ユキ
用意していたショルダーバッグを持って 勢いよく家を飛びだした午前2時
電車もバスもとうにないので 大通りに出て何分か待った後 たまたまやってきた 赤いタクシーを拾った
「大井町駅前までお願いします」 そう言ったあと 私を乗せた赤いタクシーは 彼の家まで走り始めた
ユキ
ハル
ハル「ねむそ笑」
ユキ「もうすぐ3時」
ハルの部屋に入って上着を脱ぐと ハルがそれをハンガーにかけてくれた
今日はやけに優しい
ハル「ごめんね、寒かったでしょ。お風呂沸いてるから入っていいよ」
ユキ「ん」
ハルの家のお風呂場からは ハルから香る全ての匂いがして もうすぐ3時になると言うのに どんどん目が冴えていった
ユキ「お風呂ありがと」
ハル「いいえ〜」
ハル「乾かしてあげるよ」
ハルに手招きされるがまま 私はソファとテーブルの間に座り ハルはドライヤーのスイッチをいれた
こういう時可愛く 「ありがとう」とか言えたなら ハルも、私の事を少しは…
ハル「熱くない?」
なんて考えてたら ハルの顔が真横にきて
ユキ「んーちょっと」
全然熱くないのに また可愛くのないことを 言ってしまう自分
ハル「こんなんでいい?」
ハルがドライヤーのスイッチを切ると また緊張が戻ってきて
それを隠すように欠伸をしてみせた
ハル「おいで」
やさしい声が私の名前を呼んで 心のどこかでひりついた部分が 力なく溶けだしはじめた
ユキ「寒かった」
ハル「ごめんごめん」
真冬の夜中に布団の中で 抱きしめ合う男女を 世間はなんと呼ぶのだろうか
ユキ「ん…」
何度も何度もキスをして キスの種類が分からなくなるくらい めちゃくちゃになり始めて
ハル「もう、いい?」
私の中でハルが果てて 外ではカラスが鳴き始めた
昨日と今日のあいだ
ハル「俺、昨日 好きな子と一緒にご飯行けたんだよね」
生産性の無い幸せと 無駄な昨日が終わった
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