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すげ… 表現力!(
好き好き!! さすが!! 参加ありがとう!!
episode.0 ~愛する人~
私には愛する彼がいる。
その彼と言えば、
まるで王子様のような_。
透き通ったブラウンの瞳
柔らかい髪
色黒の肌
細くて長い、綺麗な指
忘れっぽくて優しくて、でも心配性で。
太陽みたいに陽気な彼。
それは、誰もが羨む人だった。
episode.1 ~君の言葉は私を動かす~
今日は、彼と初デートの約束。
彼は、私より先に待ち合わせ場所に来ていて
笑顔で私に手を振ってくれた。
“待たせている”と分かったら私の足取りは次第に早くなり、
横断歩道に差し掛かった。
でも、私の気持ちとは反対に横断歩道の信号は黄色から赤に変わった。
私が心の中で「ムッ」としていると、
それに気づいた横断歩道向かいの彼が
私にニコッと微笑みかけた。
つられて私も微笑み返すと、彼は満足そうに笑って頷いた。
そのやり取りで、私の心は“一瞬にして晴れた。”
さっきの気持ちが嘘のように_。
すると今度は信号が青に変わる。
私は足早に信号を渡った。
渡った先には愛する彼がいて、そっと私の手を取り歩き出した。
彩月
彩月
優真
彩月
知りたいはずなのに。
今はその無邪気に笑う優真をじっと見ていたかった。
episode.2 ~神様の行い~
彼に連れられ1時間
私たち2人は、とある絶景スポットに来ていた。
彩月
優真
彩月
優真
優真
彩月
優真
彩月
彩月
優真
彩月
でもね。 幸せって長くは続かないんだ。
そうやって神様は教えてくれた_。
episode.3 ~不運な事故~
ザザッ
パサッ、ザラザラザラ
彩月
優真
彩月
ガシッ
彩月
優真
優真
ヒューッ
バンッ!
崖の上から見下ろすと、
真っ赤に染まる地面にうつ伏せになって倒れる彼の姿が見えた。
彩月
あぁ。神様はなんて意地悪なんだ。
彩月
彩月
愛する彼の『死』を目の当たりにした私は
今の出来事を飲み込めず、その場で立ち尽くして
ただただ遺体を見つめることしかできなかった。
episode.4 ~映し出す色は私の気持ち~
私はようやく待ち合わせ場所にした横断歩道の所まで辿り着いた。
でも、ショックが大きすぎて
どうやってここまで帰ってきたのか分からない。
また横断歩道を渡ろうとした時、
信号が、見たことも無い色に変わった。
それは、淡いピンク色_。
でも、この時確信した。
この信号機は『私の気持ちを表しているんだ』と。
今のは私の『絶望とショック』の色だと思う。
また次の瞬間、
私の世界は真っ白になった。
episode.5 ~彼からの宿題~
彩月
気がつくと、私は真っ白な空間にいた。
彩月
彩月
彩月
聴き慣れた声と
見慣れた顔。
すぐに分かった。
彩月
彩月
そう言って飛びつこうとしたけど、優真には触れられない。
だって、死んじゃったんだもん。
彩月
優真
優真
彩月
彩月
彩月
彩月
彩月
優真
優真
彩月
彩月
彩月
優真
優真
優真
優真
優真
優真
彩月
分かってるよ。
わかってるはずなのに、なのに。
どうして?
考えれば考えるほどに分からなくなって、
頬を伝ってどんどん雫が落ちていく。
優真
優真
優真
彩月
彩月
彩月
優真
優真
優真
彩月
優真
優真
優真
優真
彩月
優真
そう言って笑う優真は、どこか寂しい雰囲気を纏っていた。
彩月
彩月
彩月
彩月
優真
彩月
彩月
優真
彩月
優真
優真
優真
彩月
優真
優真
彩月
優真
彩月
優真
彩月
優真
優真
優真
優真
彩月
優真
優真
優真
またね…!
その瞬間、視界はぼやけ、私は元の世界へと戻って行った。
episode.6 ~君の中で咲き誇れ~
彩月
彩月
菜乃
菜乃
ドタバタドタバタ
ドタバタドタバタ
ガチャッ
菜乃
彩月
彩月
天国の優真へ
お元気ですか?
あれから10年、私はもう26歳。
あっという間でした。
この10年で間で、結婚して、子供もできて……
楽しいこと三昧でした。
今、こうやって生活出来ているのもあの時キミが──、
“優真が助けてくれたから”です。
じゃないと私は生きてなかった。
ふとした時に思い出してしまうのは
あの__、絶景を見た時の。
最初で最後のデートでした。
あの日優真は、私を庇ったせいで崖から落ちて。
その後私はいつも考えた。
なんで私が死ななかったの…、と。
あの絶景スポット、楽しかったけど
どうしても。何を考えても。
また、私のせいで愛する人を亡くしてしまうんじゃないか
と思うと怖くて行けないです。
そして、私は知ってたよ。
あの日、優真の持ってる鞄の中に“婚約指輪”が入ってたこと。
__嬉しかった。
私は、その婚約指輪を優真の形見として持っています。
そうすると、“すぐにでも優真に会えそうな気がして──。”
ありがとう。
PS.優真のことを誰よりも愛してました。
彩月
便箋の所々に零れ落ちた雫が、私のの気持ちを表していた__。
彩月
彩月
彩月
彩月
優真
その瞬間、私と便箋の間に強めの風が吹いた。
そのまま便箋は宙を舞い、私が瞬きをしている間に消えた。
一瞬だったけれど__。
ちゃんと届いたみたいだね。
私に見つからないように
こっそりと現れた優真_。
その人は。
便箋を奪って。私の心を掻き回して。
まるで台風のように__。
涙と温もりを残して消え去った。
~END~
そら様主催 『書店コンテスト』 参加作品
#2 “貴方は、私の”
参加させていただき、ありがとうございました🙌