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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

斧使い

いてて……

精霊

何というか

精霊

豪快なビンタでしたね

精霊

あの方が仲間の魔法使い……だったのですよね?

斧使い

はい

斧使い

まさかビンタされて

斧使い

10メートルも吹っ飛ばされるとは思いませんでした

精霊

しかも、3回転してましたよね

精霊

あそこのタルとか、粉々になってますし

精霊

服屋の店員さんも、呆然としています

斧使い

魔法使いは怒って、すぐに出ていってしまったので

斧使い

店員さんも、何が起きたのか理解できていないでしょうね

精霊

私もまったく理解できていないのですが

精霊

あなたは何でビンタされたのですか?

精霊

仲間、なのですよね?

斧使い

そうですね

斧使い

……

斧使い

そうですよね?

精霊

いやいや

精霊

私に聞かれても知りませんよ

精霊

何せ、見たのだって今日が初めてなのですから

精霊

私観点で言えば

精霊

突然あの魔法使いがやってきて

精霊

あなたをビンタで吹っ飛ばして

精霊

そのままお店を出ていった

精霊

……という、謎の展開が起こっただけです

斧使い

うーん

斧使い

もしかして

斧使い

精霊様に服を買っていたのが原因でしょうか

精霊

私が、いかにも精霊っぽい服を着ていたので

精霊

あなたに冒険者風の服を買ってもらっていたところですが

精霊

それが何で、原因になるのですか?

斧使い

実は、彼女は俺に惚れていまして

精霊

えっ

斧使い

その辺りで、勘違いをされてしまったのかもしれません

精霊

あなた

精霊

ただのバカかと思いきや、なかなかやるじゃないですか

斧使い

精霊様は酷いことを言いますね

斧使い

お小遣いを減らしますよ

精霊

あ、感謝の証が減ってしまう

精霊

ごめんなさいでした

斧使い

素直に謝れてエライです

斧使い

で、それは置いておいて

精霊

そうしましょう、そうしましょう

斧使い

以前、告白されたことがあるのですが

精霊

はい

斧使い

俺が魔王討伐の旅に出るということで

斧使い

返事をうやむやにしていたんです

精霊

ああー

精霊

彼女的にはあなたと一緒に魔王を倒して

精霊

そのままハッピーエンド、が理想的なのでしょうね

斧使い

そうですね

精霊

そんな中

精霊

意中の人、つまりあなたが

精霊

成り行きで一緒にいる他の女、つまり私に

精霊

服をプレゼントしているように見えた、と

斧使い

大体、そんな感じだと思います

斧使い

さて、どうしたものか

精霊

早く追いかけて、誤解を解くべきなのでは?

斧使い

誤解し始めると、聞く耳を持たないんですよ

精霊

ああ

精霊

そういう方、確かにいますよね

精霊

これはお節介になりますが

精霊

結婚まで考えているなら

精霊

相手はしっかり選ばないとダメですよ

斧使い

と、言いますと?

精霊

一緒にいて楽しい恋人と

精霊

一緒にずっと暮らしていける人生の伴侶は

精霊

必ずしもイコールではない、ということです

斧使い

おお

斧使い

含蓄に富んだご意見です

斧使い

精霊様も、何か実体験が?

精霊

いえいえ

精霊

私はもちろん、未婚ですよ

斧使い

もったいないですね

斧使い

引く手あまたかと思いますが

精霊

えっ

精霊

もしよろしければ

精霊

私と付き合っちゃいますか?

斧使い

いえ、ご遠慮しておきます

精霊

がーんっ

斧使い

いやいや

斧使い

恐れ多いというか

斧使い

そんな感じの理由です

精霊

なるほど、把握しました

精霊

まぁ、冗談でしたけどね

斧使い

そうですよね

斧使い

でも、精霊様のことは祝福したいので

斧使い

結婚式には呼んでください

精霊

別にいいですけど

精霊

人間と精霊は時間の流れが違うので

精霊

結婚するとしても、100年後かもしれませんよ

斧使い

それだと、さすがに俺は生きていませんね

精霊

でしょうね

斧使い

では、俺の子孫を招待してやってください

精霊

わかりました

精霊

魔王討伐が成功すれば

精霊

あなたはきっと、爵位を授かって

精霊

貴族になるのでしょう

精霊

その家門に対して、約束いたします

斧使い

おお、ありがとうございます!

精霊

とは言っても

精霊

精霊は基本的に、結婚なんてしませんけど

斧使い

えっ

斧使い

先に言ってくださいよ

斧使い

期待しちゃったじゃないですか

精霊

ふふふっ

精霊

まぁ、逆に

精霊

私を、あなたの結婚式に呼んで頂いても構いませんよ

斧使い

なるほど、来て頂けるなら嬉しいです

精霊

それでは、約束です

斧使い

はい、約束です!

斧使い

……とはいえ、その結婚相手の候補が

斧使い

怒ってどこかに行ってしまったのですが

精霊

まぁ、個人的には放っておきたいところですが

精霊

冒険の仲間、なのですよね?

斧使い

はい

斧使い

魔王討伐には、絶対に必要な仲間なんです

精霊

ふむ……

精霊

絶対、ですか

斧使い

何か問題でも?

精霊

あなたは知らないようですが

斧使い

はい

精霊

私が知っている魔王の情報をお教えしましょうか?

斧使い

えっ

斧使い

何かご存じなんですか!?

精霊

はい

精霊

ただ

精霊

今この話をして良いのか、とても悩んでいます

斧使い

悩んで……?

斧使い

そんなに重要な情報なんですか?

精霊

はい

精霊

これを聞いたら、あなたの選択肢はきっと

精霊

大きく変わってしまうことでしょう

精霊

しかし

精霊

とても大切なことなのです

斧使い

それは

斧使い

いつか俺が、知るものですか?

精霊

はい

精霊

最悪、魔王の前で知ることになるかもしれません

斧使い

……

斧使い

それなら、是非教えてください!

精霊

……

精霊

本当に知りたいですか?

精霊

後悔はしませんか?

斧使い

いつか知ることで

斧使い

重要なことであれば

斧使い

俺はきっと、後悔しません!

精霊

……

精霊

わかりました、お教えしましょう

斧使い

はい!

精霊

実は、魔王は……

斧使い

はい……!

精霊

火属性なのです

斧使い

え?

精霊

ばりばりに高レベルの、火属性です

斧使い

ふむ……?

精霊

つまり

精霊

火属性の攻撃は、魔王には効きません

斧使い

ッ!!

斧使い

つまり、魔王戦では

斧使い

魔法使いは足手まといだ、と?

精霊

いえ、補助魔法を使えるなら力になりますし

精霊

そもそも道中の魔物と戦うときには戦力になるでしょう

精霊

ただ、魔王城の魔物は

精霊

全部、火属性です

斧使い

なるほど……

斧使い

つまり、最終戦においては

斧使い

彼女は必須ではない、ということですね

精霊

ただ、仲間というのはそれだけではないと思います

精霊

一緒にいることで、精神的な支えになることもあるでしょう

斧使い

いや

精霊

……

精霊

……いや?

斧使い

彼女は割と、気分屋でして

斧使い

ご機嫌を取るのに、いつも苦労をしているんです

精霊

はぁ

斧使い

精神的な支え……という観点でいうなら

斧使い

イナイ ホウガ イイカモ

精霊

何で急にカタコトになるのですか

精霊

ところで彼女、本当に火属性の魔法しか使えないのですか?

斧使い

はい

斧使い

魔法は、火属性しか使えません

精霊

何だか先ほどから

精霊

私に向かって呪いが飛んでくるのですが

精霊

心当たりはありませんか?

斧使い

ああ

斧使い

それなら彼女ですね

斧使い

呪いが趣味なんです

精霊

えっ

精霊

あなた、結婚相手には絶対に彼女以外をオススメしますよ

斧使い

確かに、呪いを使える人っていうのは怖いですよね

精霊

仮に、呪いを使えなかったとしても

精霊

裏でそんなことをやっている時点で、十分に怖いですよ?

斧使い

言われてみれば、確かにそうですね

斧使い

結婚相手として見るのか、慎重に考えてみます

精霊

はい、それが良いでしょう

精霊

ちなみに、仲間としては?

斧使い

総合的に考えて、諦めることにしましょう

精霊

確かに

精霊

こちらの話を何も聞かないで、呪いを掛け始める人を

精霊

仲間とは言いにくいですからね

斧使い

はい

斧使い

ところで今、精霊様に呪いが掛けられているんですよね?

斧使い

大丈夫なんですか?

精霊

ああ、これくらいなら大丈夫です

精霊

具体的に言えば

精霊

麺の伸ばし棒を素足で踏んで、ツボに当たったところが痛い

精霊

くらいの嫌な感じです

斧使い

何だか例えが独特でよく分かりませんが

斧使い

痛気持ちいい、くらいの感じですか?

精霊

大体そんな感じですね

精霊

たまにはこんなのも良いかな?

精霊

ってくらいの、アレです

斧使い

なるほど

精霊

とは言え、ずっとやられるのは嫌なので

精霊

そろそろ呪いを返したいのですが

精霊

返しちゃっても、いいですか?

斧使い

そうですね

斧使い

要らないものは本人に返してしまいましょう

精霊

わかりました

精霊

えーいっ☆

精霊

はい、返しました

斧使い

ずいぶん簡単ですね

精霊

私はすごい精霊ですからね

精霊

えっへん☆

斧使い

しかも可愛いときたもんだ

精霊

いえいえ

精霊

まぁ、今の私が可愛いと言うのであれば

精霊

それは、あなたが私に服を買ってくれたおかげでしょう

精霊

ありがとうございます、大切にしますね☆

斧使い

そうしてくれると嬉しいです

斧使い

……

斧使い

あれ、何だか外が賑やかですね

精霊

そうですね、悲鳴も聞こえますし

精霊

ついでに、邪気なんかも感じます

斧使い

もしかして、街の中に魔物が!?

精霊

ああ

精霊

これはアレですね

精霊

私が呪いを返したことで

精霊

魔法使いの彼女が、魔物化したのだと思います

斧使い

えっ

精霊

呪いは、返されると大変なのです

精霊

それを理解して使うべきものなので

精霊

まぁ、自業自得ですね

斧使い

なるほど

斧使い

しかし、そうすると俺はどうすれば良いでしょう

斧使い

魔物化したとはいえ、昔の仲間を倒すべきか……

精霊

私からすれば

精霊

突然呪いを掛けてきた敵、としか思えませんが

斧使い

確かに

精霊

とは言え、あなたにはたくさんの思い出があるでしょう

精霊

私がどうこう言えることではありません

精霊

多少の時間はあると思うので

精霊

冷静になって考えてみてはいかがでしょう

斧使い

……

斧使い

思えばアイツには

斧使い

小さいころからいじめられてきました

精霊

えっ

精霊

あれっ?

斧使い

片想いだった幼馴染も村から追い出されたし

斧使い

うちの愛犬もアイツの実験で殺されたし

斧使い

両親は借金を背負わされたし

精霊

……あれぇ?

斧使い

俺の斧も売られかけたし……

精霊

うわぁ

斧使い

よし、倒しましょう

精霊

……

精霊

何だか、それが正解に思えてきました……

伝説の斧を湖に落としてしまった……

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コメント

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ユーザー

最初から味方でもないし仲間でもないし結婚相手には万が一にも選んだらあかんやつ……!ってなりました どの回も非常にテンポよく軽快に読めるのでとてもありがたいです 続きがありましたら楽しみにしております

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