テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺を助けてくれたのは、
彼だった。
真っ暗な暗黒の中、
何も聞こえない静寂の中、
酷く聞き慣れたような、憧れていたような、
懐かしい声を聴いていた時、
助けてくれたのはオーストリアだった。
オーストリア
ドイツ
家に帰り少しすると、彼が俺の前にお茶を差し出した。
ここは彼の家...らしい。
リビングは整っており、端にはピアノやホルンにオーボエなどの楽器が丁寧に置かれていた。
どうやら彼は音楽が好きみたいだ。
…ふと、お茶を飲みながら、
さっき目の前で起きたことを思い出す。
事前に感覚が遮断され放置されていても、
数日外に触れれば記憶は多少戻る。
かつての俺の神に憧れていた記憶や、
その神を汚してしまった記憶。
監禁された記憶。
…俺を監禁して放置したのは、
恐らく彼...オーストリアなんだろう。
かつての神にもきっと何かをした。
今は思い出せなくても、
数週間もすれば完全に思い出すことだろう。
だが、
別に良かった。
口ぶりや振る舞いからして、
恐らくイタリアは俺に会いたがっていた。
オーストリアは私情で俺とイタリアを離した。
それが真実かどうかは正直イマイチわからないが、
恐らくそうなのだろう。
彼は良くも悪くも素直だ。
いや、口にはあまり心情を出さないが、
顔や態度から大体のことは察することができる。
だからこそ、気がついた。
彼が俺に向けている感情の名を。
そしてそれは、
きっと俺もよく知っている感情だ。
__________独占欲。
俺はまだイタリアのことが好きだ。
だけど、それ以上に、
彼にしてしまった罪悪感と、
彼に抱かせてしまった感情を、
振り払うことはできなかった。
ならば、せめて俺ができるのは、
それらの罪滅ぼしだけ。
だからもう少しだけ、
彼の元にいたい。
…もう少し、
ほんのもう少しだけ。
ドイツ
オーストリア
オーストリア
ドイツ
急激に強くなる眠気。
イタリアと会って記憶が一気に蘇ったからだろうか、
すごく眠い。
浮遊感が生じる。
どうやら彼が運んでくれるようだ。
申し訳ないな...
オーストリア
目を瞑る直前の彼は、
仄暗い笑みを浮かべていた。
イギリス
イギリス
不意に、背後からイギリスの声が聞こえる。
…おかしいな、ここなら誰もいないと思ったんだけど。
イタリア
イギリス
少し淋しい瞳をしたイギリスは、ioの隣のベンチに腰をかける。
…なにかあったのだろうか。
イタリア
イギリス
まぁ、なにかしらあったのだろう。
それがなんなのかは聞く気も起きない。
イギリス
イタリア
イギリス
…まぁ、わからなくもないだろう。
今、手元に持っているものは、
それを連想させる代物だったから。
…ドイツは、あくまでioのものだった。
今までは。
だけど。
ドイツに会ってからもう数カ月も彼を見ていない。
職場に行っても、ドイツの家に行っても、オーストリアの家に行っても、
ドイツはどこにもいなかった。
…きっとまた監禁でもされているんだろう。
長い付き合いだから分かる。
あの時、記憶がないわけではなかった。
全てを思い出していたはずだ。
無論、根拠などはないが、直感で、
なんとなくなら分かる。
別に、あそこまでioのことを信仰していたなら、
あいつの言葉なんて振り払えるはずだった。
…それをしなかったのは、
監禁をほどいたであろうオーストリアに、
少なからず、感謝か依存か、そういう感情があったから。
ドイツは真面目だからね。
恩を受けたら、
それを返そうと必死になる。
…ほんと、
そういうところも好きだったのに、
今はそれが一番嫌い。
イタリア
イタリア
イギリス
イギリス
イタリア
立ち上がる。
もうここに用はない。
…今は誰もいないところに行きたい。
まぁ、その前にいかないといけないところが出来たけど。
イタリア
イギリス
僕は最後に、
ドイツの家へと向かった。
イタリア
精々、
"これ"が、お似合い。
イタリア
イタリア
イタリア
それは分からないが、
もういっぱいいっぱいだ。
イタリア
イタリア
イタリア
イタリア
彼の玄関前に17本の黒い薔薇を置いて、
ioはまたどこでもない場所へ歩いていった。
コメント
1件