堕ちるほど近くで

寝不足か、働きすぎか──頭が痛む

いつもなら冷静にこなせるはずの仕事も、今日はどこか重く、足取りも鈍い。

カチッ

夜の街。冷たい風が肌を刺す。

目の前の街灯が、ぼんやり揺れる。

でも──

鼻をかすめる、強い匂い。

胸の奥がザワつく。

理性で抑えようとしても、体が勝手に反応する。

──その瞬間、影が視界に入った。

高身長の男。黒い革ジャン、鋭い目。

その声。低く、響く。

αは肩をすくめるだけ。

笑みを作らず、ただ静かに要を見下ろすその視線。

強いαの圧が、肌にまで伝わる。

目の前のαが、自分にだけ反応している。

αの視線は鋭く、けれどどこか楽しげに揺れる。

ガッ

αが楽しそうな笑みを浮かべた。

体が言うことをきかない。

理性で必死に抵抗しようとしても、暁斗の存在に胸がざわつき、頭がぼんやりする。

その声に、心臓が跳ねた。

理性では説明できない、胸の高鳴り。

αは笑みを浮かべるでもなく、ただ静かに要を見つめる。

その視線が、要の全身を支配していくようだった。