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第1話 - あ

2023年03月10日

#恋愛

結城真矢

ユウ

新しい彼氏できたわよ！

ジン

いきなりなんだよ、びっくりした。

ジン

半年も音信不通にしてて、突然どうしたのかと思ったら・・・

ユウ

なによ、おめでとうぐらい言ってくれてもいいじゃない。

ジン

はい。はい。

ユウ

ねぇ。聞いてよ！

ユウ

彼って、すっごいお金持ちなの！

ユウ

年収が１０００万円越えなんだって！

ジン

へぇー、そうなんだ・・・

ユウ

彼って、お金持ちなだけじゃなくって、

ユウ

とっても優しいんだからー。

ジン

良かったね。

ユウ

あんたって、今彼女いないんでしょー？

ユウ

もう、２０代後半なのに貧乏で独り身だなんて、筋金入りよね！

ジン

そんなことが言いたくて、連絡してきたの？

ユウ

どうしてるのかなって、気になって連絡したの。

ジン

僕は相変わらず貧乏だよ。

ジン

これでいいかい？

ユウ

もう、そんな風に言わなくったって・・・

ジン

それで、彼氏のことを自慢したくって連絡してきたの？

ユウ

そういう訳じゃないけど・・・

ユウ

なんだか懐かしくなって、連絡してみたの。

ジン

半年も音信不通だったんだから、今更だろ？

ジン

それで、彼氏がどうしたって？

ジン

結婚でもするの？

ユウ

それは、まだなんだけど・・・

ユウ

彼は今すぐ結婚はできないけど、結婚を考えてるって言ってくれたの。

ユウ

私も２０代後半だから、そろそろ結婚相手を決めなくっちゃて、

ユウ

思ってたところなの。

ジン

へぇー、そうなんだ・・・

ユウ

それでね、彼ったら、

ユウ

おしゃれで、ハンサムで、

ユウ

まだ３０代前半なのに、年収１０００万円越えって、

ユウ

すごくない？

ジン

はい。はい。

ユウ

私がブランド大好きだっていうの、知ってるわよね？

ユウ

誕生日、クリスマスや、ホワイトデーはもちろん、

ユウ

なんでもない日でも、

ユウ

バッグやアクセサリーをプレゼントしてくれるの。

ユウ

こんな優しい人って、他にはいないわ。

ジン

僕はプレゼントできなかったけどね。

ユウ

そんなの分かってたわ。あんた貧乏だもの。

ジン

それなのに、よく僕と付き合ってたよね？

ユウ

私も最初にあんたが好きだった理由なんて、

ユウ

忘れちゃったわ。

ユウ

ところで、あんたって今何してるの？

ジン

何って、僕は相変わらずさ。

ユウ

ほんとに、あんたは貧乏でつまらない男よね！

ユウ

３０才目前にしても、まだブラブラ学生してるなんて、

ユウ

どうせ、いい仕事にも就けないでしょ？

ジン

僕は気楽なのがいいんだよ。

ジン

どうせ、君とはもう関係ないんだから、

ジン

別にどうでもいいじゃないか？

ユウ

そんな言い方しなくっても！

ユウ

彼女でも、紹介してあげましょうか？

ジン

大きなお世話！

ジン

もういいだろ！

～数日後～

ユウ

箱根に行ってきたわよー！

ユウ

温泉にも入って、気持ちよかったわー。

ユウ

彼、箱根に別荘を持っているの。

ユウ

すごいわよねー。

ユウ

貧乏人のあんたとは大違いだわ。

ジン

貧乏人で、悪かったね。

ユウ

彼と出会えて、本当によかったわ-！

ジン

あっそう、よかったね。

ユウ

彼氏との写真だよ。あんたよりイケメンでしょ？

ユウ

夜はピアノの弾き語りのあるバーで、お酒を飲んで、

ユウ

最高だったわ。

ユウ

あんたにはお金がないから、こんなことできないでしょ？

ジン

悪かったね。でも、君はお金のことばかりだね。

ユウ

あんたとのデートは、食事はファーストフード、串カツ、そんな感じ。

ユウ

夢もロマンもなかったわ。

ユウ

今の彼氏はマメに連絡くれるし、

ユウ

休みの日はドライブに連れて行ってくれる。

ユウ

きっと、幸せって、こんなことを言うのよね。

ジン

ところで、君は今何をしてるの？

ジン

働いてるの？半年前は販売のバイトの仕事だったっけ？

ユウ

別に、そんなの、いいじゃない・・・

ユウ

ところで、久しぶりに私と話して

ユウ

よりを戻したいなんて、思ってるの？

ジン

は？

ユウ

それだったら、無理よ。彼氏がいるし。

ユウ

あんたは、どうせいいところに就職なんて、できっこないし。

ユウ

私とは、全然釣り合っていないわ。

ジン

よく言うよ。

ユウ

１０００万円年収があったら、考えなくもないけど。

ユウ

無理、無理。できっこないわね。

ユウ

貧乏人のあんたには、貧乏くさい女がお似合いよ。

ジン

僕のことなんて、ほっておけば！

ジン

でも、半年も音沙汰なしにしてたのに、

ジン

連絡をよこしてきたんだから、

ジン

君のほうが未練があるのかい？

ユウ

そんなこと、ある訳ないでしょ。

ユウ

彼は優しいし、お金持ちだもの。

ユウ

私はブランドとお金持ちが大好きなの。

ジン

かえってその彼氏とやらが、可哀そうに思えてきたよ。

ユウ

なんですって！

ジン

まぁ。その気の毒な彼と結婚でも何でもしたら？

ジン

彼のまえで、ブランドとお金持ちが大好きなの。

ジン

なんて、言わないほうがいいよね。

ジン

僕って、なんて優しいんだろうね。

ジン

わざわざ自然消滅の元カノに、そんなことを教えるなんてね。

ユウ

よけいなお世話よ！

～数日後～

ミナミ

コウジ、今日はお休みでしょ？当直もないだろうし

ミナミ

相談があるの。聞いてくれない？

ジン

大丈夫だよ

ジン

珍しいね。君がそんなこと言ってくるなんて。

ミナミ

旦那がね、私のクレジットカードを使って、

ミナミ

女と箱根旅行に行ったみたいなのよ。

ジン

どうして相手が女だって、思ったんだい？

ジン

会社の同僚とかじゃないの？

ミナミ

それが、恥ずかしながら、旦那は今ほとんど働いていないの。

ミナミ

それで、お金がないもんだから、私のカードを使い込んでいたみたいなの。

ミナミ

つい最近、帰りが遅かったり、香水の匂いがしたこともあったわ。

ミナミ

それで、旦那が浮気してるんじゃないかって思って・・・

ジン

浮気だとしたらどうする？

ミナミ

離婚してやるわ。そんなクソ旦那！

ジン

箱根というのが、気になるね。

ミナミ

そう。しかもかなりお金を派手に使ってるっぽいのよね…

ジン

つい最近、知り合いの女性が、彼氏と箱根旅行に行っていたんだ。

ジン

ただの偶然だと思うけど、ちょっと写真見てくれる？

ミナミ

えっ…旦那だ！

ミナミ

やっぱり、浮気をしていたのね！

ミナミ

許せないわ…

ジン

こんな偶然てあるんだな…

ジン

ちょっとどうするか考えよ…

～数日後～

ユウ

素敵なデートに行って来たんだ。

ジン

また、君か。

ユウ

私、スキーは初めてだったんだけど、

ユウ

彼、とってもスキーが上手いんだ。

ユウ

何でもできるみたいで、すっごく格好がいいの。

ユウ

一日だけしか滑ってないけど、少し滑れるようになったわ。

ユウ

あんたって、スキーはできたんだっけ？

ジン

いいや。全く。

ユウ

そうでしょうねー。あんたはそういうタイプよ。

ジン

そういうタイプって？

ユウ

運動ができそうにないってこと。

ジン

ところで、何しに連絡してきたんだ？

ユウ

別に、用があってということじゃないの。

ジン

いつも自慢話をするためだけに、連絡してくるのか？

ユウ

あんたは貧乏でつまらない男だけど、聞き上手だからよ。

ユウ

人って、何か一つぐらいは取柄があるっていうけど、

ユウ

本当よね。

ジン

僕は今忙しいんだけど・・・

ユウ

何が忙しいのよ？

ユウ

いつもブラブラしていた貧乏学生が、何言ってるのよ。

ユウ

そういえば、もうすぐ就職だって、前に言ってたっけ？

ユウ

どうせ大したところに就職なんてできっこないだろうけど・・・

ジン

あのさ…君に言おうか迷ったんだけど…

ジン

君の彼氏、既婚者だよ？

ユウ

へ？

ユウ

どういうこと？彼が既婚者・・・？

ジン

しかも奥さんに浮気、バレてるよ？

ユウ

そんな。噓でしょ。

ユウ

どうして、そんなことが分かるの？

ジン

本当に、これはたまたまなんだけど、偶然に知ることになったんだ。

ジン

僕の同僚が相談したいことがあるって言うから、

ジン

相談にのってたんだ。

ジン

旦那さんが浮気してるんじゃないかって、気にしていてね・・・

ジン

箱根に旅行に行ったらしいって聞いて、

ユウ

私とは関係のない話なんじゃない？

ジン

日程がちょうど同じくらいだったから、

ジン

まさかと思ったけど、

ジン

彼女に君の写真を見てもらったんだ。

ジン

そしたら、旦那だって言うじゃないか！

ジン

びっくりしたよ！

ユウ

そんな。嘘よ！

ジン

奥さんは僕の話を聞いて、即決したよ。

ジン

離婚するそうだよ。

ユウ

そうなの？

ユウ

じゃあ、私が彼と結婚したらいいのよ。

ジン

話はそんな単純なわけではなさそうだけどね・・・

ユウ

どうしてよ？

ユウ

彼は私のことを愛してるって、何度も言ってくれたわ。

ユウ

奥さんがいても、離婚したら、

ユウ

きっと、私と結婚してくれるわ。

ジン

そうかな、彼には余罪がありそうだけど？

ジン

たまたま、バレたのが君と付き合ってる時だったけどね。

ユウ

そんなことないわ！

ユウ

彼は私のことだけを愛してるって言ってたもの。

ジン

口では何とでも言えるさ。

ジン

君だって、僕に好きだと言いながら、

ジン

音信不通になったじゃないか？

ジン

僕は君と結婚を考えるぐらい好きだったのに・・・

ユウ

悪かったとは、思っているわ。

ジン

どれだけ僕がショックを受けたか、分かるか？

ユウ

何よ？私と結婚したいと言っているの？

ユウ

嫌よ。あんたみたいにつまらない、貧乏な男と結婚だなんて。

ユウ

冗談でも、笑えないわ！

ジン

誤解しないでよ。それは半年前の話だよ。

ジン

今は君のことは、好きだっていう気持ちはまるでないんだ。

ユウ

あっそう。

ユウ

別にあんたみたいに貧乏な男に好かれたって、一銭の得にもならないわ。

ジン

ところで、彼はほとんど働いていないらしいよ。

ジン

いつも仕事が長続きしなくて、点々と職場を変えていたらしいよ。

ジン

定職に就けないタイプらしいね。

ユウ

えっ、彼は一流企業で営業をしているって、

ユウ

言っていたのに！

ジン

お金持ちは奥さんの方さ。

ジン

定職に就いているし、別荘も奥さんの親の持ち物だってさ。

ユウ

嘘よ！嘘に決まってるわ！

ジン

君だって、本当は信じたくないだけだろ？

ジン

僕は嘘なんかつかないって、君は知ってるんだから。

ジン

彼はまったくのペテン師だったってことだよ。

ジン

ところで、僕の今の仕事を聞いてたよね。

ユウ

何よ…ただの学生でしょ…？

ジン

今は医者をやってるんだ。

ユウ

え？なんですって？

ジン

自分で言うのもなんだけど、すごい努力をしたんだ。

ジン

君は楽しいデートのできない、つまらない男だって思ってたみたいだけど・・・

ジン

今は年収１０００万円以上稼いでいるよ。

ユウ

うそでしょ？そんなことあるわけない。

ジン

信じられなきゃ、仕方ないけど。

ジン

それで、正式に奥さんと離婚になったら、

ジン

奥さんは君と旦那に慰謝料を請求することになるよ。

ユウ

どうして、私まで慰謝料が請求されるの？

ジン

詳しいことは弁護士に相談したほうがいいんじゃない？

ジン

今さら彼と結婚したからって、幸せになれないのは、

ジン

明らかだよね。

ユウ

そんな、ひどいわ！

ユウ

私を騙すなんて！

ジン

お気の毒さま。まったく同情の余地はないよね。

ジン

普段からお金のことばかり言ってるから、こんなことになったんだよ！

ユウ

ねぇ。私が悪かったわ。

ユウ

また、以前の私たちにもどりましょう。

ユウ

ずっと、私のことを待っててくれたんだよね？

ユウ

結婚することも考えていてくれたんだよね？

ユウ

もう、あなたのことを貶したりなんかしないわ。

ジン

半年前だったら聞けた話だけど、

ジン

僕は今は君のことをなんとも思っていないよ。

ジン

君の本性が知れて、よかったよ。

ジン

君のがめつさには幻滅だな。

ユウ

そんなこと言わないで、よりを戻しましょ。

ユウ

お願いよ！今のあなただったら、すぐに結婚してもいいわ。

ジン

結婚なんて、冗談じゃないよ。

ジン

もう僕には連絡してこないでね！

ユウ

ごめんなさいって言ってるのに、ひどいわ・・・

～後日談～

ジン

ユウは慰謝料を払うために、大好きなブランド物を全部売り払ったらしい。

ジン

なり振り構わず、あちこちからお金を集めても、

ジン

まだまだ慰謝料には届かなかったようだ。

ジン

その後、夜の仕事に就いたそうだ。

ジン

そして、彼も離婚し、慰謝料を請求されることとなった。

ジン

ユウからの連絡が来なくなり、仕事ぶりが評価され昇格した。

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結城真矢

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