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ほろり
はらり
落ちていく
小雨が
堕ちていく
時雨
鉄格子から聞こえる 淡く、儚げな小雨の声
ただそれは、今の私にとっては 耳障りにしかならない
静かに、じっと ただし、小雨の声を聞こえぬよう 耳を塞ぐ
その時、ガチャリと音が鳴った
村人
時雨
私は村人を見上げる
少しばかり、昔語りをしようか
これは、とある狐の神様と 愚かな巫女の契りの話
そう、この村、 鹿波沢には昔、鹿神様という 鹿の神様を祀っていた
鹿神様は雨を恵んでくださり、毎年畑も豊作であった
その為、村は穏やかであり、皆が平和に暮らしておった
だが、とある若者が鹿神様を祀ってある祠を壊し、鹿神様はこの村から離れてしまった
祠を壊したその夏、雨は降らなかった
秋、冬
雨は全くと言っていい程降らなくなった
その時、1人の村人は提案した
「祠を壊した若者を生贄にしてしまおう」
提案したその翌日、村人達は若者を拉致し、
深い、深い沼の底に 若者を沈めた
若者を沼へ沈めた瞬間、 雨が降り始めた
「雨が降ったぞ!」 「こりゃあありがてぇ!」 「鹿神様がお戻りになったはんや!」
だが、
雨が降ったのは、その日限りだった
そして、村人は次の提案をした
「この村の巫女に、鹿神様を連れ戻してもらおう」
翌日、巫女を先頭に村人達は祠の前へとまいった
「鹿神様、どうかこの村へ戻って来られませ。 このままでは、我々の村は滅んでしまう。」
その瞬間、巫女にのみ声が聞こえた
それは、冷たく、無機質に
「其方の要求、呑んでやろう ただし、 狐の嫁入りの日、、若い娘を沼へ沈めろ」
巫女は頭を下げ、その条件を 了承してしまった
そうして、毎年若い娘は 花嫁姿のまま沼へ沈められていった
後に、鹿神様の名前は移ろっていき、 今では狐火様になっている
そして、現在
私は今夜、沼へ沈められる
時雨
牢獄の中、花嫁衣装へと着替えさせられていく
村人達への恨みや憎しみ、 ないと言えば嘘になる
まだ生きていたい 色々な体験をしてみたい 色々なところを旅してみたい
でも、それはもう叶わないと、 花嫁衣装がそう語っているかのようにキラキラと光る
願っても願っても、それはもう叶わぬ、届かぬものなのだ
「ちょうど良かったわねぇ! あの不気味な娘が花嫁で!」 「本当よねー、あの髪色や目の色といったら、」
時雨
私は町娘達の会話を聞き流しながら、その時を待つ
もう、諦めてしまおう どうでも良いと、
その時、
薬売り
頭上から、透き通るような声が降りてきた
時雨
村人
村人の問いかけに、声の主は
薬売り
時雨
薬売りは口元を上げ、そう答えた
その姿は
とても
美しかった
村人
薬売り
薬売りはゆらりとそう答える
村人
村人は薬売りを鼻で笑う
薬売りは村人から視線を外し、 私に目を向ける
時雨
薬売り
村人
薬売り
村人
村人
村人
嘘だ。 殺そうとしてる癖に 私を気味悪く思ってるから閉じ込めているだけのくせに
薬売り
村人
そう言い、村人は出ていった
時雨
わ、私にお話なんて、、 い、一体、、
薬売りは私の前に屈み、目線を合わせる
時雨
私がそう開くと
薬売り
それはそうだろう。 毎年に必ず、若い女性が生贄とされているのだから
元々、この村には若い女性が少なかった為、生贄制度が出てからは さらに減少したのだろう
薬売り
時雨
薬売り
薬売りは様々な物を見せてくれた
不思議な薬の数々、とても綺麗な天秤、
時雨
薬売り
薬売りがそう答えると、箱がひとりでに開く
薬売り
時雨
私がそう繰り返すと、薬売りは頷く
薬売り
時雨
薬売り
薬売り
薬売りは退魔の剣を見つめながら、そう呟く
その時、
村人
村人が入り、私の腕を掴む
時雨
私が痛みに顔を歪ませると、薬売りが村人の腕を掴んだ
薬売り
村人
村人は薬売りの腕を振り払い、私を牢獄の外へ連れていく
時雨
私は一度だけ、薬売りの方を振り返る
薬売り
薬売りは、私に向けて微笑んでいた
まるで、大丈夫だと言っているような
その時、私の背中に札が貼ってある事に、今の私は知る由もなかった
しゃらん
どん
太鼓と鈴の音が私の鼓膜を震わせる
村人
村人
時雨
あぁ、終わってしまう
私のすべてが
でも、
時雨
初めて、楽しいと思えた
村人
村人達は私の背中を
押した
最後に聞こえたのは
「「お幸せにー!!!」」
無邪気に笑う、幸せそうに笑う村人達の声だった
ざぶん
おもい
くるしい
時雨
堕ちていく
おちていく
解放、されるのか
私が瞼を開いた瞬間
奥底から、何かが
私に迫ってきていた
時雨
あぁ、お迎えか。
やっと、やすめる、
私はゆっくりと瞼を閉じた瞬間
奥底の何かが、私の足元で止まった
時雨
その瞬間、私の体が上に引き上げられた
着物から大量の水が溢れ出す
時雨
私が呼吸をするのに必死になっていると、 横から透き通るような声が聞こえた
暖かく、どこか冷たい手が 私の背中を撫でる
薬売り
時雨
薬売り
時雨
私は声の主の名前を呼ぶ
薬売り
時雨
私がそう答えると、怒号や、悲鳴が聞こえた
村人
村人
薬売りは私を木にもたれ掛からせ、 退魔の剣を掲げる
薬売り
薬売りは沼を見ながら、
薬売り
カチンと退魔の剣が鳴った
薬売りは村人達に向き直り
薬売り
薬売り
薬売り
薬売りは退魔の剣を掲げ、
薬売り
薬売り
主
主
主
主
主
主
主
主