ナレーション
数分後、作業着から着替えた彼がエマの前に姿を見せる
少し短くなった黒髪を束ね、ラフな格好の彼に目が離せない
少し短くなった黒髪を束ね、ラフな格好の彼に目が離せない
ドラケン
悪ぃ、待たせたな
エマ
あ、ううん。そんな待ってないし
ドラケン
そうか、とりあえずコレ被れ
ナレーション
歩み寄り手渡されたのはフルフェイスのメット
エマ
え?ヘルメット??
ドラケン
おう、これからちょっと出掛けンぞ
ドラケン
(勢いだった。本当なら、俺はまた突き放すべきだったのかもしれない。
けれど、十数年想い続けたアイツが目の前にいる。
それが俺にとっては奇跡で…あの頃のように、後悔はしたくなかった)
けれど、十数年想い続けたアイツが目の前にいる。
それが俺にとっては奇跡で…あの頃のように、後悔はしたくなかった)
エマ
出掛けるって、え、今から??いいけど…どこ行くの?
エマ
(突然の言葉。辺りは夕焼けに染まってる。
手にしたヘルメットに自分の顔が反射して、知らず顔が緩んでることを知った。
本当に、ドラケンに会えた…ずっとずっと想い続けた彼に、やっと会えた。
その想いが勝って、断る選択肢なんてあるはずもなかった)
手にしたヘルメットに自分の顔が反射して、知らず顔が緩んでることを知った。
本当に、ドラケンに会えた…ずっとずっと想い続けた彼に、やっと会えた。
その想いが勝って、断る選択肢なんてあるはずもなかった)
ドラケン
行けば分かる
ナレーション
彼はそう短く告げると、バイクを倉庫から押して戻りひょいと彼女を抱き上げて後ろに座らせる
エマ
わっ、もうっ!自分で乗れるよっ
ドラケン
くく、悪い悪い
オマエちっせぇからよ
オマエちっせぇからよ
エマ
ケンちゃん~?!
ドラケン
…っ、はは、悪かったって
ドラケン
(懐かしい呼び声、"ケンちゃん"と呼ぶアイツが愛しくて、言葉が喉に詰まる。
俺は考えないようにしながら、バイクに股がる。
背中越しに感じる温もり。幻じゃないと確信した瞬間だった)
俺は考えないようにしながら、バイクに股がる。
背中越しに感じる温もり。幻じゃないと確信した瞬間だった)
ドラケン
しっかり捕まってろよ、振り落とされるぞ
エマ
ええっ、やだ!ケンちゃん安全運転してよね?!
エマ
(悪態を吐きながら、彼の腰に腕を回す。
ガッチリとした体つきに鼓動が早まるのを感じた。
幻なんかじゃない、本物のケンちゃんだ…
そう思うと、自然と涙が溢れて溢れ落ちた。
見られてない、見られたくない。泣いてる姿なんて、それでまたバイバイなんて、絶対にいやだ。
必死に堪える涙は、思いに反して止まること無く流れ続けた)
ガッチリとした体つきに鼓動が早まるのを感じた。
幻なんかじゃない、本物のケンちゃんだ…
そう思うと、自然と涙が溢れて溢れ落ちた。
見られてない、見られたくない。泣いてる姿なんて、それでまたバイバイなんて、絶対にいやだ。
必死に堪える涙は、思いに反して止まること無く流れ続けた)
ナレーション
泣いている彼女に気付いているかは分からない
けれど、彼はそのまま振り返ること無くバイクを走らせる
二人の視界を流れる景色に、どことなく懐かしさが混じる
けれど、彼はそのまま振り返ること無くバイクを走らせる
二人の視界を流れる景色に、どことなく懐かしさが混じる
ドラケン
なぁ!覚えてるかー!!?
エマ
えーー??何をー??
ドラケン
この景色!!ここ、昔来たことあったろ!
エマ
昔?!
ドラケン
おう!!マイキーと俺と場地とオマエの4人で来ただろ!!
エマ
あっ!!
エマ
(言われてハッとした。
どこか懐かしいと感じた景色、ここはあの抗争が始まるまだ少し前。
4人で遊びに来た海の見える丘へと続く道だった。
夕日を見ながら、騒いで花火をして…初めて4人で夜を明かした場所)
どこか懐かしいと感じた景色、ここはあの抗争が始まるまだ少し前。
4人で遊びに来た海の見える丘へと続く道だった。
夕日を見ながら、騒いで花火をして…初めて4人で夜を明かした場所)
エマ
もしかして、あの丘に向かってるの!!?
ドラケン
おう!!
エマ
懐かしい~!あの丘まだ昔のまんま?!
ドラケン
そのまんまだ!もしまた、オマエに会うことがあったら!ぜってぇ連れてくって決めてた!!
エマ
えっ……
エマ
(思いがけない言葉だった。
"また会えたら"ドラケンから出た言葉。
忘れられてなかった、また会えるかもって思ってもらえてた。
その事が嬉しくて、彼の背に顔を埋める)
"また会えたら"ドラケンから出た言葉。
忘れられてなかった、また会えるかもって思ってもらえてた。
その事が嬉しくて、彼の背に顔を埋める)
ドラケン
(不意に言葉が途切れ、何かあったかと視線を流した瞬間。
背中に受ける感触、アイツが顔を埋めたのが分かる。
"やべぇ…"鼓動が早まるのを自身で感じながら、どうか聞こえないようにと願う)
背中に受ける感触、アイツが顔を埋めたのが分かる。
"やべぇ…"鼓動が早まるのを自身で感じながら、どうか聞こえないようにと願う)
ドラケン
おい!どうした!
エマ
……なんでもない!!
エマ
(虚勢をはって声を上げる。
自分の鼓動の音が耳の中まで響くのが分かる。
変わらない気持ちが、どんどん膨らんでいく)
自分の鼓動の音が耳の中まで響くのが分かる。
変わらない気持ちが、どんどん膨らんでいく)
ナレーション
そこからは二人無言のまま
お互いに言葉を言い掛けては飲み込むことを繰り返す
まだ日は落ちない
丘の上からは、どんな景色が待っているんだろう。
互いにそう思いながら、バイクは目的の場所へと走り続けた
お互いに言葉を言い掛けては飲み込むことを繰り返す
まだ日は落ちない
丘の上からは、どんな景色が待っているんだろう。
互いにそう思いながら、バイクは目的の場所へと走り続けた