科学が発展しているこの現代に、 妖怪は存在できるのだろうか。
正直生き辛いと思う。
そもそも住処はあるのだろうか。
自然とか古い家とか。
昔に比べて随分 破壊されているのだけれど、 その辺はどうなんだろう。
まあ、確かめる術は無いけれど。
そんなことを頭で考えている 僕の身体は今、歯を磨いている。
洗顔は先に済ませた。
しっかり目が覚めるから。
そして僕の背後には鏡越しに 変顔をしている少女が一名。
きっと鏡が物珍しくて 遊んでいるのだろう。
なんだか微笑ましい。
けれどもあくまで思うだけ。
顔には出さない。
そうしないとこの関係が 壊れてしまうから。
僕には彼女の姿が視えている。
けれども彼女は そのことを知らない。
だから僕は、出会った時からずっと 視えていないふりを続けている。
少女の正体は「表情童子」という 一種の妖怪だ。
名前は「エミ」で、人々を笑顔に する役目を持っているらしい。
表情童子は他にも何人かいて、 今の所エミを入れて 六人把握している。
あくまでも予想だが、 恐らくまだ数人いると思う。
なんというか、計十人程いても おかしくない気がするのだ。
根拠は一切無いが。
エミ
彼女が手を合わせたと同時に 乾いた音が鳴る。
すると気分が少しだけ 明るくなったように感じる。
周囲の人間を見れば皆笑顔だ。
これがエミの力。
彼女は人々を笑顔にする。
エミ
これが彼女の口癖だ。
エミ
エミ
エミ
初めてエミと会った時、 僕はそう言われた。
彼女の言う笠とか仮面については よくわからなかった。
ただ、彼女が僕を笑わせたい ことだけは理解した。
だから、敢えて笑わなかった。
否、笑えなかった。
コメント
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続き待ってました!✨ 関係を崩したくないからずっと無表情を保ってるかと思いきや、まさかの普通に笑えない、、、!? どんな展開になるのか次回が気になるなぁ、 投稿お疲れ様ー!🍵