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枝葉に残った水滴が星を引き延ばすようにきらきらと揺れ、足音は湿った落ち葉のクッションに吸われていく。
あらたろは拠点の寝袋から音を立てないように 抜け出していた。
靴底が濡れた土に触れるたび、冷たさが体の奥へと染みる。
彼は一歩一歩足を進めながら、自分の鼓動を耳で確認するように手を胸に当てた。
森は昼とは違って、音の輪郭が鋭く、 枝がこすれる小さな擦れ音さえも大きく聞こえる。
少し進むと、地面の泥が不自然にへこんでいるのが見えた。
あらたろ
月の薄明かりが差し込む隙間に、蹄の輪郭がくっきりと浮かんでいる。
あらたろは思わず足を止め、しゃがみ込んで指先でその形をなぞった。
指先に伝わる土の冷たさが現実を引き戻す。
痕跡は新しい。まだ湿り気が残り、周囲に乱れはなかった。
その時、前方に黒い影がゆらりと動いた。
あらたろ
影は肩を震わせるようにして立ち上がり、月光に角の輪郭がわずかに浮かんだ。
赤い瞳が暗闇の中で赤く滲んでいる。
あらたろ
しばらくして、鹿はその場を離れ、木立の間を滑るように進んだ。
あらたろ
あらたろは足を引きずらないように慎重に拠点へと戻り始めた。
歩幅は小さく、静かに。
しかし同時に、背中には冷たい風が当たった。
あらたろ
あらたろが振り返ると、暗がりから赤い光がこちらへ向かってきていることに気づいた。
あらたろ
低く湿った音のあと、木立の向こうで赤い光が二つ、ぎらりと光った。
???
その巨体は影からすっと現れたかと思うと、次の瞬間には地面を蹴り、信じられない速さで距離を詰めてきた。
あらたろ
あらたろは息が詰まり、足がすくんだ。
あらたろ
心臓が破裂しそうになり、彼は反射的に拠点の方へ走り出した。
だが後ろから迫る音は、すぐ真後ろにまで迫っている。
息を吸う暇すらなく、ただ必死に前へ。
拠点の明かりが視界に飛び込んだ瞬間、あらたろは声を上げることもできずに飛び込むように戻った。
背後から迫っていた赤い影は、焚き火の光に射された途端動きを止めた。
鹿はやがて振り返らずに森の闇へと戻っていき、影はすべてを呑み込んだ。
あらたろは地面に膝をつき、両手で顔を覆った。
あらたろ
心臓が口から飛び出るほどに速く打っていたが、それでも彼は生き延びた。
彼が拠点の中に入ると、火の傍らにいた悠翔がすぐに顔を上げた。
悠翔
あらたろは肩を張り、半分は照れ隠しで笑った。
あらたろ
陽葵は濡れた袖を振り払って彼の前に駆け寄る。
陽葵
陽葵
陽葵の声には少しだけ震えが混じっているのを感じた。
あらたろ
Kanade
Kanadeの目は深い不安を秘めていた。 声は芯のある響きであらたろに向けられた。
Kanade
Kanade
あらたろはその言葉に少しだけ顔を曇らせ、 でもすぐに笑いを作って返した。
Kanadeは薄く笑ってから、手のひらで彼の肩を軽く叩いた。
Kanade
Kanade
Kanade
Kanadeは本当に心配しているのだと、 あらたろはその目で理解した。
あらたろ
彼は少し顔をしかめ、真剣な声で応えた。
あらたろ
悠翔は腕を組み、火を見つめながら落ち着いた声で言った。
悠翔
悠翔
陽葵は小さくうなずいた
陽葵
あらたろはちょっと照れたように笑い、でも真摯に答えた。
あらたろ
火の揺らめきが四人の顔に影を落とし、 夜の静けさがゆっくりと戻ってくる。