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悠哉
8月の日曜日、蝉の鳴き声が響く中、俺は荒川沿いの土手を歩いていた
荒川の野球場では、各面でちびっこ達やその指導者が野球に勤しんでいる
悠哉
俺は黒田悠哉。IT企業に務める しがないサラリーマンだ
小さい頃から野球をしており、プロをめざしてやっていたものの
24歳になった今となっては、小さい頃の大きな夢になってしまっていた
悠哉
悠哉
悠哉
悠哉
悠哉
悠哉
誰ともなしにつぶやくと、咳も出た
最近、やや身体がだるい。 体は丈夫な方なのだが…
悠哉
ふと、オンスタを眺めていると こんな通知が来た。
悠哉
悠哉
上原沙耶は高校の同級生で、 高校時代、1番好きだった相手だと 言っても過言ではない
今考えてみると、恋多き男だったなと 思えるくらいたくさんの恋愛をした
当時野球部に所属していた俺は 坊主でありオシャレにも無頓着
そんなむっさいだけの坊主に 振り向いてくれる女の子なんて なかなかおらず
ある子に告白しては振られ
一通り凹んだらさぁ次だとばかりに 他の人に告白して振られを 繰り返して来た俺だったが
沙耶ちゃんは何回振られても 諦めることが出来ず
当の沙耶ちゃんもわざとかは 知らないし、俺の勘違いかも しれないが
かなりあざとい、思わせぶりムーブを 仕掛けてきていたと思う
顔よし、スタイルよしのそんな子が 思わせぶりをしてきたら、 たとえ何度も振られていたとしても
モテない男(俺)が他の子なんて 見れるわけがない
俺の高校の恋心は沙耶ちゃんに関する思い出でいっぱいだった
そんな沙耶ちゃんは、今となっては 超売れっ子女優
ある朝ドラで大ブレイクして以来 ドラマにバラエティに 引っ張りだこだった
高校を卒業してからもう6年は経つが
正直、今でも沙耶ちゃんのことは めちゃくちゃ好きだと思う
大学では、それなりに高い身長と、 髪も伸ばし、それなりにオシャレにも気を遣うようになったことで
ある程度のルックスを手に入れ、 何人かの女の子と付き合っては 別れをしながら、それなりの 大学生活を送っていた
悠哉
と、カスみたいな独り言を呟きながら 川原を歩いていると
悠哉
空は晴れているが、 雨が降ってきたようだ
俗に言う、天気雨、というやつだ
俺の地元では 狐の嫁入り なんて言い方もしてたっけ
悠哉
当の俺は、雨に打たれて ビシャビシャになりながら 帰路につき始めた
龍輝
龍輝
悠哉
悠哉
悠哉
龍輝
悠哉
悠哉
三男の龍輝にLIMEを返しながら ぽつりと俺は呟いた
先月の末、俺は龍輝の高校最後の 試合を見に行った
全く他人の試合には 興味のない俺だったが
実の弟の最後の試合となると 小さい頃から キャッチボールをしていた兄としては 込み上げてくるものがあった
ゲームセットの声が響いてから 整列して挨拶をしてから
弟は号泣して顔を上げることが 出来なかった
その姿が当時の俺の姿と重なり 不覚にも、俺も涙した
そして、心底俺も6年前の この頃に戻り、もう1回 野球がしたいと思った
悠哉
悠哉
天気は未だに「狐の嫁入り」状態
傘も持ってない俺は 懐かしさに浸りながら、帰路に着いた
降りしきる雨の中 俺は弟の野球していた姿
そして6年前の自分の 野球している姿を重ね
なんとなく 物思いにふけりながら歩いていて
何の気なしにいつも通り
「いつもの曲がり角」
をぼんやりと、曲がった
悠哉
…ん?
いつもの角を曲がった時に 見える景色では無い
右側にあったセブントゥエルブは?
右側は窓…?ん…???
?
なんとなく、聞き覚えはあるけど 懐かしい声が聞こえた
下山
紛れもない、こいつは同じ高校で 同じ野球部で、同じ年齢の下山。 下山翔。
けど、なんでこいつ坊主で ワイシャツ(しかも高校の時の校章が付いてるやつ)着てんだ?
下山
は!?まてまてまてなんで トイレ掃除なん!?
なーんて言う間もなく、 相変わらずのゴリラみたいな力で 俺はトイレに連行された…
下山
健人
健人
下山
瑛太
と、俺は同じ野球部の、 これまた坊主に ワイシャツ姿の大島瑛太から 言われるがまま、便器を掃除する ブラシを受け取った
どうなってんだこりゃ
こいつらコスプレ 同窓会でもしてるんか???
と、ふと、水道の鏡が目に入った
悠哉
そこには、瑛太、下山と同じように ワイシャツに坊主の俺
口をあんぐりと開けた黒田悠哉の 姿があった…