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_もしかしたら、 あいつが探してくれるかもしれない
なんの根拠もなく、 なんの確証もない
純粋無垢な淡い期待。
まだまだかわいい俺には
頭を空っぽにしてそんな事を 願うしかなかったのかもな
鳴らないスマホに不安を募らせて
止まる足を、 振り返りそうになる体を
揺れる瞳を 熱くなる目頭を
多分、
叶わないであろうこの期待のために
寒い外を薄着で走る。
_ああ
ケンカをした。
些細な痴話喧嘩。
あいつのデートの遅刻が多くて
不満を漏らしたら 変な言い訳してきて。
そこから少し長引いた。
思ってもいないんだろうな
言い返す気も起きなくて
開けた口を、閉じた
俺も大概だ
どれだけイラついても やっぱり恋人だから。
心の底では好きという感情が居た。
嫌い、だけど
この瞬間は大嫌いだけど
仲直りがしたかった
少しでも安堵している顔を見たら
俺に許されて嬉しいんだ、って
_また、居場所を感じてしまう
_いつもみたいに
流れで家に上がってしまった
脱いだ靴を揃えて、
巻いていたマフラーを解く
こんな取り繕ったみたいなベタな言葉で 心臓が跳ねる俺もどうかしてる。
やっぱり好きだ
_初めて不満を漏らした。
初めてのケンカだった。
互いに期待値の高い状態でケンカして
余計に腹を立てた
反省の言葉も 反省の顔色も
それを見てどうにか消化して
やっと割り切れた
やっと、割り切れたのに。
洗面台で顔を上げると見える、
見覚えのない化粧水
化粧水なんて、 あいつ使った事もないだろうに
いつもいつも、
俺だけで、
ほんっと、バカみたいだ。
乾いた、小さな嘲笑ともとれる笑いが 響いた。