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桃青
君を困らせる理由
ころんside
扉の隙間から光が漏れている。
やっと帰ってきた。
待っても待っても全く帰ってくる気配を感じないから、今寝ようとしたところ。
寝る気満々だったから、ベットから離れるのが惜しい..。
一応、僕は彼の兄だから「おかえり」の一言を行ってから眠ろう。
何だかんだでベットから降り、部屋の扉を開ける。
彼の姿は玄関にはなくて、左の部屋を覗けばソファーで呑気にスマホをいじっている彼の姿があった。
全くこいつは..。
「おかえり、さとみくん」
「ん、ただいま」
相変わらず、さとみくんの目線は画面に向けている。
素っ気ない態度だが、僕の返事を返してくれるため、兄弟としての会話は成り立っている。
おかえりとだけ言って寝ようとしたけどやめた。
代わりに、僕も彼の隣に座って言う。
「また、夜遅くまで..、、そんなに欲求不満なわけ?」
答えてはくれないだろうなと思いつつ、彼の返事を待つ。
「そんなんじゃないけど、いやそういうことなのか..?」
「なんだろーな、一回始めたら辞められなくなっちゃって。」
意外にもすんなり答えてくれた。
「いじめるの楽しくない?」と後付けに言ってきた。
..ドS野郎。
「女の子が可哀想。トラブルとか辞めてよね。面倒臭いから」
「へいへい、分かってるって」
さとみくんのことだからそこの点はしっかりしてるんだろうなって..。
横目にさとみくんを見れば「なに..、ジロジロ見んな」とすぐにバレてしまった。
「ねえ、さとみくん」
「なに、?」
「せっくすって気持ちいの?」
僕は思ったことを聞いただけ。
何に引っかかったのかは知らないが、さとみくんは咳き込んでむせていた。
落ち着いたかと思えば、
「え、?兄ちゃんそういうことしたことないの..?」
と、心配そうに僕を見ている。
その目がとてつもなくうざい。
彼女を作ったことは何度もあったけど、一線を越えたことは一度も無かった。
その悔しさを紛らわすように僕はしつこく聞いた。
「ねえ、どうなの」
「んー..。内緒」
「は、なんでよ」
「..まあ、やり方とかそういう流れなら教えてやるけど、?」
有難いようなそれではないような。
ん、?疑問を持ったことが一つある。
「教えるって..、その..男同士で出来るの、?」
ぶほっ、と何かを吹き出した音が隣からした。
珈琲吹きやがって..、
げほげほ、と苦しそうに咳き込んでいるさとみくん。
「あのねぇ、ころんくん..」
久しぶりにさとみくんが僕の名前を呼ぶの聞いたな。
「あ、!じゃあ、僕がいつでもそういうこと出来るように、さとみくんで練習してもいい?」
そして、また珈琲を吹き出した音が聞こえた。
さとみside
俺が夜遅くに帰ってくるわけは、二年ほど前からの兄への恋心からだった。
まさか、実の兄に恋心を抱くなんて思いもしなかった。
びっくりだったよ。
俺が高校二年の時に兄のことが好きっていうことに気づき、しばらく自分が信じられなかった。
その日はボーッとして、何も考えられなかった。
考えることがあれば兄、兄、兄。
全部、兄ちゃんが出てきた。
頭が痛いほど、兄ちゃんのこと考えさせられた。
帰路を辿ったつもりが、いつの間にか隣の隣町まで来ていて帰る時間が遅くなった。
家のマンションの前に着けば兄ちゃんの姿が見えて、
俺に気づいた瞬間、走って抱きついてきたんだ。
さとみくん、さとみくん、って何度も俺の名前を呼びながら。
無事で良かったってわんわん泣いて。
こんなに心配されてたんだって。
逆に、兄ちゃんはこんなに俺のことを思ってくれたんだって。
両親は俺が小学生の時に亡くしたから、兄ちゃんと俺でずっと支えてきたんだ。
「寂しかった?」
って聞けば、
「ばか、心配させんな、」
って言ってくれた。
終わりに、消えてしまいそうな小さな声で「寂しかったよ..」って言ってくれたことを俺は聞き逃さなかった。
それが嬉しくて嬉しくて、
俺、そんとき恋に溺れて頭がバカになってた。
その日から兄ちゃんを心配させるように、家に帰る時間を少しずつ遅くしていった。
たまに怒られる日もあったけど、俺は辞められなかった。
毎日、遅くに帰っても必ず「おかえり」と言ってくれた。
今日だって、もう寝るつもりだったんだろうけど「おかえり」って言ってくれた。
兄ちゃんは優しいなって、毎日そう思った。
実際のところ、俺は夜にオンナと遊んだりのことを一切してない。
ただ、街の中をぶらぶら歩いてるだけ。
ショッピングモールに行った時は、いつも あれ兄ちゃんに似合いそうとか兄ちゃんしか頭に浮かばないから、
行くのを辞め、街の中を歩くことにした。
勿論、考えてることは兄ちゃんだからどっちにしろ意味が無い。
そして、いつの日か..兄ちゃんには俺がオンナと遊んでるという認識がついてしまった。
まぁ、否定はしなかった。
兄ちゃんが俺のことを想ってくれるだけで嬉しかったから。
せっくすとか..、彼女とかしかやらねーって。
まあ、全員別れたけど。
俺には兄ちゃんしか見えねぇから彼女なんていらないと思ったのがこの二年間。
さっき、兄ちゃんに「欲求不満」と言われたが間違ってはいない。
性欲は俺にとって敵だ。
男同士っていうのも問題。
兄ちゃんはどう思うのだろうか。
そして今日、兄ちゃんが行為を一度もしてないことを知った。
一、二年前、彼女が出来たって言って俺の嫉妬心を燃えさせられたっけ。
合わせて、四、五人ぐらい彼女がいた気がする。
だから、一度もないということに凄く驚いた。
その前に、一人一人の付き合っていた期間が短かったことからすると納得はいく。
モテ顔というよりカワイイ系の顔でモテていた兄ちゃん。
いや、それモテ顔やんけ!!
まあ、コイツの性格見ればオンナは着いていけないだろうな。
自由人過ぎて。
一番早くて、三週間で別れたって言ってたな。
兄ちゃんが経験がないからって襲おうと言う考えは一切してない。
大事なヤツが傷付く姿見るのは嫌だからな。
なのに、コイツと言ったら..、
「男同士で出来るの?」
とか
「さとみくんで練習してもいい?」
とか訳の分からないこと言い始めるし..。
純粋にも程がある。
でも、俺にとってはこれは好都合だったから、取り合いず承認を得た。
「で、俺をどう使おうってわけ?」
一応、兄ちゃんを俺の部屋に連れ、
俺はベットで横になりくつろぐ。
「え?さとみくんが教えてくれるんじゃないの、?」
「馬鹿言え。お前が俺を練習台にするとか言い出したんだろ」
その前に俺が教えてやると言ったが、兄ちゃんは気づいてないだろう。多分。
..なんか、今からこの目の前にいる純粋ちゃんが黒く染まるんだなと考えると申し訳なさが現れる。
「どういう感じでやるのか分からないから教えてって言ってるんだよ、!」
「あー、じゃあ自分が思うこれを俺に見せてみ?」
「..からかわない?」
俺をなんだと思ってる。
「場合による」
俺も俺だな。
一瞬、ムッとした表情を見せたがすぐに表情を戻し、ベットから立ち上がった俺にぎゅっとハグをしてきた。
急すぎてドキッとしたが、なんかこう..。
男のハグじゃないというか。
可愛いハグ??
ツッコミたいことは山々だが、俺は“ころん”の人形になるのを続ける。
ハグの次は、グッッと俺の胸板を押しベットに押し倒される。
オンナでこれやったらマジでキレられるぞ。
その代わり、初初しいその姿はとても可愛かった。
前を向けば、天井ところんが見える。
赤面の..ころん、
「は、っ顔真っ赤じゃん」
「うるさいっ!!」
「僕のこと、からかわないって言ったもんね、」
「僕のことこれ以上からかったらキス..するから..。」
今度は俺の顔が熱くなるのが分かる。
ころんは数センチギリギリに顔を止めてるが、俺が頭を少し持ち上がるだけでそれはもうくっ付いてしまう。
「さとみくん、真っ赤だね」
俺の中で何かが吹っ切れたような気がした。
プライドというか、ころんにそれを言われたくないというか。
「お前、言ったな?」
俺は少し頭を上げ、ころんの唇を奪った。
ころんはこの状況に酷く驚いている様子。
俺からキスをされるのは想定外だっただろう。
唇を離さないまま、ころんの腕を引き、俺がころんを見下ろす位置とする。
唇を離せば、頬が赤く染まる愛しい彼の姿が映る。
「なに..、してくれちゃってんの、」
「俺をからかった罰」
僕がいつからかったと言わんばかりの表情。
ほんと、無意識のやつ。
ころん、
俺がお前を一生大事にしてやる。
ころんが傷付いたらその傷を俺が癒すから、
だから、ころん..、俺のワガママに付き合って。
「今から、選手交代」
「俺が手本、見せてやるよ」
いいね❤沢山ください🥺🥺
もう一回読めば最初の桃くんの言葉の意味が意味深になるかも
『一回始めたら辞められなくなっちゃって』
『いじめるの楽しくない、?』
コメント
38件
ブクマ失礼します🙇♀️✨️
ぶ!く!ま!し!つ!れ!い!し!ま!す!🎶