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鳴海 恭弥

このクラスの担任になりました
鳴海です。よろしく

四月 新学期が始まり 二年三組を受け持つことになった

鳴海 恭弥

じゃあ、次の授業の準備をして…

女子生徒

え!!!それだけ?!

男子生徒

新しいクラスだし
自己紹介とかしたいんだけど!

生徒達が騒ぎ始め 男は露骨に嫌な顔をする

鳴海 恭弥

じゃあ出席番号順で適当に…

女子生徒

先生何歳ー?!

女子生徒

若いしかっこいいよね!

女子生徒

彼女とかいるんですかー?

男の声は遮られ 女子生徒から質問攻めに合う

鳴海 恭弥

23歳、彼女はいません

女子生徒

えー、あたし立候補しちゃおっかな

男子生徒

やめろって!先生困ってんだろ!

再び生徒達が騒ぎ始め 男はため息をつく

あー、めんどくせぇ

ガラガラッ

教室のドアが勢いよく開けられ 一人の少女が駆け込んでくる

長い髪を耳にかけると 少女は時計を見る

篠宮 柚葉

せ…せーーーふ!!

佐野 朝陽

アウトだわ!!おせーよゆず!

男子生徒の一人が声をかける

篠宮 柚葉

昨日借りた漫画がすっごい面白くてさ!!気づいたら四時でさ!

佐野 朝陽

あーあれな!
面白かっただろ~

篠宮 柚葉

マジ号泣なんだけど!!
特に京様がさぁ!

佐野 朝陽

後で聞いてやるから席座れ~

少女が駆け込んできてから 静まり返っていた教室が 笑いに包まれる

篠宮 柚葉

あ、自己紹介?
篠宮柚葉です!よろしくねっ♪

篠宮柚葉と名乗った少女は ニコリと微笑んだ

鳴海 恭弥

篠宮さん、遅刻です

篠宮 柚葉

え?!なんで!
前の先生ならこの時間は遅刻にしなかったのに~!

鳴海 恭弥

それじゃあ、ホームルームを終わります

少女を無視し、男はそう言うと 教室を出ていった

篠宮 柚葉

新学期から遅刻とかしんどい~!

女子生徒

ゆずー!どんまーい!

これが、俺 鳴海恭弥と 彼女、篠宮柚葉との出会いだった

明石 涼

あー!ゆずね!
可愛いしいい子だよ

こいつは明石涼 同じ学校に勤務する 大学時代の友人

鳴海 恭弥

ふーん

煙草に火をつけながら 適当に返事をする

明石 涼

かなり自由人だけど
授業も一生懸命やるし
特に問題は無いけどな

鳴海 恭弥

まぁ、問題起こさないなら
それでいいんだよ俺は

明石 涼

ははっ、お前は相変わらずだな
まぁあの子、この田舎には目立つタイプの外見だしなぁ

明石 涼

ところで最近
莉子ちゃんとはどーよ?

鳴海 恭弥

別に普通だよ
ま、お互い仕事で時間合わないけど

明石 涼

あぁ、莉子ちゃんも
なんでこんな奴がいいんだか…

篠宮 柚葉

りょーーーーちーーん!!!

篠宮は大声でそう叫ぶと 駆け寄ってくる

明石 涼

噂をすれば…
ゆず、どうしたー?

篠宮 柚葉

見てこれ!ニューネイル!!

篠宮はそう言うと 凶器のような爪を見せつけてくる

明石 涼

お!今回シンプルでいい感じじゃん

篠宮 柚葉

でしょ~っ!あとねあとね
今日ね、アイシャドウもね
Pierrotの新作なの!!!

明石 涼

え、わかんねぇな

篠宮 柚葉

え、まじ?なるみんも見て見て!

鳴海 恭弥

…は?

篠宮は顔を近づけてくると 目を閉じる いや、そんな事より

鳴海 恭弥

なに?なるみんって

篠宮 柚葉

え?鳴海先生だからなるみん!
かわいいじゃんっ♪

明石 涼

おー、いいねいいねなるみーん

鳴海 恭弥

はぁ…

かける言葉もなく ため息をつく

佐野 朝陽

はー、こんな所にいた

篠宮 柚葉

朝陽~!

篠宮はそう言うと 男の背中に飛び乗る

明石 涼

佐野ー、今日も子守り大変だな

佐野 朝陽

なんとかしてくださいよ…
あ、鳴海先生
次の授業なんですけど…

佐野は篠宮を背負いながら 俺に話しかけてくる

しっかりしてるな、こいつは

佐野 朝陽

じゃあ、失礼します

篠宮 柚葉

朝陽~お腹減った~

佐野 朝陽

おいバタバタすんな
パンツ見えるぞ

佐野は篠宮をおんぶしながら 仲良さそうに校舎に戻って行った

鳴海 恭弥

お世話係がいるなら安心だわ

明石 涼

あの二人ほんと仲良いよな~
よし、俺らも戻るか

鳴海 恭弥

じゃあ、連絡事項は以上です
気をつけて帰るように

男子生徒

よっしゃ、部活行こうぜ

女子生徒

先生ばいばーい!

その日は何事もなく終わり 生徒たちは教室を出ていく

佐野 朝陽

あれ?ゆず今日仕事?

篠宮 柚葉

んーん!鎌田先生に呼ばれてて

佐野 朝陽

おー、そっか

篠宮 柚葉

朝陽もバイトがんばって!
なるみん一緒に職員室行こ~っ

荷物をまとめ教室を出ようとする俺に 篠宮は駆け寄ってくる

篠宮 柚葉

なるみん、彼女いないって
言ってたらしいけど
本当はいるんでしょ??

職員室へと向かっていると 隣を歩く篠宮はそう言い 顔を覗き込んでくる

鳴海 恭弥

なんで?

篠宮 柚葉

なんとなくだけど、
ネクタイとか小物が可愛いから
なるみんそういうの選ばなそうだし
プレゼントかなって

そう言って篠宮はニコリと笑う

鳴海 恭弥

そっか、当たってるよ

篠宮 柚葉

なんで隠すの?
いるよー!って言えばいいのに

鳴海 恭弥

別に生徒に言う必要ないからな

篠宮 柚葉

あははっ、なるみんっぽい

ねえ!見てこれ!
篠宮柚葉!!
またページ増えてるよ!

通りかかった教室で 女子生徒が盛り上がっていた

可愛いけど調子乗りすぎ!
この前八乙女くんと撮影してて
その後にめっちゃ口説いてたらしいし!!八乙女くんのファンブチ切れだった~!!

なんか同じクラスの佐野くんにも
べたべたしてるよね~

え?あのかっこいい子?
うわ~男好きすぎて引くんだけど

俺と篠宮に気づかず 女子生徒達はゲラゲラと笑う

陰口かぁ…ありがちだな

そう思い隣の篠宮に目をやる

篠宮 柚葉

……

篠宮は突然の事に戸惑いながらも 顔を曇らせる

気にしなくていい事で傷つき 周りの同情を買おうとする 女という生き物は、面倒臭い

鳴海 恭弥

ほら
職員室行くんじゃねえの?

立ち止まる篠宮に声をかける あぁ、めんどくせぇ

ぐぅ~~~

篠宮 柚葉

あ、えっと…えへ

篠宮は顔を赤くし、お腹を抑える

篠宮 柚葉

お昼パン一個だったから!!!
やばいお腹なりそう!って思ったらなるみんが急かすから~!!

鳴海 恭弥

……
ははっ、お前なぁ

俺が笑うと、篠宮は頬を膨らます

篠宮 柚葉

笑うことないじゃん!!
成長期なんだもん!!!

鳴海 恭弥

はいはい
ほら、早く行くぞ

篠宮 柚葉

あ!どうでもいいって思ったんでしょ!!

隣でぶつぶつと文句を言う篠宮の 頭をポンっと叩く

鳴海 恭弥

話くらいなら、いつでも聞くからな

そう言うと、篠宮は驚き ニコッと笑う

篠宮 柚葉

うん!!!

菊池 莉子

あ!恭弥、おかえり

家に帰ると 莉子は笑顔で出迎えてくれた

彼女は菊池莉子 大学時代から付き合っている

鳴海 恭弥

ただいま

菊池 莉子

もう少しでご飯できるよ
先お風呂入っちゃって

鳴海 恭弥

あぁ、ありがとう

アナウンサー

今回は、今 若い世代に大人気の
八乙女紫苑くんと篠宮柚葉ちゃんに
インタビューをしていきまーす!

風呂から上がり、テレビをつけると カメラに笑顔を向ける 篠宮の姿があった

菊池 莉子

あ、篠宮柚葉ちゃんだ
可愛いよね~

莉子は机に料理を運びながら言った

アナウンサー

今月号の二人の特集ページ
大好評なようですが
それについて八乙女くんは
どのようなお気持ちでしょうか?

八乙女 紫苑

今回はカップルとしての撮影だったので、とても緊張しましたが
現場の雰囲気も良く、とてもリラックスして撮影できました

アナウンサー

お二人と、現場の皆さんの力であの素敵な写真が生まれたということですね!!

八乙女 紫苑

ははっ、そうですね
柚葉ちゃんもリードしてくれて
凄く頼もしかったです

アナウンサー

ありがとうございます。
柚葉ちゃんは甘いもの大好きという事で、今回予約一ヶ月待ちのシュークリームをご用意しました!!

篠宮 柚葉

えええ!!美味しそう
食べていいですか?!

そう言うと篠宮は シュークリームを幸せそうに頬張る

八乙女 紫苑

差し入れで貰った
シュークリームも三個くらい
ぺろっと食べてたよね~

篠宮 柚葉

うん!!あれめっちゃおいしい!
これもおいひいよ~!!

八乙女 紫苑

あはは、クリームついてるよ

篠宮の口の横についたクリームを 男は手で取るとペロッと舐める

アナウンサー

ほんと仲が良い兄妹みたいで
ほっこりしますね~!

あいつ、どこ行っても あんな感じなのか

鳴海 恭弥

ふっ、すげぇな

菊池 莉子

恭弥?出来たよ

鳴海 恭弥

あ、うん
ありがとう

椅子に座ると 莉子は向かいの椅子に座り 手を合わせ、ご飯を食べ始める

菊池 莉子

あ、明石くんは元気?

鳴海 恭弥

ん?元気だよ

菊池 莉子

そっか、この前志帆とも話して
また皆で集まりたいなって

鳴海 恭弥

あー、言っとくわ

菊池 莉子

ありがとう

莉子はとてもいい子だが 付き合って二年が経ち 段々と一緒に居ることも会話も減り 触れ合う事もほとんどなく 付き合っているのかも 正直わからないレベルだった

鳴海 恭弥

あ…ネイル

俺がそう言うと 莉子はびっくりして顔を上げる

菊池 莉子

え?!
あ、そうなの
ネイル変えたんだ

鳴海 恭弥

そっか、いいじゃん

菊池 莉子

ありがとう

そう言うと 莉子は嬉しそうに笑った

篠宮 柚葉

ねぇねぇ見てっ!

篠宮は顔を近づけてくると 目をぱちぱちさせる

鳴海 恭弥

え…なに?

篠宮 柚葉

今日ね、すっごい綺麗に
マスカラができたの!
まつ毛長くない?!

鳴海 恭弥

あー…すごい

駄目だ全然わからん

篠宮 柚葉

どう?今日も可愛い?

そう言ってくるっと回る

鳴海 恭弥

はいはい…

佐野 朝陽

ゆず、あんま先生困らせんな

佐野が篠宮の手を引っ張る

篠宮 柚葉

えー!困らせてないー!
あ、数学でわかんないとこあるんだけどっ!

佐野 朝陽

あー、今日バイトないから家来いよ
母さんもゆずに会いたがってたし
晩飯食ってけば?

篠宮 柚葉

え!ほんと!
美香ちゃんのご飯楽しみっ!!

篠宮はそう言うと 嬉しそうに自分の席に戻っていった

佐野 朝陽

先生迷惑かけてすみません

鳴海 恭弥

全然大丈夫だよ
ほんと仲良いな

佐野 朝陽

昔から危なっかしくて
放っておけないだけですよ

鳴海 恭弥

そっか
これからもよろしく頼むわ

佐野は礼をすると自分の席に戻った

職員室に戻るなり 先生達がざわついていた

明石 涼

お、恭弥

鳴海 恭弥

なに?なんかあんの?

明石 涼

春の桜花祭でやるミスコンだよ

鳴海 恭弥

ああ…

この高校では春にも桜花祭といって 文化祭が開催され 部活の勧誘や各クラスの出し物 ミスコンで盛り上がる

鎌田先生

今年はうちがとりますよ

明石 涼

いやー、女子は篠宮
男子は間宮で決まりでしょ

鎌田先生

二強ですね~

教頭

週末までに出し物と
ミスコンエントリー者を
各クラス提出お願いしますね

明石 涼

忙しくなるな

鳴海 恭弥

はぁ…

明石はため息をつく俺の肩を叩くと 頑張れよと声をかけ 職員室を出ていった

鳴海 恭弥

という事で、桜花祭の出し物を

男子生徒

よっしゃー!今年は絶対
総合優勝狙うぞ!

女子生徒

去年は僅差で負けたもんね!
ゆずー!頼むよー!
ミスコンの点はでかいんだから!

女子生徒

去年の三年生強かったもんね!
今年は勝ちたいー!

篠宮 柚葉

任せて!!絶対取るから!!
出し物は任せた!

男子生徒

任せろ!!男は誰が行く?!

男子生徒

やっぱ俺だろ!

女子生徒

いや、絶対佐野くん!!

このクラス、団結力すげえな

佐野 朝陽

え?俺?

男子生徒

佐野!頼むぞ

篠宮 柚葉

朝陽!ワンツー取ろうね~!!

女子生徒

いやいや
ワンとワン取ってきて~!

クラスがどっと笑いに包まれ 出し物やミスコン衣装の 話し合いが始まった

女子生徒

今年は何系でミスコン攻めようか…

女子生徒

先生~!ゆずは何系がいいと思う?

鳴海 恭弥

んー…

突然話を振られ困惑する

篠宮 柚葉

なるみんのタイプは?

女子生徒

わー、それ気になる

鳴海 恭弥

タイプねぇ…
綺麗系?

篠宮 柚葉

じゃあそれで~!

女子生徒

おっけー、じゃあこんな感じで…

俺がそう言うと 女子たちは即決し話し合いを始める

鳴海 恭弥

てな感じで決まった
すげぇよな

明石 涼

まぁ秋は大規模だけど
春は時間もねぇしな

放課後、喫煙所で 明石と喋りながら煙草に火をつける

明石 涼

秋は出店がメインだけど
春はステージ発表がメインだし
この学校は行事が多いよな

鳴海 恭弥

桜花祭が終わったら
すぐ中間テストだしなぁ
あー…めんどくせぇ

明石 涼

お互い頑張ろうぜ

鳴海 恭弥

あ、なんか莉子が
皆で集まりたいってさ

明石 涼

おー、落ち着いたら集まろうぜ
莉子ちゃんと上手くやってんのか?

鳴海 恭弥

毎回それ聞くな…

明石 涼

結婚とか考えてんだろ?
あんないい子もったいないぜ

鳴海 恭弥

結婚ねぇ…

明石 涼

まぁ、考えると荷が重いよな~

女子生徒

明石先生ー!!!!
ちょっといいー?

明石 涼

おっけー、今行くー!

二階から生徒に声をかけられ 煙草の火を消し校舎に戻った

あっという間に数日が経ち 桜花祭前日

鳴海 恭弥

じゃあ、最終確認したら
明日に備えて早く帰るように

女子生徒

はーい!!
ゆず、今日は早く寝てよ~!

篠宮 柚葉

わかってるって~!

男子生徒

遅刻したら全員に学食奢りな!

女子生徒

いいねそれ!頼むよ~!

篠宮 柚葉

え~!当たり強いよ~
じゃあ、先帰るねっ!

女子生徒

うん!また明日ね

篠宮は笑顔で手を振り 教室を出ていく

女子生徒

先生、ここなんですけど

男子生徒

ここはこうした方が

一時間後、最終確認が終わり 生徒たちは各々教室を出ていった

あぁ…疲れた

教室を出て喫煙所に向かう 廊下を歩いていると 屋上に篠宮の姿が見えた

あれ…あいつ帰ったんじゃ

鳴海 恭弥

篠宮、お前何して

気になり屋上へ向かい 篠宮に声をかける

篠宮 柚葉

なるみん…

声に気づき振り返る篠宮は 笑顔がなく、真剣な顔をしていた

篠宮 柚葉

あたし…明日…

鳴海 恭弥

びびってんのか?

俺がそう言うと、顔を曇らせる

篠宮 柚葉

わかんない
皆の期待に応えられるか

鳴海 恭弥

そっか

篠宮 柚葉

小さい頃は、人前に出るのは
得意じゃなかったんだ
小学校の時、学芸会で主役になって
みんなが褒めてくれて嬉しくて

屋上のフェンスに寄りかかり 篠宮は切なそうな顔で話し続けた

篠宮 柚葉

あたしにはママもパパもいないから
誰かに褒められる事ってなくて…
気づいたら、この見た目のせいで
注目される事も増えて
嬉しい反面、怖いんだ

篠宮 柚葉

いつか期待を裏切って
皆が幻滅してしまっても
寄り添ってくれる家族は
もういないんだし…

鳴海 恭弥

クラスの奴はお前が思ってる様な奴らじゃねえだろ
皆、どんな結果でも受け入れてくれるよ

篠宮 柚葉

でもそんなの…っ!

鳴海 恭弥

はぁ…
俺が寄り添ってやるよ
だから、安心してステージに立ってこい

篠宮の長い髪が風に吹かれ 篠宮は微笑んだ

篠宮 柚葉

なるみんって、案外優しいんだね

鳴海 恭弥

案外は余計だけどな

篠宮 柚葉

あははっ
よーし!頑張るぞぉー!

篠宮は笑顔でそう言った

女子生徒

ゆず、行っておいで!

舞台裏で背中を押された少女は 頷き、ステージへ向かう

生徒会長

次は
二年三組、篠宮柚葉さん

明石 涼

お、大本命くるぞ

職員席で明石が俺の肩を叩く

ステージに立つ篠宮に 照明が当てられる

男子生徒

お…おい…見ろよあれ

男子生徒

女神…?

女子生徒

まって…可愛いみて!!!

会場はざわつき すぐに歓声に変わる

明石 涼

レベル違ぇな

長い髪は綺麗に巻かれ 元の良さを引き立てるメイクに キラキラと輝く彼女は微笑んだ

生徒会長

すごい歓声ですね
そちらに並んでもらって…
次は三年一組の…

結果はわかりきったものだった トロフィーを受け取る篠宮は 俺に向かって笑顔でピースした

男子は佐野が三位という結果で クラス優勝は逃したものの 生徒達は大満足だった

男子生徒

よーし!打ち上げもあるし
片付け早く終わらせようぜ!

女子生徒

ねー!こっち手伝って!

佐野 朝陽

あれ?ゆずは?

男子生徒

トイレかどっかかな?

女子生徒

たしかに!見てないね~

あいつ…

俺は屋上へ走った

篠宮 柚葉

来ると思った

鳴海 恭弥

お前なぁ

篠宮 柚葉

なるみん、ありがとう

いつもと雰囲気の違う篠宮に 少し戸惑う

鳴海 恭弥

おめでとう、頑張ったな…

俺がそう言うと 篠宮は俺の胸に飛び込んでくる

鳴海 恭弥

お…おいちょっと…!

篠宮 柚葉

なるみーん!怖かったよ~

子供のように甘えてくる 篠宮から離れ 篠宮の頭を撫でる

鳴海 恭弥

お疲れ様、しのみ

一瞬のことだった

唇には柔らかい感触が残り 篠宮は唖然とする俺に もう一度キスをし 微笑んだ

篠宮 柚葉

なるみんごめん…
好きになっちゃった

鳴海 恭弥

………は?

篠宮 柚葉

ねぇねぇ、今日のメイクどう?
かわいい?

鳴海 恭弥

あー、はいはい

あの日から篠宮は 俺にべったりになった

鳴海 恭弥

助けてくれ明石

明石 涼

えー、いいじゃんお前~
校内一の美少女に懐かれて

ニヤニヤと笑いながら 明石は煙草に火をつける

他人事だと思いやがって…

明石 涼

あ、今度莉子ちゃん達と行く
バーベキューに誘ってみたら?

鳴海 恭弥

は?なんで彼女と篠宮を
対面させるんだよ

明石 涼

まぁ彼女いるって現実を
教え込むためにもさぁ
…何より面白そうじゃん

こいつ…

鳴海 恭弥

はぁ…ありえないから

篠宮 柚葉

え!なに!バーベキュー?

ひょこっと現れた篠宮は 後ろから抱きついてくる

明石 涼

そーそー、行く?
恭弥の彼女もいるけど

篠宮 柚葉

え!なるみんの彼女!
会ってみたーい!

目を輝かせる篠宮

鳴海 恭弥

駄目だ、教室戻れ

明石 涼

じゃあ、期末テストで
20位以内に入ったらだな!
最近仕事忙しくて
成績落ちてるだろ~?

篠宮 柚葉

え!ほんと!
がんばる~!!

鳴海 恭弥

おい明石…

明石 涼

良いラインだろ?

鳴海 恭弥

はぁ…

明石はウインクをしてそう言った 俺はため息をつきながら 煙草の火を消した

それから一週間 仕事とテスト勉強に追われ 放課後、机で眠る篠宮を見つけた

鳴海 恭弥

おい、しのみ

佐野 朝陽

あ!いた!!ゆず!!!!

廊下から声をかけようとすると 佐野が教室へ駆け込み 篠宮を起こす

篠宮 柚葉

んん…

佐野 朝陽

起きろ~

佐野は篠宮の荷物をまとめ 目を擦る篠宮に鞄を渡す

佐野 朝陽

テスト、大丈夫そうか?

篠宮 柚葉

うん!ばっちり

佐野 朝陽

そっか、頑張ったな

そう言って優しく微笑むと 篠宮の頭を撫でる

篠宮 柚葉

ねぇねぇ今日のご飯は~?

佐野 朝陽

ハンバーグだよ
あ、スーパー寄って帰ろうぜ

篠宮 柚葉

やった!ハンバーグ♪
なんか買うの?

二人は仲良さそうに話しながら 教室を出ていく

ほんと、お似合いな二人だな

明石 涼

仲良いよな~、ほんと

鳴海 恭弥

……!!

びっくりし、振り返ると 明石が篠宮達を見ながら言った

明石 涼

佐野も報われねぇな

鳴海 恭弥

篠宮も
同世代で恋愛した方が
いいのにな

明石 涼

ま、それは本人の勝手だし

そして数日後 全教科のテストが終わり 順位の書かれた紙を 俺の前に差し出し 篠宮はニコッと笑った

篠宮 柚葉

18位でした~

鳴海 恭弥

はぁ…しょうがねぇなぁ

期末テストが終わり もうすぐ夏休みが始まる

成田 碧斗

えっ?!教え子って
篠宮柚葉?!え!!?え?!

バーベキュー当日 大学時代の友人、成田は 驚きながら篠宮を見る

成田 碧斗

あ、自己紹介するね
成田碧斗です!
恭弥と明石とは
大学の時の同期で!

成田 碧斗

こっちは秋山
あと、恭弥の彼女の莉子ちゃん

秋山 志帆

よろしくね

菊池 莉子

よ、よろしくね

篠宮 柚葉

初めまして
篠宮柚葉です♪

篠宮はニコッと微笑み 成田が騒ぐ

成田 碧斗

鬼可愛いじゃん!!
いいなお前ら毎日こんな
可愛い子を拝めて!!!

鳴海 恭弥

成田うるせえ…

菊池 莉子

教え子が篠宮柚葉ちゃんって
教えてくれても良かったのに

莉子は隣に来て 俺の顔を見る

鳴海 恭弥

あー、言う程の事でも
ないと思ってさ

秋山 志帆

まぁ、とりあえず始めようよ
あたしら材料切っちゃうから
男達で火の準備しちゃって

明石 涼

おっけー

成田 碧斗

柚葉ちゃん水着持ってきてるの?

成田はニコニコしながら 篠宮に迫る

篠宮 柚葉

着てきてますよ~
海だったし、泳ぐのかなって

秋山 志帆

おい成田ー
未成年にセクハラすんなー

明石 涼

ごめんなゆず
悪いやつではないから

篠宮 柚葉

全然大丈夫~!

砂浜まで歩き バーベキューの準備を始める

篠宮 柚葉

あ、あたしも切るの
手伝います♪

秋山 志帆

え、助かる~!
じゃあこれやってもらっていい?

篠宮 柚葉

はい!任せてください!

菊池 莉子

若いのに偉いね~

篠宮 柚葉

志帆さんと莉子さんも
若いじゃないですか~!

篠宮は持ち前のコミュ力で すぐに女子達と仲良くなる

鳴海 恭弥

大丈夫か…あれ

明石 涼

ゆずと莉子ちゃん?
まぁ大丈夫だろ

鳴海 恭弥

それならいいけど

莉子と篠宮を気にしながら 火を起こし、バーベキューを始める

秋山 志帆

柚葉ちゃん、何飲む?

篠宮 柚葉

あ、お茶もらってもいいですか?

秋山 志帆

ジュースとかもあるけど
お茶で大丈夫?

篠宮 柚葉

ちょっと来週あたりに
水着撮影が控えてるんで…

菊池 莉子

モデルさんって大変なんだね

篠宮 柚葉

そうなんですよ~
マネージャーがうるさくて

成田 碧斗

なんか可愛いなぁ…女子達

明石 涼

華があるな

成田 碧斗

柚葉ちゃん
彼氏とかいんの?

女子の輪の中に入り 地雷をぶっ込む成田

篠宮 柚葉

え?いないですよ~

成田 碧斗

好きな人は?

鳴海 恭弥

ちょ…成田

篠宮 柚葉

いたんですけど
素敵な彼女がいたんで
邪魔できないなって

成田 碧斗

え?じゃあ俺とかどう?

明石 涼

結果オーライか?恭弥

明石は隣で小声で呟く

鳴海 恭弥

あぁ、これが一番だろ

明石 涼

そっか

明石は優しく微笑み 俺の肩を叩いた

それから俺達はバーベキューを 楽しんだ

秋山 志帆

あ~お腹いっぱい

菊池 莉子

あれ?柚葉ちゃんと成田くんは?

秋山 志帆

海で遊んでるよ~

明石 涼

あれ、なんか声掛けられてねぇか

篠宮は数人の男に囲まれ 成田が止めに入るが 人数が多く篠宮は腕を掴まれている

明石 涼

やばくねぇか

菊池 莉子

恭弥、柚葉ちゃんが

鳴海 恭弥

明石、ここにいて

明石 涼

気をつけろよ

篠宮の元へ走り 男の腕を掴む

篠宮 柚葉

なるみん…!

鳴海 恭弥

ちょっと手離してもらえる?

何お前
俺ら握手頼んでたんだけど

鳴海 恭弥

嫌がってんだろ

関係ねぇやつは引っ込んでろ

鳴海 恭弥

いいから離せよ

男は篠宮の腕を離し 文句を言いながら どこかへ行ってしまった

篠宮 柚葉

なるみん

鳴海 恭弥

大丈夫か?篠宮…

バシャッ

篠宮は水をかけてきて ケラケラと笑う

篠宮 柚葉

あははっ
なるみん顔マジなんだもん~!

鳴海 恭弥

お前…

海に入り篠宮に水をかける

篠宮 柚葉

ねぇ冷たいやめてっ!!
あははっ

鳴海 恭弥

はぁ…
人が心配して来てやってんのに

篠宮 柚葉

なるみん、ありがとう

鳴海 恭弥

はいはい、戻るぞ

そう言って戻ろうとすると 篠宮は俺の腕を掴む

篠宮 柚葉

なるみん…莉子さんとの事
絶対に邪魔しないから…
最後に一回だけデートして

篠宮 柚葉

花火大会の日
六時に神山神社で待ってる
それでもう諦めるから

鳴海 恭弥

…わかった

悲しそうな顔をした篠宮に そう返事をすると 篠宮は俺の腕を離した

花火大会当日、神社

篠宮 柚葉

なるみんっ!

髪をゆるくお団子にし 伊達メガネをした篠宮が走ってきた

鳴海 恭弥

有名人も大変だな

篠宮 柚葉

最後だから可愛くしようと思ったんだけどね

そう言ってニコッと微笑む篠宮

鳴海 恭弥

屋台少し回るか

篠宮 柚葉

うん!!

篠宮の小さく細い手が 俺の手を握る

篠宮 柚葉

なるみん見て!
やきそばたべたいっ!

篠宮 柚葉

金魚すくいあるよ!!
うわ~!りんご飴も食べたーい!

鳴海 恭弥

奢ってやるから
好きなだけ食え

篠宮 柚葉

え?ほんと!
なるみん太っ腹!

子供のようにはしゃぐ篠宮に 自然と笑みがこぼれた

篠宮 柚葉

ねぇ、射的あるよ!
やってみたい!

鳴海 恭弥

どれ狙ってんの?

篠宮 柚葉

あのうさぎのキーホルダー!

鳴海 恭弥

ははっ、どこ狙ってんだよ
もっとこうして

下手くそな篠宮の手を持ち キーホルダーを狙う

篠宮 柚葉

あ!当たった!
なるみんすごーい

鳴海 恭弥

よかったな

篠宮 柚葉

うん!!大事にする!

店員からキーホルダーを渡され 篠宮は微笑む

篠宮 柚葉

花火、始まるね
そろそろ移動しよっか

鳴海 恭弥

そうだな

人通りの少ない階段に腰掛け 打ち上がった花火を眺める

篠宮 柚葉

久しぶりに見たなぁ

鳴海 恭弥

俺も、花火大会自体
来るのも久しぶりだわ

篠宮 柚葉

あははっ、そうなんだ
花火、綺麗だね

花火を見る篠宮の横顔は 打ち上がる花火に照らされ とても綺麗だった

篠宮 柚葉

なるみん…

俺の手をにぎる篠宮の指が震える

篠宮 柚葉

なるみんが桜花祭で
あたしの背中を押してくれて
凄く嬉しかったんだ

鳴海 恭弥

…うん

篠宮 柚葉

どれだけ周りが注目してくれても
周りにたくさん人がいても
本当のあたしを大事にしてくれる人なんて、多分いないから

鳴海 恭弥

そんな事…

篠宮 柚葉

仕事柄、そう思ってしまうのかも

でも、不器用ななるみんが
あたしのために選んでくれた言葉に凄く救われて
舞い上がってたんだよ…多分

篠宮 柚葉

でも、本当に大好きだった

鳴海 恭弥

…うん

篠宮の大きな瞳から 涙がこぼれる

篠宮 柚葉

でも…あたしの気持ちが
誰かの幸せを邪魔してしまうなら
あたしはこの気持ちを
捨てないといけないって…

篠宮 柚葉

それになるみんは教師で
あたしは教え子…
きっとこの気持ちは
なるみんの事も不幸にしてしまう

篠宮 柚葉

あたし、もう少し早く産まれたら
もっと違う形でなるみんに
出会えてたら…
好きでいてもよかったのかなぁ

涙を流しながら 篠宮は俺に笑いかける

篠宮 柚葉

あたしの事…振ってください…

篠宮の切ない笑顔に 胸が締め付けられる

鳴海 恭弥

…好きになってくれてありがとう
気持ちに応えられなくて
ごめんな

三ヶ月という短い期間だったが 毎日しつこいくらい くっついて来た篠宮に 教師と生徒という禁断の関係だから ついつい 手を出したくなってしまうだけだと 篠宮の気持ちを軽く考えていた自分に 心底腹が立った

篠宮 柚葉

ありがとう…
なるみん

篠宮 柚葉

さよなら

篠宮の手が離れる

こうして、夏と共に 篠宮柚葉との関係も終わった

マネージャー

じゃあ、明後日の私服撮影
九時に迎えに来るわね

篠宮 柚葉

あ…うん

八月下旬 撮影が終わり、マネージャーが 車を運転しながら言った

マネージャー

最近疲れてるわね
元気もないようだし

マネージャー

少し痩せたわね…
きちんとご飯は食べて
しっかり休むのよ

篠宮 柚葉

うん、ありがとう

家の前に車が止まり 車から降り、手を振る

花火大会から数日が経った 心に穴が空いたまま 仕事をするだけの日々が続き 夏休みももうすぐ終わる

篠宮 柚葉

…ただいま

そう呟き階段を上がる リビングからは楽しそうな笑い声 自分の部屋に戻り ベッドに横になる

篠宮 柚葉

朝陽…

携帯の待ち受け画面を見る この家の庭で 小学生の頃のあたしと ママとパパが笑顔で写っている

ママが考えた可愛いお家が あたしも大好きだった

篠宮 柚葉

まま…

小学二年生の頃 元々体の弱かったママは 病で亡くなった

その後、中学一年生の頃に パパは再婚した 相手の女の人には あたしの一個下の娘がいた

そして 段々とあたしの居場所はなくなった

夏休みが終わり 新学期が始まった

篠宮 柚葉

行ってきます…

佐野 朝陽

ゆず、おせぇよ

家の前で待つ朝陽の元へ駆け寄る

篠宮 柚葉

ごめんね

ガチャ

家のドアが開き 杏ちゃんが出てくる

彼女は篠宮杏 再婚相手の連れ子で 違う高校に通う義妹

篠宮 柚葉

おはよう、杏ちゃん

篠宮 杏

…!どいて

杏ちゃんはあたしを睨み 走っていってしまった

佐野 朝陽

相変わらずだな

篠宮 柚葉

えへへ、嫌われてるみたい

佐野 朝陽

気にすんなよ
俺らも行こうぜ

休み明けでにぎやかな教室に入り 皆に声をかける

篠宮 柚葉

おはよう!!
え、まみちゃん焼けたね!!

女子生徒

そー、めっちゃ海行ってさぁ

篠宮 柚葉

いいなー!小麦肌も可愛いね~!

女子生徒

お風呂痛すぎて
しんどかったけどね~

他愛もない会話で 笑顔を振りまく

鳴海 恭弥

ホームルームを始めます
席に着いてください

なるみんが教室に入り 皆は席に戻った

鳴海 恭弥

出席とります…

あぁ、本当にいつも通りなんだ… それもそうだよね あたしが一方的に好きだっただけだし

顔色ひとつ変えないなるみんに 胸が締め付けられる

鳴海 恭弥

それじゃ、ホームルーム終わります
次の授業に遅れないように

そう言ってなるみんは 教室を出ていく

女子生徒

体育だよ!急ご

男子生徒

しょっぱなから体育とかありかよ~

女子生徒

ゆず?校庭行こー!

篠宮 柚葉

あ、うん!!

体操服に着替え 校庭へと向かった

男子生徒

篠宮さんほんっと可愛いよな

女子生徒

わかる、お人形さんみたい

男子生徒

スタイルもいいし
一回でいいから付き合いてぇ

廊下を歩くと 生徒達があたしを見て ひそひそと話し始める

男子生徒

可愛い~

女子生徒

顔ちっちゃい~いいな~

女子生徒

この前の雑誌も凄いかわいかった

あぁ、もうやめて

言葉たちがぐるぐると巡り 頭が割れそうになる

外見だけで評価しないで

もっとあたし自身を見て

あたしはお人形さんなんかじゃない

どこにも、あたしの居場所なんてない もう辛いの 息ができないの

佐野 朝陽

ゆず!!!!!

あたしは過呼吸を起こし その場に倒れ込んだ

保健室の先生

大丈夫、貧血よ
少し休んで今日はもう帰りなさい

目が覚めたら保健室のベッドにいて 先生が優しくそう言った

鳴海 恭弥

篠宮、親御さんに連絡しておくから
それまで休ませてもらって

親…

篠宮 柚葉

なるみ…鳴海先生っ
一人で帰れるから大丈夫だよ~!
大袈裟だなぁ~

へらっと笑うあたしに なるみんはため息をつく

鳴海 恭弥

お前なぁ、
仕事が忙しいのはわかるけど
ちゃんと飯は食ってしっかり…

篠宮 柚葉

ダイエット中だったから!
あの…皆細くて
あたしも頑張らないとな~って

鳴海 恭弥

もう充分細いだろ…
仕事と学業の両立が出来ないなら
無理して仕事続けなくても

篠宮 柚葉

…あたしだって、もう辞めたい

鳴海 恭弥

…篠宮?

義母

失礼します!
篠宮柚葉の母です

保健室のドアが開き 義母があたしに駆け寄ってくる

義母

倒れたって聞いたから!!
もう心配で心配で

うそだ…

義母

ほんとすみません
ご迷惑おかけして!!
少し仕事の方を休ませて
学業に力を入れさせますので

そんな事、あんたが決めるな

義母

この子の母親が体が弱かったものですから、この子も似てしまったのかしら……
これからもご迷惑おかけするかもしれませんが

篠宮 柚葉

ママの事馬鹿にしないでよ!!
あたしがママに似てるから
気に食わないんでしょ!!!

あたしの肩に手を置く 義母の手を振り払う

保健室の先生

篠宮さん…落ち着いて

篠宮 柚葉

毎日あたしを仲間外れにして
パパと杏ちゃんと三人で
家族ごっこしてるくせに!!
母親面しないでよ!!

義母

ほんとこの子ったら
何言ってるのかしら
すみませんほんと

義母は笑いながら 先生達に礼をする

鳴海 恭弥

すみませんお母さん
僕が家まで送りますので
お引き取り頂いても
よろしいでしょうか

保健室の先生

ほんと、すみませんね

義母

あ、わかりました
ほんとすみません

義母はへらへらと笑う

義母

いい加減にしなさいよ

義母は小声でそう言うと あたしを睨みつけた

鳴海 恭弥

篠宮、少し休んで
落ち着いたら
話聞かせて

篠宮 柚葉

鳴海先生、この前の事を
抱え込んでた訳じゃないから
鳴海先生は悪くないから

鳴海先生 俺をよそよそしく呼ぶ篠宮は 顔を曇らせ俯いた

佐野 朝陽

ゆず!!!!!

授業が終わり 慌てた様子で佐野が駆け寄る

佐野 朝陽

大丈夫なのか?

鳴海 恭弥

佐野、ちょっといい?

佐野 朝陽

え?あ、はい

俺は個室に佐野を連れていき 椅子に座らせた

鳴海 恭弥

篠宮のことだけど
母親が来て取り乱した
何か知ってることあるなら
教えて欲しい

佐野 朝陽

俺もよくは知らないんです
ゆずは大丈夫って言って
話してくれないから

佐野は顔を曇らせる

鳴海 恭弥

そっか

佐野 朝陽

あ、でも
父親の再婚相手とその連れ子と
上手くいってないって…
父親も向こうの味方で
家に居場所がないから
仕事してお金貯めて家を出るって言ってました

鳴海 恭弥

わかった、ありがとう

桜花祭の前日 篠宮が言った言葉 簡単に受け止め 簡単な言葉を返してしまった事に 今更後悔した

鳴海 恭弥

篠宮、落ち着いたか

保健室に戻り ベッドで空を眺める篠宮に声をかける

篠宮 柚葉

先生、あたしもう
学校辞める

そう言う篠宮の目から 涙がこぼれる

篠宮 柚葉

モデルだって辞めたい…
外見が評価されるほど
あたしが無くなっていく…

鳴海 恭弥

篠宮…

篠宮 柚葉

皆に嫌われたくなくて
頑張って笑顔振りまいて
毎日息が詰まりそうになる

篠宮 柚葉

あたしは…
誰かが優しくぎゅって
抱きしめてくれたらそれでいいのに…それだけで、幸せだなって…思えるのに…

篠宮は泣きながら思いを吐き出す

篠宮はこの小さく華奢な体で 今まで一体どれ程の事を 抱え込んできたのだろう

篠宮 柚葉

落ち着いたら、また学校来て
それからの事を決めるね

鳴海 恭弥

わかった

落ち着いた篠宮を車で 家まで送る

車を降り優しく微笑む篠宮

篠宮 柚葉

またね、鳴海先生

鳴海 恭弥

また、学校でな

そう言って篠宮は家の中へ 入っていった

アナウンサー

人気モデルの篠宮柚葉ちゃんが
芸能界引退を宣言し
来月号は最後の表紙を飾り
篠宮柚葉が詰まった一冊に…

あれから二ヶ月が経ち 暑かった夏が終わり 肌寒い季節に変わる

女子生徒

見た?今日のニュース

男子生徒

見た!篠宮さん引退したの?

ざわつく教室に篠宮の姿はない

明石 涼

ゆずが来なくなって二ヶ月か…
そろそろ留年危ういぞ

明石 涼

お前の周りも静かになったなぁ
寂しい気もするけど

鳴海 恭弥

ははっ、ほんとだな

ガラッ

職員室のドアが開き 先生達がざわつく

鎌田先生

篠宮…!!!

鎌田先生の声が聞こえ 咄嗟に振り返る

鳴海 恭弥

…!

そこには長い髪をばっさりと切り 微笑む篠宮の姿があった

篠宮は歩きながら 他の先生達に笑いかけ 俺の横に立ちニコッと笑った

篠宮 柚葉

ただいま

鳴海 恭弥

おかえり

明石 涼

ゆず!心配させんなよ!

篠宮 柚葉

あははっ、りょーちんごめんねぇ

明石が篠宮の頭を撫で 笑い合う二人に笑みがこぼれた

女子生徒

ゆずー!!!!

男子生徒

髪切ってる!かわいい!

女子生徒

もー、心配してたんだから!!

教室に入るなり 篠宮に抱きつく生徒達

佐野 朝陽

ゆず

篠宮 柚葉

朝陽…

佐野 朝陽

ほんとお前は…
心配ばっかかけて…!

男子生徒

おい佐野泣いてんだけどー!

男子生徒

やめろよー!

女子生徒

あんたももらい泣きしてんじゃん!

篠宮 柚葉

男がめそめそ泣かなーい!

佐野 朝陽

お前のせいだろうが!

篠宮 柚葉

あははっ、やめて朝陽!
ごめんってば!

佐野が篠宮の頭を わしゃわしゃっと撫で クラスが笑いに包まれる

何か吹っ切れた篠宮は 少し大人びて見えた

篠宮 柚葉

じゃーーん!

放課後 篠宮はうさぎのキーホルダーのついた 鍵を見せつけてくる

鳴海 恭弥

それ、あの時の

篠宮 柚葉

ん?そうだけど
そっちじゃなくて!
一人暮らし始めたんだ~

鳴海 恭弥

篠宮、料理とかできんの?

篠宮 柚葉

え?全然できないよ~
これから頑張るんじゃん!

鳴海 恭弥

そっか、頑張れよ

篠宮 柚葉

合鍵いる~?
なるみんにだったらいいよ~?

なるみん、か

鳴海 恭弥

お前はそっちの方がいいよ

篠宮 柚葉

え?どーゆーこと?!

佐野 朝陽

ゆず、帰るぞー

篠宮 柚葉

あ、うん!
またね!なるみん!

鳴海 恭弥

おー、気をつけてな

篠宮は手を振ると 佐野の元へ走っていった

俺も業務を終わらせ くたくたで家に帰る 隣人のバタバタッという 物音と共に目が覚め 朝の支度を済ます

ガチャッ

篠宮 柚葉

…あれ?なるみん?

鍵をかけていると 横から聞き慣れた声がする

篠宮 柚葉

えー!なるみんお隣さんなの!
偶然すぎる!やばいね~

鳴海 恭弥

…は?

隣の部屋の前に立つ篠宮が ニコッと笑った

番外編 篠宮、料理にハマる

ピンポーンピンポーン

鳴海 恭弥

はい…

篠宮 柚葉

ねぇなるみん!!
作りすぎちゃったから食べて!

ドアを開けると 篠宮が鍋いっぱいの カレーを持って立っている

鳴海 恭弥

あのなぁ…

あれから毎日のように 篠宮が作りすぎた料理を持ってくる

鳴海 恭弥

どうやったらカレーを作りすぎるんだよ…

篠宮 柚葉

なんかね!ルー入れるじゃん!
味濃くて水入れるじゃん!
味薄くてルー入れるじゃん!

鳴海 恭弥

あー、わかった
今日は大丈夫だから

篠宮 柚葉

あ、じゃあうち来て!
ご馳走するからっ!

鳴海 恭弥

お前、俺の事
残飯処理だと思ってない?

篠宮 柚葉

え?えー
そ、そんな事ないよ

明らかに動揺した篠宮が 顔を引き攣らせる

篠宮 柚葉

ま、まぁ上がってよ

そう言って篠宮に腕を引っ張られ 篠宮の部屋へ案内される

鳴海 恭弥

おい…

篠宮 柚葉

ほんと美味しいから!!
ほっぺ落ちちゃうから!

鳴海 恭弥

はぁ…
食ったらすぐ帰るからな

篠宮 柚葉

うん!!!
その辺に座っといて!

篠宮の家へ上がる

綺麗に整頓された部屋 テレビの横には 母親との写真

鳴海 恭弥

ほんとに母親似なんだな

篠宮 柚葉

うん!外見も中身も綺麗な人で
自慢のママだよ

鳴海 恭弥

そっか

篠宮は料理を温めながら 嬉しそうに言った

篠宮 柚葉

じゃーーーん!!
ゆずちゃん特性
スペシャルカレーでーす!!!

ソーセージとチーズと唐揚げがのった カレーが机の上に置かれた

…見てるだけで胃もたれしそう

鳴海 恭弥

い、いただきます

篠宮 柚葉

いただきまーす!!

そう言い篠宮も食べ始めると 幸せそうに微笑む

篠宮 柚葉

おいひい〜~

よく食べる奴だとは思ってたけど よくその細い体でこんな ヘビーな物がっつくな…

篠宮 柚葉

なるみん、おいしい?

首をかしげ篠宮が言う

鳴海 恭弥

お、美味しいよ

篠宮 柚葉

ほんと?!
おかわりたくさんあるからね♪

鳴海 恭弥

あ、うん…

食べ終わり、篠宮に見送られ 自分の部屋に戻る

明石 涼

それで、顔色しんでんの?

鳴海 恭弥

あぁ…

教室へ向かう途中 明石はケラケラ笑った

明石 涼

ま、頑張れよ

明石と別れ、教室に入る

鳴海 恭弥

おはようございます
出席とります…

女子生徒

おはようー!先生ー!

男子生徒

お、席戻れ

ホームルームが終わり ぐったり机に突っ伏する佐野に 声をかける

鳴海 恭弥

佐野、大丈夫か…?

佐野 朝陽

大丈夫です…
ただの胃もたれなんで

鳴海 恭弥

もしかして…篠宮?

佐野 朝陽

え?先生もですか?
毎日鬼のような量の料理食わされて
もう限界です…

鳴海 恭弥

そうか…お互い気をつけような

佐野 朝陽

はい…

佐野の肩を叩き 教室を出た

鳴海 恭弥

ただいま…

家に帰ると莉子が 料理を作って待っていた

菊池 莉子

ごはん出来てるよ

机には胃に優しそうな料理が 並べられている

鳴海 恭弥

先食べるよ…
いただきます

菊池 莉子

いただきます

鳴海 恭弥

…うまい

菊池 莉子

ほんと?よかった~

久しぶりに食べた 莉子の料理は涙が出るくらい 絶品だった

三谷 春

君が、篠宮柚葉さん?

声をかけられ振り返ると 三年生の先輩が立っていた

篠宮 柚葉

はい、そうですけど…

三谷 春

初めまして、三谷春です
演劇部の部長を務めてます

三谷春と名乗った先輩は 背が高くとても綺麗な人だった

三谷 春

一ヶ月後に控える文化祭で
演劇部は劇を披露すんだけど
是非、篠宮さんの力を
借りたいなぁと思って

篠宮 柚葉

えぇ…あたしそんな

三谷 春

放課後、一度練習を見に来て
それから返事をしてほしい

篠宮 柚葉

わ、わかりました

あたしがそう言うと 三谷先輩微笑んだ

この高校の演劇部は レベルが高く練習もとてもハード クラスの出店と両立が出来るか 少し心配になる

放課後、演劇部が練習する 多目的室のドアを開ける

三谷 春

篠宮さん、来てくれてありがとう
皆、一回集まって

三谷先輩が声をかけると 二十人くらいの部員が集まる

三谷 春

今回のサンドリヨン
主役の姫は篠宮さんに
お願いしたいと思ってる

演劇部員

え…最後の舞台です…
部長が主役なのでは…

三谷 春

私は王子役として
出るつもりなんだよ

演劇部員

でも、いきなり助っ人に
主役をやらせるのは…

三谷 春

大丈夫、彼女の演技力は
私が保証するよ

篠宮 柚葉

あたし、まだやるって
決めたわけじゃ…

三谷 春

とりあえず、台本に目を通してみて

三谷先輩から台本を受け取る

篠宮 柚葉

サンドリヨン…?

三谷 春

そう、今回はシンデレラの別目線からのストーリーで
シンデレラは魔法をかけられた妖女に王子の暗殺を命じられる
そして王子を暗殺しに舞踏会に潜るんだ

篠宮 柚葉

はい…

台本に目を通すあたしに 三谷先輩は言った

三谷 春

でも、シンデレラと王子は
お互いに惹かれ合ってしまう
しかしシンデレラは
妖女の言いつけを守り王子を暗殺する

三谷 春

約束通り王子を暗殺し
シンデレラは報酬を受け取り
心に傷を背負いながらも
裕福に暮らしていくんだ

篠宮 柚葉

そんなの、幸せじゃない…

三谷 春

そう、だからシンデレラは
最後自分を刺してしんでしまう

三谷 春

シンデレラを別目線から
書き下ろし
オリジナルを加えつつ
発表したいと思っているんだよ

篠宮 柚葉

あたしに…出来るでしょうか

三谷 春

君にしか、頼めない

三谷先輩は真剣な顔で あたしを見つめる

篠宮 柚葉

是非、やらせてください

三谷 春

ありがとう!じゃあ
明日から本格的に練習に参加してほしい
ここで放課後、待ってるよ

演劇部員

三年生最後の舞台です
最高の作品にしましょう

篠宮 柚葉

頑張ります!

そうして、演劇部の 助っ人をする事が決まり 出店と練習に追われる日々が始まった

鳴海 恭弥

シンデレラ…?

篠宮 柚葉

サンドリヨンだよ~
凄く素敵なお話で
演じてみたくなったの!

鳴海 恭弥

そっか、無理はせずに
やれるだけやってみろよ

女子生徒

ゆず!楽しみにしてる!
絶対見に行くからね!

男子生徒

出店の方の準備は
俺らに任せて!
練習に集中してくれ!

篠宮 柚葉

みんなありがとうっ!

クラスの皆は暖かく受け入れてくれ 放課後、多目的室に向かう

三谷 春

今日からよろしくね
今日はこのシーンから

篠宮 柚葉

はい!!

演劇部員

え、もう台詞を覚えてきたの?

演劇部員

昨日渡したばっかなのに…
凄いのね

篠宮 柚葉

足を引っ張りたくないので

三谷 春

頼もしいね
よし、始めようか

練習はとてもハードで 一ヶ月はあっという間に過ぎた

女子生徒

もうすぐ始まるね

女子生徒

楽しみ!

体育祭にはたくさんの生徒が集まる

三谷 春

演劇部部長の三谷春です
今回私達が披露するのはサンドリヨン
少し変わったシンデレラの話
是非、お楽しみください

三谷先輩のマイクアナウンスが 終わると共に幕が上がる

序盤は順調に進む

妖女

シンデレラ、お前も舞踏会に
行きたいのかい?

篠宮 柚葉

はい、私も一度でいいから
綺麗な服を着て舞踏会へ
参加してみたいです…

妖女

シンデレラ、舞踏会へ参加し
このナイフで
王子を刺しころせるかい?

篠宮 柚葉

そんな事…出来ません

妖女

もし十二時の鐘が鳴るまでに
王子を刺せたら
お前には一生分の
裕福な暮らしを保証しよう

篠宮 柚葉

そんな…

妖女

どうだい?やれるかい?

シンデレラの目付きが変わり 会場は息をのむ

篠宮 柚葉

この生活から抜け出せるのなら
なんだってできます

シンデレラは綺麗なドレスを 身にまとい 舞踏会へ参加しました

あまりの美しさに 王子はシンデレラから 目が離せなくなりました

三谷 春

是非、私と踊っていただけないでしょうか

差し出された王子の手を握ると シンデレラは微笑んだ

篠宮 柚葉

私でよければ、是非

一緒に過ごすうちにシンデレラは 王子の優しさに惹かれていきました

妖女

シンデレラ、もうすぐ鐘が鳴るよ
早く王子を刺してその場を離れなさい

三谷 春

どうかされましたか?

篠宮 柚葉

いいえ、私
貴方と永遠にこうして
一緒にいたかったです

三谷 春

私も同じ気持ちです

もうすぐ鐘が鳴る お願い、一秒でも長く…

篠宮 柚葉

私、十二時には帰らないと…

三谷 春

また、会えますか

お願い、鐘を鳴らさないで…

シンデレラの目から涙がこぼれる

篠宮 柚葉

貴方の事を、愛しています

目付きが鋭く変わり 隠し持っていたナイフで 王子の胸を貫く

三谷 春

…!!

篠宮 柚葉

もっと違う形で…
出会いたかった

三谷 春

シンデレラ…
どうか幸せに…

篠宮 柚葉

…!!

シンデレラは倒れ込む王子に駆け寄る

妖女

帰りなさい、魔法が解けてしまう

篠宮 柚葉

…ごめんなさい

シンデレラはその場を走り去り 約束通り裕福な生活を手にした

篠宮 柚葉

こんなもの…
貴方の命には変えられない…

シンデレラは 靴やティアラを投げ捨て その場に泣き崩れる

篠宮 柚葉

人の不幸の上に成り立つ幸せは…
私には…重すぎる…

篠宮 柚葉

心の底から…愛していました

シンデレラは自分の胸を一突きし その場に倒れ込みました

幕が降りると 会場に拍手が鳴り響く

篠宮 柚葉

先輩!!

三谷 春

ありがとう
おかげで最高の舞台が
完成したよ

舞台裏では篠宮が三谷に 抱きつく

演劇部員

三年間で一番最高な出来でした

演劇部員

ありがとう皆…

他の部員達も泣きながら 集まってくる

明石 涼

凄かったな…

会場全体が篠宮の演じる シンデレラの表情一つ一つに 惹き込まれた

女子生徒

す…すごい…

男子生徒

高校生のレベルじゃねえよな

女子生徒

王子役かっこいいし!
シンデレラは可愛いし!

演劇部の舞台は大反響だった

女子生徒

よし、午後からも頑張ろう

生徒達は、各クラスに戻り 明石と俺も席を立つ

篠宮 柚葉

なるみん!!!見てたの!

舞台裏から衣装を着たまま 篠宮が駆け寄ってくる

鳴海 恭弥

凄かったな
練習頑張ってたもんな

明石 涼

授業中居眠りが
目立ったけどな?

篠宮 柚葉

あははっ、ごめんってば

篠宮 柚葉

ねぇ、このあと一緒に
校舎まわろうよ

鳴海 恭弥

わかったから
とりあえずそれ着替えてこいよ

篠宮 柚葉

うん!!!

明石 涼

あれ?終わったんじゃなかったの?

鳴海 恭弥

さあな

明石 涼

なんだよそれ~

本当に、最初は ただの手のかかる教え子で 色々な事に振り回されて 迷惑してばっかりだった

でも、次第に 人一倍頑張り屋で優しくて弱い 篠宮柚葉の人間性を知った

そしてこの半年 思い返せば 篠宮の笑顔と篠宮との思い出しか 出てこない

鳴海 恭弥

参ったな…

篠宮 柚葉

お待たせ!!
こっちこっち!

そう言って篠宮は 俺の腕を引っ張る

鳴海 恭弥

たこやき…?

篠宮 柚葉

ロシアンたこやき!!
一緒に食べたくて

そう言って篠宮は笑う

篠宮 柚葉

一個ずつ食べて
当たった方が負けね!!!

そう言ってたこやきを頬張る

篠宮 柚葉

美味しい~

鳴海 恭弥

中何入ってんの?

篠宮 柚葉

わさびとタバスコって
書いてあるよ~

鳴海 恭弥

不味そうだな

篠宮 柚葉

あたし次これ!!!

たこやきを口に入れると 涙目になる篠宮

篠宮 柚葉

え、やばいんだけど
めっちゃ辛い!!食べれない!

鳴海 恭弥

俺の勝ちじゃん
ほら、水

篠宮 柚葉

ありがと!!!

水を飲む篠宮を笑いながら 残りのたこ焼きに手を伸ばす

噛んだ瞬間舌が痺れた

鳴海 恭弥

は?俺のも辛いんだけど

篠宮 柚葉

え?まじ?
めっちゃ辛くない?

そう言って篠宮は 水を渡してくる

鳴海 恭弥

やばいこれ…
なんで二個入ってんだよ

篠宮 柚葉

あははっ
なるみん泣いてる~

鳴海 恭弥

うるせぇ

篠宮 柚葉

ねぇ~水ちょうだいよ~

鳴海 恭弥

絶対やだ

篠宮 柚葉

え~、まだ辛いんだけど

自然と二人で笑い合う

文化祭が終わり、後夜祭が始まり 生徒達は告白大会などで 盛り上がる

生徒会長

じゃあ次!佐野くん!

明石 涼

お、佐野じゃん

鳴海 恭弥

あー、まだ舌いてぇ…

ステージに佐野が上がる

生徒会長

佐野くん!
誰に思いを伝えますかー?

佐野 朝陽

ゆず

佐野はマイクを持つと 篠宮の名前を呼んだ

篠宮 柚葉

え?

明石 涼

やっぱそうだよなー

ステージに篠宮が上がり 佐野が篠宮と向き合う

佐野 朝陽

小さい頃からずっと好きだった
俺と付き合ってほしい

女子生徒

佐野くんかっこいい~!

男子生徒

がんばれ佐野!!!

生徒達は盛り上がる

生徒会長

篠宮さん、返事はどうでしょう

篠宮 柚葉

……よろしくお願いします

篠宮が佐野の手を握り 歓声が上がる

明石 涼

恭弥、取られちゃったなー

鼓動が高まり、胸が痛い

俺はきっと 篠宮柚葉に惹かれ始めてる

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