コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ぬし
ぬし
ぬし
真由
高校の工作作業室の入り口で、真由と亮を待っていた圭太は、真由の五歳年上。
「まちづくり工作クラブ」の部長だ。
今日は、部員は来ていない。
圭太は、二人を見つけると、人差し指にぐるぐると包帯を巻いた左手を上げた。
右手には大きなカッター。
亮
亮も思わず立ち止まる。
圭太
圭太兄ちゃんが白い歯を見せる。
四角い顔、眉が太い。
真由に全然似ていない。
圭太
圭太
兄弟揃って、強引。
亮
亮は思わず笑ってしまう。
亮
亮は、真由に続いて工作室に入ると、素早く中を見回した。
巨大な三角定規、のこぎり、何本ものカッター、ビニールテープ…
床にも棚にも、いろんな道具が置いてある。
壁には大きな地図。
接着剤の匂いがする。
真由
真由のうわずった声に、圭太の太い声が被る。
圭太
圭太
圭太
模型と聞いて、亮は思わず身を乗り出す。
部屋の真ん中に、腰の高さくらいの台に乗った巨大な白いボード。
その上に、発泡スチロールでできた大小様々な家が、道に沿って並んでいた。
家も道も橋も川も、みんな、白。
圭太
圭太
圭太は、目を見開いたままの亮に、笑いながら声をかける。
圭太
圭太
圭太
圭太の言葉が終わると同時に、真由が得意そうに言った。
真由
真由
亮
亮も思わず呟く。
亮
川と橋と三角州。
亮はもう一歩、模型に近づく。
真由
真由が言った言葉に亮は驚く。
亮
圭太が、包帯を巻いた指をぴんと立てた。
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太
わきのテーブルには、昔のまちの、住人の名前や屋号がぎっしり書き込まれた地図と古い写真、復元CGのプリントアウトが広げられていた。
平和公園は、初めから公園なんかじゃなかった。
亮は、額の汗を手の甲で拭う。
真由
真由のあの時の声が耳元で聞こえる。
圭太
圭太
そう言うと、圭太は二人に説明を始めた。
まず、平和公園の地図の上に、トレーシングペーパーに写し取った昔の地図を重ねて、頭の中を整理する。
次に道路や空き地、大きなお寺などの位置を確認してから、道に沿って小さな家を並べていく…
圭太
と、圭太は気どって言った。
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太はそう言うと、真由と亮を代わる代わる見つめた。
真由
真由
真由
真由
真由が昔の地図に書かれた店を一つ一つ声に出して読み上げる。
色々な職業の、年齢も様々な人達がここに居た。
公園じゃなくて、まち。
亮にもそれは理解出来た
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太
圭太が模型のまちの路地を指でたどる。
真由が黙って頷く。
亮
亮
亮は思った事を口にした。
圭太
圭太
二人は圭太の言うとうりに、黙々とカッターを動かし、白い家を作って、お寺の東どなりに置いた。
あの日、消えた真由のひいじいちゃんの家。
あったはずの家…
模型のまちは、二人が手伝った一ヶ月後に完成した。
秋の文化祭に展示するまで、模型は工作室に置かれている。
色は塗られず、白いままで。
亮は真由と一緒に、それを見た。
白いまちには、こんなにいっぱい家があった。
けれども、亮の中で、まちは目の前の模型でしかなく、白いまま眠っていた。