ある日、教室に入ってきた水雫を見た瞬間、神風と詩音は少し驚いた
彼女の顔色が冴えず、いつもより少しやつれているように見えたのだ
だが、水雫はいつもの優しい微笑みを浮かべ、友人たちに「おはよう」と声をかけていた
彼女はその日も変わらず周りの悩みに耳を傾け、真剣に相談に乗っていた
友人A「水雫ちゃん、やっぱり頼りになるなぁ」
友人B「そうだよね、私もいつも助かってるよ」
周りから感謝の言葉が飛び交う中、詩音と神風は少し心配そうに水雫を見つめていた
彼女は誰よりも周りを気にかけ、皆の悩みを受け止めているが、その優しさが逆に負担になっているのではないか、と二人は感じていた
昼休み、神風と詩音は意を決して水雫のもとに向かい、声をかけた
天野神風
なあ、水雫
天野神風
お前もたまには相談に乗ってもらう側になってもいいんじゃねえか?
秋山詩音
そうだよ
秋山詩音
神風もいるし、俺もいる
秋山詩音
もし何か困ってることがあるなら、言ってほしいんだ
二人の言葉に、一瞬驚いたように目を見開いた水雫
しかし、すぐにいつもの微笑みを浮かべ、ほんの少しだけ困ったように首を横に振った
月宮水雫
…大丈夫だよ
月宮水雫
本当に、ありがとうね
その一言を残し、水雫は教室を出て行った
彼女の背中がどこか寂しげに見え、二人の胸に小さな痛みが走った
秋山詩音
…水雫、本当に大丈夫なのかな?
天野神風
あいつ、無理してるんじゃねえか?
天野神風
俺たちに話してくれてもいいのにな…
二人は水雫が抱える「大丈夫」の裏にある何かを感じ取っていたが、どうしてもその扉を開く方法が見つからなかった
その日は、どこか胸に引っかかるものを抱えたまま、二人は水雫の背中を見送るしかなかった
彼女の「大丈夫」という言葉が、本当は助けを求めるサインであるかもしれないことに、二人は薄々気づき始めていた