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医師に言われたのは、 たった一言だった。
医師
若年性アルツハイマー。
まだ32歳。
あまりに早すぎる終わりだった。
彼女に別れを告げようとした夜、 彼女は言った。
青
青
それが始まりだった。
1通目の手紙には、 今の自分の性格。
2通目には、 彼女と出会った日。
3通目には、 彼女の好きな食べ物。
10通目には、 ケンカして仲直りした時のこと。
25通目には、 プロポーズの場所について。
50通目には、 「記憶を失っても、 君は絶対に手を離さないって約束したよ」 と書いた。
そして__
99通目には、 涙でにじんだ文字で、 こう記した。
あと1通で、 全部を君に託すよ。 もう、 自分の名前を書くのに5分かかってる。
でも、 最後まで伝えたい。
未来の”俺”へ。 君がどれだけ素晴らしい人を愛していたかを
そして、100通目。
ただ、一行だけ。
震える手で綴った言葉が残されていた。
桃
数ヶ月後。
記憶の消えた彼は、 自分の部屋にあった100通の封筒を見つける
一通、 また一通と読み進めるたび、 心がざわめく。
名前も顔も思い出せないはずの男性の、 声が聞こえる気がした。
100通目を読み終えた夜、
彼は玄関に立っていた。
そして、 どこかで見たことのある男性に向かって言った。
桃
桃
彼女は泣きながら微笑んだ。
青
青
青