ある日の学校でのこと
琴音
晴香
琴音
ドヤ顔で琴音が差し出したのは
晴香
琴音
小さな容器に入ったそれは、 どう見ても香水には見えなかった
晴香
琴音
琴音
琴音
晴香は、琴音のこういうところが苦手だった
相手の”無知”をバカにするような態度
無意識なのだろうが、それが晴香に 「傲慢そう」という印象を与えていた
晴香
晴香
琴音
ほら!と言って自分の耳に練り香水を塗る琴音
先生にバレないように開けたというピアス 小ぶりなジュエルが誇らしげに輝く
晴香
琴音
バッグをガサゴソと漁る琴音
琴音
晴香
琴音がバッグから出したのは、 一目でブランド物だと分かる香水の瓶と口紅
中学生が手にしていいような代物でないことは、 ブランドに精通していない晴香にも分かった
琴音
琴音
晴香
さすがにまずいのではないか、そう思い尋ねる
琴音
琴音
ニコニコしながら晴香の手首にそれを吹きかける
少し大人っぽい、フルーティーな匂いがした
晴香
晴香
琴音
琴音
でも…と続けようとした晴香に めんどくさいなあ、と言う顔を向ける琴音
晴香
琴音
琴音
晴香もつける?
琴音にきかれ、首を振る 彼女の悪行に加担するのはごめんだった
晴香
琴音
不満そうに口をとがらせる
自分のことを可愛いと思ってるんだなあ… 晴香はなんとなくそう思った
琴音
目を輝かせて言う
まるで、飽きっぽい幼子のようだ
晴香
香水やコスメが好きな琴音に話を合わせるために 晴香は、大して好きでもない化粧品を沢山買っていた
晴香
琴音
琴音
バカにするような視線
晴香
晴香
晴香
苛立つ心を、笑って誤魔化した
琴音
晴香
琴音
琴音
数学の授業中
先生
先生
演習プリント取りに行ってくるから そう言って数学の教師は教室を出ていった
晴香
琴音に見せるためのボディミストをバッグから探し出す
晴香
そっと手首に吹きかけると、 ふわりと石けんの香りが漂う
晴香と琴音がコスメの話をしているのはいつものことだ 教室が香水の匂いで満ちるのもよくある話 誰も気にしない
晴香
前の席の琴音に小声で話しかける
琴音
例の香水をいじっていた琴音がゆっくり振り返る
晴香は琴音に見せようと、ボディミストを手に持った
晴香
その時だった
たまたま、琴音が振り返った瞬間に
晴香の指がボディミストをプッシュして
琴音
噴出した液体が、琴音の目に入る
わざとではない ただの事故だった
晴香
慌てるも、既に入ってしまったものは どうしようも無い
目を抑えて蹲る琴音を呆然と見つめることしか 出来なかった
晴香
クラスの皆も異変に気付き、教室が騒然とする
琴音
琴音
目を抑えて、痛みを我慢するかのように頭を振る琴音
机に頭が当たるのも気にしなかった
晴香
それは、やはり偶然だった
弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂
琴音にぶつかった机が、大きく揺れ…
ガッシャーン、そんな音が聞こえた
晴香
ママのバッグからとってきちゃった、 そう笑う琴音の言葉を思い出した
机から落ちたおしゃれな瓶は、見るも無惨に割れて 中身が床にぶちまけられていた
ツーン、とした強い匂いが鼻を刺す
琴音
匂いに気付いて床を見る琴音
痛みすら忘れたのか、涙の溢れる瞳で 呆然と香水の残骸を見つめる
琴音
嗚咽をあげたかと思うと、しゃくりあげはじめる琴音
痛みからか、悲しみからか その泣き声はだんだん大きくなっていく
明らかに自分が悪くて起きたことだった
だが晴香は、罪悪感など抱かなかった 抱けなかった
琴音に聞こえないよう、小声で言う
晴香
いつも自分をイラつかせる琴音が 赤子のように泣き喚く姿は
心地よいものだったのだ
晴香
クラスメイトは困惑しつつも、琴音の面倒くささを 知っているからか、声をかけることはしなかった
困ったようにこちらをむく複数の視線に苦笑いして
晴香
もう一度、そう呟いた
コメント
4件
主人公に共感できるけど、琴音ちゃんも可哀想ですね…。 まぁ自業自得ですが。