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鳴海 恭弥
四月 新学期が始まり 二年三組を受け持つことになった
鳴海 恭弥
女子生徒
男子生徒
生徒達が騒ぎ始め 男は露骨に嫌な顔をする
鳴海 恭弥
女子生徒
女子生徒
女子生徒
男の声は遮られ 女子生徒から質問攻めに合う
鳴海 恭弥
女子生徒
男子生徒
再び生徒達が騒ぎ始め 男はため息をつく
あー、めんどくせぇ
ガラガラッ
教室のドアが勢いよく開けられ 一人の少女が駆け込んでくる
長い髪を耳にかけると 少女は時計を見る
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
男子生徒の一人が声をかける
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
少女が駆け込んできてから 静まり返っていた教室が 笑いに包まれる
篠宮 柚葉
篠宮柚葉と名乗った少女は ニコリと微笑んだ
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
少女を無視し、男はそう言うと 教室を出ていった
篠宮 柚葉
女子生徒
これが、俺 鳴海恭弥と 彼女、篠宮柚葉との出会いだった
明石 涼
こいつは明石涼 同じ学校に勤務する 大学時代の友人
鳴海 恭弥
煙草に火をつけながら 適当に返事をする
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
篠宮 柚葉
篠宮は大声でそう叫ぶと 駆け寄ってくる
明石 涼
篠宮 柚葉
篠宮はそう言うと 凶器のような爪を見せつけてくる
明石 涼
篠宮 柚葉
明石 涼
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮は顔を近づけてくると 目を閉じる いや、そんな事より
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
明石 涼
鳴海 恭弥
かける言葉もなく ため息をつく
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
篠宮はそう言うと 男の背中に飛び乗る
明石 涼
佐野 朝陽
佐野は篠宮を背負いながら 俺に話しかけてくる
しっかりしてるな、こいつは
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
佐野は篠宮をおんぶしながら 仲良さそうに校舎に戻って行った
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
男子生徒
女子生徒
その日は何事もなく終わり 生徒たちは教室を出ていく
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
荷物をまとめ教室を出ようとする俺に 篠宮は駆け寄ってくる
篠宮 柚葉
職員室へと向かっていると 隣を歩く篠宮はそう言い 顔を覗き込んでくる
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
そう言って篠宮はニコリと笑う
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
通りかかった教室で 女子生徒が盛り上がっていた
俺と篠宮に気づかず 女子生徒達はゲラゲラと笑う
陰口かぁ…ありがちだな
そう思い隣の篠宮に目をやる
篠宮 柚葉
篠宮は突然の事に戸惑いながらも 顔を曇らせる
気にしなくていい事で傷つき 周りの同情を買おうとする 女という生き物は、面倒臭い
鳴海 恭弥
立ち止まる篠宮に声をかける あぁ、めんどくせぇ
ぐぅ~~~
篠宮 柚葉
篠宮は顔を赤くし、お腹を抑える
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
俺が笑うと、篠宮は頬を膨らます
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
隣でぶつぶつと文句を言う篠宮の 頭をポンっと叩く
鳴海 恭弥
そう言うと、篠宮は驚き ニコッと笑う
篠宮 柚葉
菊池 莉子
家に帰ると 莉子は笑顔で出迎えてくれた
彼女は菊池莉子 大学時代から付き合っている
鳴海 恭弥
菊池 莉子
鳴海 恭弥
アナウンサー
風呂から上がり、テレビをつけると カメラに笑顔を向ける 篠宮の姿があった
菊池 莉子
莉子は机に料理を運びながら言った
アナウンサー
八乙女 紫苑
アナウンサー
八乙女 紫苑
アナウンサー
篠宮 柚葉
そう言うと篠宮は シュークリームを幸せそうに頬張る
八乙女 紫苑
篠宮 柚葉
八乙女 紫苑
篠宮の口の横についたクリームを 男は手で取るとペロッと舐める
アナウンサー
あいつ、どこ行っても あんな感じなのか
鳴海 恭弥
菊池 莉子
鳴海 恭弥
椅子に座ると 莉子は向かいの椅子に座り 手を合わせ、ご飯を食べ始める
菊池 莉子
鳴海 恭弥
菊池 莉子
鳴海 恭弥
菊池 莉子
莉子はとてもいい子だが 付き合って二年が経ち 段々と一緒に居ることも会話も減り 触れ合う事もほとんどなく 付き合っているのかも 正直わからないレベルだった
鳴海 恭弥
俺がそう言うと 莉子はびっくりして顔を上げる
菊池 莉子
鳴海 恭弥
菊池 莉子
そう言うと 莉子は嬉しそうに笑った
篠宮 柚葉
篠宮は顔を近づけてくると 目をぱちぱちさせる
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
駄目だ全然わからん
篠宮 柚葉
そう言ってくるっと回る
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
佐野が篠宮の手を引っ張る
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
篠宮はそう言うと 嬉しそうに自分の席に戻っていった
佐野 朝陽
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
鳴海 恭弥
佐野は礼をすると自分の席に戻った
職員室に戻るなり 先生達がざわついていた
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
この高校では春にも桜花祭といって 文化祭が開催され 部活の勧誘や各クラスの出し物 ミスコンで盛り上がる
鎌田先生
明石 涼
鎌田先生
教頭
明石 涼
鳴海 恭弥
明石はため息をつく俺の肩を叩くと 頑張れよと声をかけ 職員室を出ていった
鳴海 恭弥
男子生徒
女子生徒
女子生徒
篠宮 柚葉
男子生徒
男子生徒
女子生徒
このクラス、団結力すげえな
佐野 朝陽
男子生徒
篠宮 柚葉
女子生徒
クラスがどっと笑いに包まれ 出し物やミスコン衣装の 話し合いが始まった
女子生徒
女子生徒
鳴海 恭弥
突然話を振られ困惑する
篠宮 柚葉
女子生徒
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
女子生徒
俺がそう言うと 女子たちは即決し話し合いを始める
鳴海 恭弥
明石 涼
放課後、喫煙所で 明石と喋りながら煙草に火をつける
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
女子生徒
明石 涼
二階から生徒に声をかけられ 煙草の火を消し校舎に戻った
あっという間に数日が経ち 桜花祭前日
鳴海 恭弥
女子生徒
篠宮 柚葉
男子生徒
女子生徒
篠宮 柚葉
女子生徒
篠宮は笑顔で手を振り 教室を出ていく
女子生徒
男子生徒
一時間後、最終確認が終わり 生徒たちは各々教室を出ていった
あぁ…疲れた
教室を出て喫煙所に向かう 廊下を歩いていると 屋上に篠宮の姿が見えた
あれ…あいつ帰ったんじゃ
鳴海 恭弥
気になり屋上へ向かい 篠宮に声をかける
篠宮 柚葉
声に気づき振り返る篠宮は 笑顔がなく、真剣な顔をしていた
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
俺がそう言うと、顔を曇らせる
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
屋上のフェンスに寄りかかり 篠宮は切なそうな顔で話し続けた
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮の長い髪が風に吹かれ 篠宮は微笑んだ
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
篠宮は笑顔でそう言った
女子生徒
舞台裏で背中を押された少女は 頷き、ステージへ向かう
生徒会長
明石 涼
職員席で明石が俺の肩を叩く
ステージに立つ篠宮に 照明が当てられる
男子生徒
男子生徒
女子生徒
会場はざわつき すぐに歓声に変わる
明石 涼
長い髪は綺麗に巻かれ 元の良さを引き立てるメイクに キラキラと輝く彼女は微笑んだ
生徒会長
結果はわかりきったものだった トロフィーを受け取る篠宮は 俺に向かって笑顔でピースした
男子は佐野が三位という結果で クラス優勝は逃したものの 生徒達は大満足だった
男子生徒
女子生徒
佐野 朝陽
男子生徒
女子生徒
あいつ…
俺は屋上へ走った
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
いつもと雰囲気の違う篠宮に 少し戸惑う
鳴海 恭弥
俺がそう言うと 篠宮は俺の胸に飛び込んでくる
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
子供のように甘えてくる 篠宮から離れ 篠宮の頭を撫でる
鳴海 恭弥
一瞬のことだった
唇には柔らかい感触が残り 篠宮は唖然とする俺に もう一度キスをし 微笑んだ
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
あの日から篠宮は 俺にべったりになった
鳴海 恭弥
明石 涼
ニヤニヤと笑いながら 明石は煙草に火をつける
他人事だと思いやがって…
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
こいつ…
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
ひょこっと現れた篠宮は 後ろから抱きついてくる
明石 涼
篠宮 柚葉
目を輝かせる篠宮
鳴海 恭弥
明石 涼
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
明石はウインクをしてそう言った 俺はため息をつきながら 煙草の火を消した
それから一週間 仕事とテスト勉強に追われ 放課後、机で眠る篠宮を見つけた
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
廊下から声をかけようとすると 佐野が教室へ駆け込み 篠宮を起こす
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
佐野は篠宮の荷物をまとめ 目を擦る篠宮に鞄を渡す
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
そう言って優しく微笑むと 篠宮の頭を撫でる
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
二人は仲良さそうに話しながら 教室を出ていく
ほんと、お似合いな二人だな
明石 涼
鳴海 恭弥
びっくりし、振り返ると 明石が篠宮達を見ながら言った
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
そして数日後 全教科のテストが終わり 順位の書かれた紙を 俺の前に差し出し 篠宮はニコッと笑った
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
期末テストが終わり もうすぐ夏休みが始まる
成田 碧斗
バーベキュー当日 大学時代の友人、成田は 驚きながら篠宮を見る
成田 碧斗
成田 碧斗
秋山 志帆
菊池 莉子
篠宮 柚葉
篠宮はニコッと微笑み 成田が騒ぐ
成田 碧斗
鳴海 恭弥
菊池 莉子
莉子は隣に来て 俺の顔を見る
鳴海 恭弥
秋山 志帆
明石 涼
成田 碧斗
成田はニコニコしながら 篠宮に迫る
篠宮 柚葉
秋山 志帆
明石 涼
篠宮 柚葉
砂浜まで歩き バーベキューの準備を始める
篠宮 柚葉
秋山 志帆
篠宮 柚葉
菊池 莉子
篠宮 柚葉
篠宮は持ち前のコミュ力で すぐに女子達と仲良くなる
鳴海 恭弥
明石 涼
鳴海 恭弥
莉子と篠宮を気にしながら 火を起こし、バーベキューを始める
秋山 志帆
篠宮 柚葉
秋山 志帆
篠宮 柚葉
菊池 莉子
篠宮 柚葉
成田 碧斗
明石 涼
成田 碧斗
女子の輪の中に入り 地雷をぶっ込む成田
篠宮 柚葉
成田 碧斗
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
成田 碧斗
明石 涼
明石は隣で小声で呟く
鳴海 恭弥
明石 涼
明石は優しく微笑み 俺の肩を叩いた
それから俺達はバーベキューを 楽しんだ
秋山 志帆
菊池 莉子
秋山 志帆
明石 涼
篠宮は数人の男に囲まれ 成田が止めに入るが 人数が多く篠宮は腕を掴まれている
明石 涼
菊池 莉子
鳴海 恭弥
明石 涼
篠宮の元へ走り 男の腕を掴む
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
鳴海 恭弥
鳴海 恭弥
男は篠宮の腕を離し 文句を言いながら どこかへ行ってしまった
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
バシャッ
篠宮は水をかけてきて ケラケラと笑う
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
海に入り篠宮に水をかける
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
そう言って戻ろうとすると 篠宮は俺の腕を掴む
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
悲しそうな顔をした篠宮に そう返事をすると 篠宮は俺の腕を離した
花火大会当日、神社
篠宮 柚葉
髪をゆるくお団子にし 伊達メガネをした篠宮が走ってきた
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
そう言ってニコッと微笑む篠宮
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
篠宮の小さく細い手が 俺の手を握る
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
子供のようにはしゃぐ篠宮に 自然と笑みがこぼれた
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
下手くそな篠宮の手を持ち キーホルダーを狙う
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
店員からキーホルダーを渡され 篠宮は微笑む
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
人通りの少ない階段に腰掛け 打ち上がった花火を眺める
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
花火を見る篠宮の横顔は 打ち上がる花火に照らされ とても綺麗だった
篠宮 柚葉
俺の手をにぎる篠宮の指が震える
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮の大きな瞳から 涙がこぼれる
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
涙を流しながら 篠宮は俺に笑いかける
篠宮 柚葉
篠宮の切ない笑顔に 胸が締め付けられる
鳴海 恭弥
三ヶ月という短い期間だったが 毎日しつこいくらい くっついて来た篠宮に 教師と生徒という禁断の関係だから ついつい 手を出したくなってしまうだけだと 篠宮の気持ちを軽く考えていた自分に 心底腹が立った
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
篠宮の手が離れる
こうして、夏と共に 篠宮柚葉との関係も終わった
マネージャー
篠宮 柚葉
八月下旬 撮影が終わり、マネージャーが 車を運転しながら言った
マネージャー
マネージャー
篠宮 柚葉
家の前に車が止まり 車から降り、手を振る
花火大会から数日が経った 心に穴が空いたまま 仕事をするだけの日々が続き 夏休みももうすぐ終わる
篠宮 柚葉
そう呟き階段を上がる リビングからは楽しそうな笑い声 自分の部屋に戻り ベッドに横になる
篠宮 柚葉
携帯の待ち受け画面を見る この家の庭で 小学生の頃のあたしと ママとパパが笑顔で写っている
ママが考えた可愛いお家が あたしも大好きだった
篠宮 柚葉
小学二年生の頃 元々体の弱かったママは 病で亡くなった
その後、中学一年生の頃に パパは再婚した 相手の女の人には あたしの一個下の娘がいた
そして 段々とあたしの居場所はなくなった
夏休みが終わり 新学期が始まった
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
家の前で待つ朝陽の元へ駆け寄る
篠宮 柚葉
ガチャ
家のドアが開き 杏ちゃんが出てくる
彼女は篠宮杏 再婚相手の連れ子で 違う高校に通う義妹
篠宮 柚葉
篠宮 杏
杏ちゃんはあたしを睨み 走っていってしまった
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
休み明けでにぎやかな教室に入り 皆に声をかける
篠宮 柚葉
女子生徒
篠宮 柚葉
女子生徒
他愛もない会話で 笑顔を振りまく
鳴海 恭弥
なるみんが教室に入り 皆は席に戻った
鳴海 恭弥
あぁ、本当にいつも通りなんだ… それもそうだよね あたしが一方的に好きだっただけだし
顔色ひとつ変えないなるみんに 胸が締め付けられる
鳴海 恭弥
そう言ってなるみんは 教室を出ていく
女子生徒
男子生徒
女子生徒
篠宮 柚葉
体操服に着替え 校庭へと向かった
男子生徒
女子生徒
男子生徒
廊下を歩くと 生徒達があたしを見て ひそひそと話し始める
男子生徒
女子生徒
女子生徒
あぁ、もうやめて
言葉たちがぐるぐると巡り 頭が割れそうになる
外見だけで評価しないで
もっとあたし自身を見て
あたしはお人形さんなんかじゃない
どこにも、あたしの居場所なんてない もう辛いの 息ができないの
佐野 朝陽
あたしは過呼吸を起こし その場に倒れ込んだ
保健室の先生
目が覚めたら保健室のベッドにいて 先生が優しくそう言った
鳴海 恭弥
親…
篠宮 柚葉
へらっと笑うあたしに なるみんはため息をつく
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
義母
保健室のドアが開き 義母があたしに駆け寄ってくる
義母
うそだ…
義母
そんな事、あんたが決めるな
義母
篠宮 柚葉
あたしの肩に手を置く 義母の手を振り払う
保健室の先生
篠宮 柚葉
義母
義母は笑いながら 先生達に礼をする
鳴海 恭弥
保健室の先生
義母
義母はへらへらと笑う
義母
義母は小声でそう言うと あたしを睨みつけた
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海先生 俺をよそよそしく呼ぶ篠宮は 顔を曇らせ俯いた
佐野 朝陽
授業が終わり 慌てた様子で佐野が駆け寄る
佐野 朝陽
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
俺は個室に佐野を連れていき 椅子に座らせた
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
佐野は顔を曇らせる
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
鳴海 恭弥
桜花祭の前日 篠宮が言った言葉 簡単に受け止め 簡単な言葉を返してしまった事に 今更後悔した
鳴海 恭弥
保健室に戻り ベッドで空を眺める篠宮に声をかける
篠宮 柚葉
そう言う篠宮の目から 涙がこぼれる
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
篠宮は泣きながら思いを吐き出す
篠宮はこの小さく華奢な体で 今まで一体どれ程の事を 抱え込んできたのだろう
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
落ち着いた篠宮を車で 家まで送る
車を降り優しく微笑む篠宮
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
そう言って篠宮は家の中へ 入っていった
アナウンサー
あれから二ヶ月が経ち 暑かった夏が終わり 肌寒い季節に変わる
女子生徒
男子生徒
ざわつく教室に篠宮の姿はない
明石 涼
明石 涼
鳴海 恭弥
ガラッ
職員室のドアが開き 先生達がざわつく
鎌田先生
鎌田先生の声が聞こえ 咄嗟に振り返る
鳴海 恭弥
そこには長い髪をばっさりと切り 微笑む篠宮の姿があった
篠宮は歩きながら 他の先生達に笑いかけ 俺の横に立ちニコッと笑った
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
明石 涼
篠宮 柚葉
明石が篠宮の頭を撫で 笑い合う二人に笑みがこぼれた
女子生徒
男子生徒
女子生徒
教室に入るなり 篠宮に抱きつく生徒達
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
男子生徒
男子生徒
女子生徒
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
佐野が篠宮の頭を わしゃわしゃっと撫で クラスが笑いに包まれる
何か吹っ切れた篠宮は 少し大人びて見えた
篠宮 柚葉
放課後 篠宮はうさぎのキーホルダーのついた 鍵を見せつけてくる
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
なるみん、か
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
佐野 朝陽
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮は手を振ると 佐野の元へ走っていった
俺も業務を終わらせ くたくたで家に帰る 隣人のバタバタッという 物音と共に目が覚め 朝の支度を済ます
ガチャッ
篠宮 柚葉
鍵をかけていると 横から聞き慣れた声がする
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
隣の部屋の前に立つ篠宮が ニコッと笑った
番外編 篠宮、料理にハマる
ピンポーンピンポーン
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
ドアを開けると 篠宮が鍋いっぱいの カレーを持って立っている
鳴海 恭弥
あれから毎日のように 篠宮が作りすぎた料理を持ってくる
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
明らかに動揺した篠宮が 顔を引き攣らせる
篠宮 柚葉
そう言って篠宮に腕を引っ張られ 篠宮の部屋へ案内される
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
篠宮の家へ上がる
綺麗に整頓された部屋 テレビの横には 母親との写真
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮は料理を温めながら 嬉しそうに言った
篠宮 柚葉
ソーセージとチーズと唐揚げがのった カレーが机の上に置かれた
…見てるだけで胃もたれしそう
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
そう言い篠宮も食べ始めると 幸せそうに微笑む
篠宮 柚葉
よく食べる奴だとは思ってたけど よくその細い体でこんな ヘビーな物がっつくな…
篠宮 柚葉
首をかしげ篠宮が言う
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
食べ終わり、篠宮に見送られ 自分の部屋に戻る
明石 涼
鳴海 恭弥
教室へ向かう途中 明石はケラケラ笑った
明石 涼
明石と別れ、教室に入る
鳴海 恭弥
女子生徒
男子生徒
ホームルームが終わり ぐったり机に突っ伏する佐野に 声をかける
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
鳴海 恭弥
佐野 朝陽
佐野の肩を叩き 教室を出た
鳴海 恭弥
家に帰ると莉子が 料理を作って待っていた
菊池 莉子
机には胃に優しそうな料理が 並べられている
鳴海 恭弥
菊池 莉子
鳴海 恭弥
菊池 莉子
久しぶりに食べた 莉子の料理は涙が出るくらい 絶品だった
三谷 春
声をかけられ振り返ると 三年生の先輩が立っていた
篠宮 柚葉
三谷 春
三谷春と名乗った先輩は 背が高くとても綺麗な人だった
三谷 春
篠宮 柚葉
三谷 春
篠宮 柚葉
あたしがそう言うと 三谷先輩微笑んだ
この高校の演劇部は レベルが高く練習もとてもハード クラスの出店と両立が出来るか 少し心配になる
放課後、演劇部が練習する 多目的室のドアを開ける
三谷 春
三谷先輩が声をかけると 二十人くらいの部員が集まる
三谷 春
演劇部員
三谷 春
演劇部員
三谷 春
篠宮 柚葉
三谷 春
三谷先輩から台本を受け取る
篠宮 柚葉
三谷 春
篠宮 柚葉
台本に目を通すあたしに 三谷先輩は言った
三谷 春
三谷 春
篠宮 柚葉
三谷 春
三谷 春
篠宮 柚葉
三谷 春
三谷先輩は真剣な顔で あたしを見つめる
篠宮 柚葉
三谷 春
演劇部員
篠宮 柚葉
そうして、演劇部の 助っ人をする事が決まり 出店と練習に追われる日々が始まった
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
女子生徒
男子生徒
篠宮 柚葉
クラスの皆は暖かく受け入れてくれ 放課後、多目的室に向かう
三谷 春
篠宮 柚葉
演劇部員
演劇部員
篠宮 柚葉
三谷 春
練習はとてもハードで 一ヶ月はあっという間に過ぎた
女子生徒
女子生徒
体育祭にはたくさんの生徒が集まる
三谷 春
三谷先輩のマイクアナウンスが 終わると共に幕が上がる
序盤は順調に進む
妖女
篠宮 柚葉
妖女
篠宮 柚葉
妖女
篠宮 柚葉
妖女
シンデレラの目付きが変わり 会場は息をのむ
篠宮 柚葉
シンデレラは綺麗なドレスを 身にまとい 舞踏会へ参加しました
あまりの美しさに 王子はシンデレラから 目が離せなくなりました
三谷 春
差し出された王子の手を握ると シンデレラは微笑んだ
篠宮 柚葉
一緒に過ごすうちにシンデレラは 王子の優しさに惹かれていきました
妖女
三谷 春
篠宮 柚葉
三谷 春
もうすぐ鐘が鳴る お願い、一秒でも長く…
篠宮 柚葉
三谷 春
お願い、鐘を鳴らさないで…
シンデレラの目から涙がこぼれる
篠宮 柚葉
目付きが鋭く変わり 隠し持っていたナイフで 王子の胸を貫く
三谷 春
篠宮 柚葉
三谷 春
篠宮 柚葉
シンデレラは倒れ込む王子に駆け寄る
妖女
篠宮 柚葉
シンデレラはその場を走り去り 約束通り裕福な生活を手にした
篠宮 柚葉
シンデレラは 靴やティアラを投げ捨て その場に泣き崩れる
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
シンデレラは自分の胸を一突きし その場に倒れ込みました
幕が降りると 会場に拍手が鳴り響く
篠宮 柚葉
三谷 春
舞台裏では篠宮が三谷に 抱きつく
演劇部員
演劇部員
他の部員達も泣きながら 集まってくる
明石 涼
会場全体が篠宮の演じる シンデレラの表情一つ一つに 惹き込まれた
女子生徒
男子生徒
女子生徒
演劇部の舞台は大反響だった
女子生徒
生徒達は、各クラスに戻り 明石と俺も席を立つ
篠宮 柚葉
舞台裏から衣装を着たまま 篠宮が駆け寄ってくる
鳴海 恭弥
明石 涼
篠宮 柚葉
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
明石 涼
鳴海 恭弥
明石 涼
本当に、最初は ただの手のかかる教え子で 色々な事に振り回されて 迷惑してばっかりだった
でも、次第に 人一倍頑張り屋で優しくて弱い 篠宮柚葉の人間性を知った
そしてこの半年 思い返せば 篠宮の笑顔と篠宮との思い出しか 出てこない
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
そう言って篠宮は 俺の腕を引っ張る
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
そう言って篠宮は笑う
篠宮 柚葉
そう言ってたこやきを頬張る
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
たこやきを口に入れると 涙目になる篠宮
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
水を飲む篠宮を笑いながら 残りのたこ焼きに手を伸ばす
噛んだ瞬間舌が痺れた
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
そう言って篠宮は 水を渡してくる
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
鳴海 恭弥
篠宮 柚葉
自然と二人で笑い合う
文化祭が終わり、後夜祭が始まり 生徒達は告白大会などで 盛り上がる
生徒会長
明石 涼
鳴海 恭弥
ステージに佐野が上がる
生徒会長
佐野 朝陽
佐野はマイクを持つと 篠宮の名前を呼んだ
篠宮 柚葉
明石 涼
ステージに篠宮が上がり 佐野が篠宮と向き合う
佐野 朝陽
女子生徒
男子生徒
生徒達は盛り上がる
生徒会長
篠宮 柚葉
篠宮が佐野の手を握り 歓声が上がる
明石 涼
鼓動が高まり、胸が痛い
俺はきっと 篠宮柚葉に惹かれ始めてる