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言って真正面から彼女に向き合う。抱き合っているのだから顔はお互いの間近にあるのを意識せざるをえない。

 ひみかの顔を見ると軽く赤くなり上気しているのが見て取れるが、それが体温の上昇によるものかそれ以外の意味があるのかはうかがい知れなかった。

ひみか

ふふーん、そんな事言って。本当はお姉ちゃんにだっこされて甘えられるのがうれしいんじゃないの?私にとってあゆみは可愛い可愛い弟分だからね

あゆみ

(どこまで本気でいってるんだろう。照れ隠しならまだいいけど……いや、男としては見れないよって言う遠回しの意味だったら)

彼女が親元を離れ一人この百鬼夜荘にやってきたのは小学校に上がる前の事。  亡くなったあゆみの祖母が面倒を見る形で百鬼夜荘の一室に住んでいた。  とはいってもほとんど同じ敷地内だし食事だってほとんど一緒にとる。お互いの住む部屋に交互で行って、一緒の布団で寝たこともしょっちゅうだった。

 家族であり一番近い幼馴染というポジション。  でも、あゆみが彼女に抱く感情はそれだけじゃない。はっきり恋愛対象として好きだと自覚している。彼女にも同じ気持ちでいて欲しいとも願っているが、

あゆみ

ぼ、僕はそんなの認めたくないんだけど

ひみか

どうして?私のこと嫌いになったとでもいうのかい?

あゆみ

嫌いなわけないじゃん

ひみか

じゃあ、なぜ嫌なんだい?私は君にこんなに愛情を注いでいるのに

あゆみ

だから頭撫でるのやめてってば

あゆみ

いや、嫌いじゃなくてむしろそれと逆というか……

ひみか

ふーん、逆って?

 ひみかはいたずらっぽい表情でニヤニヤ笑いながら撫でる手を止めた。 そして自分の気持ちをしってか知らずか 見下ろしながらまっすぐ見つめてきている。

あゆみ

ぎゃ、逆は逆だよ。そ、それよりさ、助けてもらったとは言ったけど、ちょっとやりすぎじゃない?いきなり氷漬けっていうのは

ひみか

ふん。あの状態じゃ言葉でいったって無駄なんだよ。私も前同じ様な目に……

あゆみ

え、じゃあ身体中なめられちゃったりしたわけ?

あゆみ

(こ、この身体があの長い舌でベロベロと……って、ああ、考えちゃだめかも)

ひみか

あ、何か変な想像してるだろ。さ、されてないよ。さっきと同じように対処したさ

あゆみ

べ、別に変な想像なんて……

ひみか

くしゅん、、、

 先ほどから平静を装っているものの、彼女もやはり年頃の男女が抱き合っているというこの状況を意識しているのだろうか。 心なしか前より顔が赤いままだ。徐々に暖かくなる彼女の感触は余計な想像を更に掻き立てそうになる。 まずい、なんとか気を紛らわさなければ。話題話題。

あゆみ

そういえば、子供の頃は能力をしょっちゅう暴走させてたよね

ひみか

ああ、まだ、未熟だったからね。コントロールの仕方も分からなかったし

あゆみ

ははっそうだ。初めてここに来た時なんかお風呂場全面に凍らせちゃったっけ

ひみか

あれは、だって、初めての熱いお風呂でさ。びっくりしちゃったんだもの

 冬の寒い日の出来事。雪国生まれの彼女を連れて冷えた身体を温めようと祖母はひみかと一緒に風呂場に入ったのだが、

あゆみ

幼心に覚えてるよ。凄かったよね。浴槽一杯のお湯から床、壁、天井水道管ガス管全部凍りついちゃってさ。巨大な冷凍庫みたいになっちゃってね

ひみか

そ、それをいうのは止めてくれよ。あの事は思い出したくない。子供の時とはいっても凄く迷惑かけちゃったのは記憶してるんだ

 彼女の身体は本来熱さにも耐えられるし、 風呂にも普通に入れるはずだった。  しかし、雪女の母は熱い風呂には当然入れない。父親も温めのお風呂が好きだった。だから彼女の実家では熱いお風呂に浸かるという習慣がなかったのだ。お風呂自体もそれほど広くはなかった。  そこへきて、普通よりは大きな百鬼夜荘の共同浴場に熱々のお湯がなみなみと張られた浴槽に入った幼い彼女は、パニックを起こし、 能力を暴走させてしまったらしい。

あゆみ

気にしなくていいんじゃない?あの段階で相当古かったし、気にしないでいいって婆ちゃんも父さんも母さんも言ってたし

 寧ろ風呂が新しくきれいなものになって住人は喜んだ。ナメ山アンリだけは古いままがよかったと残念がってたようだが。

ひみか

それは結果論だよ。自分のせいであんなにしちゃったって思うとさ、大変な負担かけちゃったなって、今でも夢に見ることがある

あゆみ

でも、婆ちゃんは連れてくるときにああなるって予測してたみたいだよ

ひみか

多津乃おばあちゃんがそういってたのかい?

 そもそも彼女をここ、百鬼夜荘に連れてきたのは、あゆみの母方の祖母である、金鞠多津乃(かなまりたつの)だった。

百鬼夜荘 妖怪達の住むところ

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