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ざわざわと人が動くあの朝の音を聴き流しながら駅を歩いていた。
いつものように、図書館へ向かうため。
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っ……ご、ごめんなさい……!
誰かとぶつかった。 咄嗟に謝ると半目開きだった相手の目が大きく見開かれる。
……え、なんで?
………キミ、本は好き?
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え、す、好きです……
……だったら、
僕はもうあの世界に必要ないから、この名前キミにあげるよ。
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え、あ、ちょっと……!
手に無理矢理本を押し付けられた。
普通の人なら、 なんだこいつ とか 警察に言いますよ とか 言ったんだろうけど、 不思議とそんな言葉は出なかった。
焦って、消え行く背中に手を伸ばして
まって、 そう引き留めた時にはもう彼の姿は無かった。 ただ少しの寂しさが“ボク”の中には残っただけ。
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……あれ、
ツェア
ボ、ク……?
小さく持った疑問は、知らない内に消えていた本と共に雑多の中に呑み込まれていった。
__快速列車、5番線にて貴方を探す
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