わたし屋上で靴を
脱ぎかけた時に
三つ編みの先客に
声をかけてしまった
汐莉
ねぇ、
汐莉
やめなよ
口をついてでただけ
ホントはどうでもよかった
先を越されるのが
なんとなく癪だった
三つ編みの子は語る
どっかで聞いたようなこと
蘭
運命の人だった
蘭
どうしても愛されたかった…
汐莉
ふざけんな!
汐莉
そんなことくらいで
汐莉
わたしの先を越そうだなんて…!
汐莉
欲しいものが、手に入らないなんて…
汐莉
奪われたことすらない癖にッ…!
蘭
話したら楽になった
って、
三つ編みの子は消えてった
さぁ今日こそはと靴を
脱ぎかけたらそこに
背の低い男の子
また声をかけてしまった
背の低い子は語る
クラスでの孤独を
マイキー
無視されて、奪われて…
マイキー
居場所がないんだ……
って
汐莉
ふざけんな!
汐莉
そんなことくらいで
汐莉
わたしの先を越そうだなんて…!
汐莉
それでも…
汐莉
うちでは愛されて、
汐莉
暖かいご飯もあるんでしょう…?
マイキー
お腹がすいた…、
と泣いて
背の低い子は消えてった
そうやって何人かに
声をかけて
追い返して
わたし自身の痛みは
誰にも言えないまま…
初めて見つけたんだ
似たような悩みの子
何人目かにあったんだ
黄色いカーディガンの子
竜胆
うちに帰る度に、
竜胆
増え続ける痣を
竜胆
消し去ってしまうため、
竜胆
ここに来たんだ…
と言った
口をついてでただけ
ホントはどうでもよかった
思ってもないこと
でも声をかけてしまった
汐莉
ねぇ、
汐莉
やめてよ…
あぁどうしよう
この子は止められない
わたしには止める資格がない
それでも、
汐莉
ここからは消えてよ…
汐莉
君を見ていると苦しいんだ、
竜胆
じゃあ今日はやめておくよ…
って
目を伏せたまま消えてった
今日こそは誰もいない
わたし一人だけ
誰にも邪魔されない
邪魔してはくれない
カーディガンは脱いで
三つ編みをほどいて
背の低いわたしは
汐莉
今から飛びます。
❦ℯꫛᎴ❧