朔斗(さくと)
はぁ…
7月8日
今日は、妻の命日だ。
娘は、きっと今年も来ない。
そう、思っていた。
菜々花(ななか)
やっぱり、ここに居た。
朔斗(さくと)
!
朔斗(さくと)
菜々花…?
菜々花(ななか)
電話したのに出ないからここだと思ったけど…
朔斗(さくと)
電話…?
朔斗(さくと)
珍しいな、お前も墓参りか?
菜々花(ななか)
珍しい?
菜々花(ななか)
お母様の墓参りは、毎年来てるわ。
菜々花(ななか)
お父様の居ない時間に。
朔斗(さくと)
…そうか
菜々花(ななか)
…ねぇ、お父様。
朔斗(さくと)
ん?
菜々花(ななか)
私、さとみくんっていう好きな人が居るの。
菜々花(ななか)
まだ、告白してもないけど…
朔斗(さくと)
…そうか、それがどうしたんだ?
菜々花(ななか)
だから、お見合い結婚もしたくない。
朔斗(さくと)
はぁ…
朔斗(さくと)
財閥が困るんだが?
菜々花(ななか)
知ってる
朔斗(さくと)
…分かった、もう好きにしなさい。
菜々花(ななか)
ありがとう、パパ。
菜々花(ななか)
バイバイ
朔斗(さくと)
じゃあな、菜々花。
菜々花(ななか)
ごめんね、さとみくん。☺
さとみ
いや、全然良いよ。☺
朔斗(さくと)
(好きな人か…)
朔斗(さくと)
(もう、そんなに大きくなったのか…)
朔斗(さくと)
(それに…)
朔斗(さくと)
「パパ」か…
朔斗(さくと)
幼少期は、よくそう呼んでくれてたよな。
朔斗(さくと)
菜々花、大きくなったよな。
朔斗(さくと)
…なぁ、七海。
朔斗(さくと)
…もう、見守る必要はないのかもしれないな。
返事なんて返ってくるわけないのに…
「そうね」と、妻の優しい声が聞こえた気がした。