和斗
…あつ
ジリジリと 照りつける 日差しが疎ましい
和斗
よりにもよって
和斗
何でこんな日に…
重たいショベルで 地面の土をザクザクと 掘りながら愚痴を零す
凌
不満ばっか言わないでよ
も〜
も〜
凌
和斗につられて俺まで
やになっちゃうじゃん!
やになっちゃうじゃん!
同じく土を掬いながら 凌がこちらに呼び掛ける
和斗
嫌じゃねーよ別に
凌
え〜?
だって文句ばっかだよ
さっきから
だって文句ばっかだよ
さっきから
凌
そもそも
今日がいいって言ったの
和斗なのに!
今日がいいって言ったの
和斗なのに!
腹を立てたように 捲し立てるが その口調は軽い
和斗
だって、今日は
和斗
…だろ
凌
え?
なーに?
なーに?
和斗
…お前の誕生日だろ
凌
…っえ
凌
そうだっけぇ…
和斗
いや覚えてないのかよ
凌
和斗に言われるまで
忘れてた
忘れてた
凌
…ありがとね、へへ
へらへらと笑いながら 空を見上げる凌
凌
ほんとあつーい
凌
…こんな日にごめんねぇ
和斗
…良いよ、別に
穴が掘り終わってから 近くの自販機で ソーダを買って
夜が来るのを待った
ザッ ザッ
和斗
(…あつい)
ただでさえ気温の高い中で
長時間ショベルで 土を耕す俺の周りには 熱気が立ちこめていて
和斗
(事前に掘っておいて
良かった)
良かった)
和斗
(ただ
埋めるだけでも)
埋めるだけでも)
和斗
(こんなに大変なんだな)
和斗
(凌)
穴の中で眠る凌は もう土に覆われて 見えなくなっている
和斗
(こんな暑い日に)
和斗
(アホ)
和斗
(考え直せよ、バカ)
和斗
(なんて)
和斗
(俺のエゴだし)
和斗
(お前が殺して欲しいって言うなら)
和斗
(殺してやりたいと)
和斗
(思ったんだよ)
和斗
(…くそ)
和斗
(何が正解だったのかなあ)
和斗
(あつい)
和斗
(あついよ、凌)
目頭に熱が込み上げて
ぼろぼろと 零れ落ちる
ああ
どうしてくれんだよ
暑くて
熱くて
しょうがない
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コメント
3件
冒頭の「よりによってなんでこんな日に」は、「なんで今日に限ってこんなに暑いのか」の意味だったんですね…… 相手の希望を最優先にしたからこその結末…… 切ない……