

(いや、何も怖くないはずなんだけど)

ノッカーを鳴らそうとしたとき、違和感を覚えた。

ルシア

……人の気配がない?

ルシア

使用人ぐらい、いるはずだけど

 ――そのときだった、男の悲鳴が響き渡った。

男の声

ひ、ひぃッ!? やめろォォォ!!

 知らない声だ。

ルシア

……中で何か起きてる

私は門を押し開け、敷地の中へ踏み込んだ。

 窓の外から中の様子を覗き込む。

 玄関ホールでは屋敷の使用人たちが倒れていた。

 外傷はない。薬で眠らされているようだ。

 眠っていない人間は、三人だけ。

暗殺者の男

助けが来ると面倒か?

暗殺者の男

叫べないよう、喉元軽く切っとく?

暗殺者の女

必要ないよ、ここ人通り少ないし

暗殺者の女

うっかり殺しちゃうほうが問題でしょ

暗殺者の男

それもそうか

暗殺者の男

旦那が来るまでに死なれたら洒落にならん

 黒装束の男女二人組。

 肌を刺すような空気を纏っている。

 見るからに堅気の人間ではない

 その足元には、膝をついた男。

モルドン

頼む! 助けてくれ!

モルドン

記事の件は謝る! 訂正記事も出す!

モルドン

命だけは、助けてくれ!

 顔面蒼白、涙と鼻水で顔がグチャグチャだ。

 あれが、醜聞王モルドン・グレイだろう。

ルシア

……これって

 明らかに、暗殺の現場だった。

ラグナーク

クックック

螺旋階段をコツコツと音を立てて、男が一人、降りてくる。

黒幕公爵、ラグナーク様だった。

ラグナーク

これはこれは、素敵なお客さんですねえ

 公爵様が邪悪な笑みを浮かべた。

 暗殺者の男女二人組が公爵様と目を合わせる

暗殺者の男

あ、旦那だ!

暗殺者の女

ラグナーク様!

 まるで長年の友のように公爵様に笑みを返す。

 公爵の目はモルガンに向く。

ラグナーク

あなたには、ぜひお礼をしたかった

ラグナーク

さて、どうしてくれましょう?

 

ルシア

…………

ルシア

……え?

ルシア

これで、ギルティじゃないことある?

黒幕公爵の溺愛~彼の本心を私だけは知っている~《チャット版》

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