テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
桃青
絶望と小さい希望
さとみside
『もしも、僕が生まれ変わって..声も姿も何もかもが変わっちゃったとしても..また僕のことを見つけてね』
そこでまたプツっと途切れた。
目覚めれば、頬に生ぬるく気持ち悪い感覚が残っていた。
夏になると、あの時の出来事を夢として再現をされている。
この夏は、まるでアイツの呪いのように。
逃げても逃げ場はなくて、俺に永遠と付きまとってくる。
一生忘れさせない、と言っているかのように。
学生時代の時、俺にはころんという彼女がいた。
それはもう可愛くて、見ているだけで微笑ましくて..ずっと隣にいたいって..本当に大切な存在だった。
ころんのおかげで毎日の学校生活が楽しかった。
だが、いつの日かころんは学校に来ることが徐々に減っていき、一年の冬には完全に来なくなってしまった。
その時代は今でいうスマホとかの最新型じゃなかったから、気軽にころんとの連絡は出来なかった。
ころんの家に訪ねたこともあったが、留守なのか玄関の扉が開くことは無かった。
俺に何も言わずにいなくなることはないだろうと、少し不安になりながらも今日もころん家に訪れた。
ふぅ..っと深呼吸をして、チャイムを鳴らそうと手を伸ばしたが、後ろから女の人の声が聞こえ、伸ばしていた手を下ろした。
「うちに何か用ですか?」
明るい口調で優しく微笑んだ表情はころんにそっくりだった。
人目見ただけで親子という言葉が過ぎる。
笑顔の上に少しやつれているような疲れている表情が重なっていた。
やっと、ころんに関係する人に出会えた。 俺は少し嬉しくなりながら、ころんの事について母親に尋ねた。
「ころんくんって今..」
「あの子なら大丈夫よ、心配してくれてありがとうね」
「いや、あの..ころんに会わせて頂くことって出来ますか?」
ころんの母親は少し顔を俯きながら
「ごめんなさい、あの子疲れてるからゆっくり休ませてあげて欲しいの」
と、申し訳なさそうに俺に謝罪をした。
その日は家に帰された。 遅くなると親御さんが心配するからと言って。
疲れているなら、俺に相談してくれてもいいのに、 ところんに少し怒りを覚えたが、今はあいつに会いたい気持ちでいっぱいだった。
『大丈夫か?何かあったら俺に言えよ』
無事に届くか分からないメールをころんに送り、そのまま眠りに落ちた。
✻
少し汚れた教室の扉を開け、自分の席に座る。
いつもより早く目覚めたからなのか、人で賑わっている教室には、俺一人だけだった。
机に上半身を掛けながら、ころんの席をじっと眺めた。
しばらく経ったのか、前の扉から人が次々へと入ってきて、 さとみ、今日早いな〜 なんて声をかけられながら、その人混みの中にころんを探す。
ころんの席に座る人は誰もいなかった。
(今日もあいつ居ないのか)
最後に教室に入る担任の話など8割ぐらい聞かず、ぼーっと外を眺めた。
すると、前の扉がガラッと開いた音がして視線を前に戻す。
「すみません!遅れました!!」
そこには少し息を切らしたころんの姿があった。
ころんの表情は数ヶ月前とは変わらず、元気いっぱいの笑顔だった。
俺はその顔を見てほっとした。
いつもはなんとも思っていないHRが、今日はやけに長く感じた。
長く感じたHRが終わり、俺は直ぐにころんの席に向かった。
「ころん、!!」
前を向いていたころんは俺が声をかけた方向に体を回し、笑顔で出迎えてくれた。
「さとみくん!久々ぁ〜」
抱きしめようとしたが、教室だと不味いだろうと思い前に伸びた腕を下に下ろした。
「さとみくん、一限目サボらない、?」
ころんの口からサボるという言葉が出たのは正直驚いたが、考えていることは俺と同じだった。
「おし行くか、ころんっ!」
ころんの手を引き、教室を出た。
階段を駆け上がり、途中に引いてある立ち入り禁止というテープを越えて目の前の扉を開けた。
うーっんと広がる青空に俺たちを照らす太陽が雲から顔を出していた。
「なんか、凄くイケナイことしてる気分だね」
ころんはまるで他人事のように言葉を吐き、空に向かって真っ直ぐ背伸びをしている。
俺はそっところんに近づき、後ろから抱きしめた。
「いただだ、ちょ、さとみくん..痛いって..w」
「会えなかった分、これくらい許せって」
苦笑いを浮かべるころんの表情を想像する。
蛇のように巻き付く俺の腕に、ころんが優しく抱きしめる。
「僕..、これぐらいのハグが好きだな」
「少し強くて痛いぐらいの」
「なんか、ずっとさとみくんがいてくれる感じがするんだもん」
「なにかあったの?ころん」
「ううん、何でもない」
「さとみくんが隣にいるだけで、それだけで十分だよ」
「そっか」
もし何かあるなら、ころんが話したくなるまで俺は待つから。
今日は文句のない綺麗な青空だった。
✻
桜が散り、木々は緑色へと色付いてきた。
日が沈みだしてきた頃、俺は帰宅する準備をする。
今日は委員会やら、もうすぐ始まる体育祭やらで忙しかった。
ころんはというと早くから早退をしていたらしい。
担任に詳しく聞き出すと、家庭事情で早退すると言っていた。
先月も同じようなことがあった。
月一のペースで家庭の都合があって、早退を繰り返している。
人様の事情に俺が突っ込んでもどうしようもないけど。
✻
「ころんくんが倒れた..!!」
クラスの人がそう言ったのを聞いて、俺は急いで保健室に向かう。
目の前にある扉をガッと開け、一つだけカーテンが閉じている所に向かう。
「ころん、!」
閉じていたカーテンを開けると、ベッドに座るころんの姿があった。
「..あ、さとみくん..」
「大丈夫なのか、!?」
「..大丈夫だよ〜w、ただの貧血」
少しぐったりしているように見えるが、本人がいう貧血のせいなのだろう。
「そっか、貧血..」
「ごめんね、さとみくん。」
「体育祭で忙しいのに、。」
そんなことないと言おうとしたが、外に鳴り響く招集の放送で俺の口を止めた。
「さとみくんこの競技出るんでしょ?急がなきゃ」
「いや、でも、ころんが」
「僕なら大丈夫だって、ほら!」
腕を大きくぶんぶん回して、 その反動でころんがバランスを崩した。
俺はベッドから落っこちそうになったころんを慌てて支えた。
「ったく、危なっかしーな」
「さっすが、さとみくん!信じてたよ!!」
こっちは本気で焦ったというのに、ころんは相変わらずな呑気だ。
「僕なら大丈夫だから、ね?」
貧血だけで心配になる俺はさすがに過保護すぎるのか。
ころんが大丈夫だと言うなら俺も信じて、保健室を後にした。
「行ってらっしゃい、窓から見てるよ」
後ろからするころんの声を聞いて。
皆の歓声を受けながら、俺はころんがいる保健室に向かった。
カーテンは開きっぱなしで、居るはずだったころんの姿はそこには無かった。
ころんがいたベッドの隣にある小さなテーブルにメモのような紙を見つけた。
『1位おめでとう。 かっこよかったよ! 僕はこれから用事があるのでここを出ます。体育祭楽しんでよ! ころん』
かっこよかったというころんの字を見て、顔に熱が上がるのが分かる。
間接的ではあるがどうせなら直接本人の口から聞きたかった。
それよりも用事って、
(病院にでも行くのかな)
多分そうだろうと心配をする自分に終始点をつけ、グランドに向かった。
「さとみ!危ない!!!」
終始点をつけたはずが、気にしすぎていたのか。
俺はリレーの競技中に転倒した。
コケた痛みを感じるのはそう時間はかからなかった。
「、っ..!う、あ゛」
動けない、立てない、走れない
競技は中断され、俺の周りに数人の先生が集まった。
「早く、救急車を、、!」
(そんなに怪我酷いのか、?)
足の激痛と共に急に襲ってきた睡魔に俺はそっと意識を手放した。
✻
重たい瞼を開けると真っ白な天井が広がっていて、視界の隅にカーテンレールが映っていた。
ここが病院なことは確かだった。
違和感を感じれば、両足が固定されているようでビクともしなかった。
上半身を起こせば、自分の現状が痛いほど分かる。
(うわ、ぐるぐる巻きじゃんけ)
(治るのに時間かかりそー..)
後から看護師さんが部屋に入ってきて、俺が置かれている状態を丁寧に教えてくれた。
簡潔に言うと変な足の折れ方しるって。バキバキだってさ。
全治5ヶ月。
(..はは、情けねー)
(転んで骨折とかまじだっさ、)
しかも暫く入院。
(いやいや、骨折だけで?)
入院は大丈夫ですって言ったら、病院から逃げたら入院期間延長にするとか言われてな。
確かに両足だし、その状態で外に出んのは危ないよねって。
骨が完全に治って、リハビリまで俺は病院生活だってさ。
(もうこんなの苦笑いしか出来ねぇ)
✻
病院の生活にも慣れ、もう時期三ヶ月を経とうとしていた。
俺は勉強の遅れを取り戻す為にクラスメイトが届けてくれた教科書などで勉強をする。
そいつにころんのことを聞いてみたが、ころんはまた最近学校に来ていないと言う。
俺は今こんな状態だし、ころんの様子を見に行くことさえも出来ない。
看護師さんがもう少ししたらリハビリ練習を始めてもいいと言っていたからもう少しの辛抱だーって
俺の場合、骨の回復が早いみたいで8月中旬あたりで退院出来るそう。
俺が病院にいる間は学期が終わって夏休みも始まって、みんな満喫してるんだろーな
(くっそおぉ..)
この夏はころんとめーいっぱい遊んでやろうって思ったのによぉ。
午後からは、看護師さんがまた俺の様子を見に来て、ギプスが外れた俺の足を触る。
関節を曲げられたり、伸ばされたりされても痛みは無くなっていた。
「うーん、もう骨は大丈夫そうね」
「リハビリ始めてみる?」
「..!はい、お願いします」
何故かわからんけど、看護師さんには松葉杖を渡された。
「えっと、これくらい歩けますって」
「だめに決まってるでしょ〜」
「急に歩き出すとまた折れるわよ」
それは冗談だけど、と後ずけに看護師さんは松葉杖を使っての歩き方を教えてもらった。
普通に歩くんだけど松葉杖を使って身体を支えるって感じかな。
俺にとって、人生初の松葉杖だった。
小中学生のときに足怪我して松葉杖を使ってるクラスメイトがいた時、ちょっと楽しそうだなって思ってたけど、全然楽しくねぇ。
しかも、超めんどくさいし超不便
何でもすぐにこなせる俺は当然楽勝、もう一人で出来るので大丈夫と看護師さんに出ていってもらった。
歩けるようにもなったし、俺は病院内を歩こうと病室を出た。
大きな病院ってこともあってとても構造が掴みにくい。
廊下には車椅子に座っている人や点滴中の人もいれば俺と同じ松葉杖を使っている患者もいて色々だった。
ご年配から小さな子供まで、多くの患者が見受けられた。
地味に脇が痛くなったから俺は隅に設置してある椅子に座り、少し休憩していた。
(遠くを見ると疲れが取れるっていうよな)
左右を見れば、いつの間にか患者はみんな居なくなっていて俺一人になっていた.. わけでもなく一番奥の部屋からゆっくりと歩く人影が見えた。
俺は特に理由もなくその患者に目を向けるているとどこか見覚えのあるような感じがした。
いや、俺のよく知ってる人。
透き通る綺麗な青い髪をしていて 小柄でスラッとしている骨格で君には笑顔という言葉が一番似合ってて..。
「ころん、?」
何故、君がここにいる。
俺は松葉杖を置いて君の元に走り出した。
「ころんっ!!」
君は俺と同じ服装をしていて、腕には点滴のチューブが付いていた。
「さ、とみくん..」
ころんは俺にびっくりしたのか大きく目を見開いている。
「ねぇ、っどこが悪いの?言って、」
「..さとみく、」
「お願い」
「..」
ころんside
僕は中学生のときに自分が病気だってことを知った。
僕の病気は難易度が高く治療法も解明されていない。
医師いわく長くてハタチまでと言われた。
僕の命の灯が消えるまで死の壁が立ちはだかっているんだ。
大好きな人と出会って、その人と結婚して子供も出来ておじいちゃんになれば孫も出来て。
そんな未来は僕にも無いという事実に涙が零れる。
そして、僕は人生を捨てた。
この短い年月で何をすればいいのか分からなかった。
高校になんて上がるつもりすら無かった僕だけど、昔から好きだった勉強を続けて。
どうせなら、高校生になりたいって思った。
僕に生きがいなんてなかったけど当時の僕は勉強が生きがいだったのかもしれないね。
高校に上がってから、病院には月一で通うことになった。
具体的に言えば精密検査を月に一回受けなければならない。
いつ発作が起きてもおかしくない状態だから、月一での健康診断が大切なんだって。
死の境目に立ってる人間に対してここまでしなくていいのにって時々思うこともあった。
そして、高校に上がってはじめて本当の生きがいというものに出会った。
「ころん、すきだよ」
彼に出会ったんだ。
さとみくんは僕にとって本当の生きがいだった。
さとみくんのためなら何でもやるつもりだし、沢山尽くしたいって思った。
でも、僕には病気を持っていて、それも余命宣告までされている。
いつかは全て話さないといけない。
でも、口が上手く動かせないのは、今の関係が崩れるのが怖いからなのかな。
さとみくんには幸せになってほしいけど、残りの人生..僕のワガママぐらい許してほしい。
✻
さとみくんと付き合って三ヶ月程経った冬。
僕の体調は悪化し発作が起きた。
急な息苦しさでそれも学校で倒れてしまった。
学校に救急車は来るわで大騒ぎ。
運良くさとみくんとはクラスが違ったため、体育の授業で..と適当な理由で返した。
真実を語れない申し訳なさもあったが話すのは今ではないとぐっと堪えた。
そして、高校一年の冬は病院に強制入院をされた。
何も無い病院の窓を覗きながらベットの上で呆然としていた。
病室の扉がゆっくりと開いたことに気づき、そこに目を向けると母さんがそこに立っていた。
作り笑顔のような引きつった顔だったが僕のために辛くても笑顔でいてくれている。
そこほうが、僕にとって気は楽だしありがたかった。
隣にあるパイプ椅子に母さんは腰をかけると
「今日、ころんのお友達かしら」
「あなたのこと心配して家に来てたわよ」
「少しピンク色の髪でかっこいいのね」
「もしかして、あの子がさとみくん?」
と僕に語りかけるように話し出した。
「さとみくんが来てたの?」
そっか、今年はさとみくんと同じクラスだったから、流石に僕が学校に来てないこと知ってるよね。
「何かさとみくん言ってた?」
「あなたに会いたいって言ってたわ」
何か分からない感情が僕の目を熱くする。
「それで、母さんはなんて言ったの?」
「心配しなくて大丈夫と答えたわ」
焦る気持ちが一気に抜け落ちた。 母さんを信用してないわけではないけど、やっぱり不安だった。
母さんは買い物に行ってくると言い、病室には僕一人となった。
中々開かなかった携帯を手に取り電源を入れるとメールボックスに一件の通知が来ていた。
メールを送った主はさとみくんだった。
『大丈夫か?何かあったら俺に言えよ』
(..さとみくん、)
僕は返信をせずにそっと携帯を閉じ、眠りへとついた。
時は経ち、二度目の体育祭の日に僕は倒れた。
意識が朦朧としている中、みんなが焦っているのが見えた。
先生によって保健室まで運ばれ、僕はベットで安静にする。
(こりゃ貧血だな)
(栄養足りてないのかな)
自分でも細いと分かる腕を見るのを辞め、窓の先に見える体育祭の風景を眺める。
いいな、僕が病気じゃなかったら皆みたいに運動も出来たのかな。
少しの切なさを噛み締めていた丁度、僕を取り囲むカーテンが開いた。
視線をそこに置くと、息を切らしたさとみくんの姿があった。
僕だと認識した瞬間、ぐっと引き込まれるように僕に近づいてきた。
凄く心配してくれている彼を見て、ただの貧血と答えた。
これは「真実」なのだから許してくれるだろう。
それに貧血だとしても僕にとって倒れることは凄く危険だから、 この後病院に行って検査をしなければいけない。
ピンポンパンポ-ン
神様は僕を味方してくれたのか、さとみくんが出る競技の招集が放送された。
僕はさとみくんをこの場所から追い出すかのように応援の言葉を送った。
窓の先から笑顔でガッツポーズを取る君を見て僕も笑顔になった。
(おめでとう)
丁度、母さんが迎えに来たため保健室に紙切れを置いておき、ここを後にした。
✻
(やっぱり入院かぁ)
僕が入院を拒んだとしても強制入院だから仕方ない。
学校にはちょくちょく通えるらしいんだけど、もう何もかもが面倒臭い。
病室で勉強だってできるし、学校なんてだるい。
今度こそ倒れたら、さとみくんに対しての言い訳がもう出来ない。
ただ殺風景が広がる部屋で僕は孤独に囚われていた。
✻
数ヶ月がたった頃。
病院のご飯はこれ以上食べたくないと言い続けていたら、栄養失調になった。
当然、看護師さんに飽きられ親にはめっちゃ怒られた。
僕の腕を見れば栄養を送るチューブが刺さっている。
まぁ食欲もないし..これはこれでいっか。
暇つぶしに病室から出て脱走でもしようかなと考えながらドアをスライドさせる。
周りに先生らしき人は居ないし。
(ワンチャンいけるんじゃね)
悪ガキ小僧みたいだな自分。
でもなんか奥に人がいるな 松葉杖持ってるし患者か
そんなことを思いながら少しずつ 足を進めると、松葉杖の人が僕に向かって走ってきた。
(は、?え、松葉杖は..?)
どう考えても足をやっちゃってる人なのに松葉杖を使わずに走ってきている。
転ぶんじゃないか、危ないんじゃないか、色々な不安がありながらその人に対して少しの恐怖を覚えた。
(まさかお前も悪ガキこ..)
闇と光の境目に来た人の顔を見れば、その人はさとみくんだった。
な、んで
「ころんっ!!」
さとみくんは僕と同じ服装をしていた。
足、怪我したんだ。
僕が知らないうちに、
「ねぇ、っどこが悪いの?」
「..言って?」
こんな姿を見られた以上僕にはもう逃げ場はなかった。
「さとみくん、足は大丈夫..、?」
「お願いだから話をそらすな」
何回もしらばっくれたが無駄だった。
少しでも無駄な抵抗をしたかった。
「さとみくんは..、」
自然と声が震える。
「さとみさん、!!」
「駄目じゃないですか!! 歩けるからって..!」
廊下の向こうで看護師さんの声が聞こえた。 さとみくんを見るとやべなんて声を上げている。
だんだんと看護師さんが近づいてきて、そのままさとみくんを連れて行ってしまった。
「ちょ、っ手離してくださいって、!俺はまだ!」
それからさとみくんの姿が見えなくなり、僕は全ての緊張が露になりその場にへたりこんだ。
「..よかっ、た」
これはもう時間の問題だ。
ここにいることがバレてしまった以上、全てを話さなくてはいけない。
きっと明日、早くて今日に彼はまた僕の元に現れるだろう。
それまでに余裕を持たなきゃ。
別れを告げる覚悟を決めて。
二時間後に案の定、彼は僕の病室に現れた。
深く深呼吸をして息を整える。
「さとみくん、聞いてくれますか」
「僕の病気について」
つづく
ブクマは一言!
コメント
7件
続きってもう出ないんですかね?
待って、超超超超最高です! ブクマ&フォロー失礼します