コメント
56件
凄い感動した…! 最高だったよ!
コメント遅くなってすいません。コンテストに参加して頂きありがとうございます。虐待をする父親、最低な人ですね。僕にとって、彼女は光だったと考えると、この結末は凄く切ないです。彼女は、僕の事をずっと待っていたんでしょうね。だから、手紙を隠した.......良い話、過ぎますよ。笹舟と思い出を重ねた、表現が凄く好きですw
フォローありがとうございます!( *´꒳`*) 他の方々のコメント欄でたまに見かけてまして…丁寧な方だな、と勝手に好印象抱いてました()
拝啓、いつかの君へ。
君は。
あの日の事を。
そして…。
私の事を。
覚えているかな…?
私は、この先。
ずっと、ずっと…忘れない。
たとえ君が 忘れてしまったとしても…。
…勿論、僕は忘れないよ。
今でも、時々。
君の事を思い出して 何度も何度も。
この手紙を読み返している…。
僕は父と2人暮らしだった。
父
父
僕
僕
父と母は離婚した。
…そして、僕は父を、 妹は母を選んだ…。
それから。
父は僕に八つ当たりするように なった。
僕が何か言えば、 父はすぐに僕を殴った。
…人目につかない、 お腹をあえて狙って。
そのせいで。
僕の身体はアザだらけで ボロボロになっていった…。
…でも。
僕はもう、耐えきれず。
コンビニに行ってくる、と 嘘をついて。
家出をした。
僕
僕はただ、走った。
ただがむしゃらに、走った…。
どこに行くかなんて、 考えてもいなかった…。
しばらく走って、気がついた。
僕は1人では 生きていけない事。
僕はお金を持っていない事。
だから。
僕はまたあの家に戻らなくてはならない事。
しかし、僕はまだ 知らなかった。
これから君と出会える事。
…そして。
この日が僕と君が会う、
最初で最期の日…という事…。
…気がつけば、僕は 山の中にいた。
喉が渇いている事に気づき、
必死で川を探していた…。
…音が聞こえる。
優しい水の音…。
…水…。
…飲ま…なきゃ…。
僕はふらふらと 水の音を頼りにして
歩いて行く…。
見つけた…。
僕は滝を見つけて すぐさま手に取る仕草をする。
しかし、水は僕の手から 零れ落ちて行く…。
僕はそれを必死になって 掴んで、喉の潤いを取り戻す。
君
君
少し茶色が混じった黒髪。
小麦色に焼けた、 少しヤンチャな肌の色。
そう、君と出会った…。
君は僕に笹舟を差し出す。
その笹舟は、若草色で。
太陽の光を浴びて、 きらきらと輝いていた…。
僕
僕
君
君
僕
僕は知らない女の子である君に 不安を感じながらも
君の押しに負けて、 必死について行く…。
君
一分後。
着いたのは、美しい 清流が流れる、山滝川。
君
君
僕
僕は笹舟を差し出す。
君はそれを受け取る。
その間、僕の手と君の手が 微かに触れた…。
君
君は笹舟を川に流してしまう。
笹舟は川を流れて行く。
清流の流れのままに。
まるで、父に逆らうことが 出来ずに…
父に言われるがままに 行動する、僕みたいだ…。
そんな事を想う僕とは裏腹に
君の目は輝いていた…。
君
僕
君
僕
君
君
君
君
君は笑顔で答える。
…本当に、こんな僕が 素敵だと思うかい…?
身体はボロボロで、 アザだらけで。
それでも平気なフリをしてる、 こんな僕は…
本当に素敵かな?
それから、ずっと2人で 遊んだ。
…楽しかったな…。
こんなに楽しかった思い出は、何年振りかな…?
そしてついに…。
黄昏時。
…そろそろ、戻らなくちゃ…。
僕
僕
君
君
君
君
僕
君
君
君
僕
僕
君
君
僕
こうして僕は君に最初で最期の 別れを告げた…。
本当は、家に 戻りたくなんてない。
…けど。
僕は、1人では 生きていけない。
だから、家に戻るんだ…。
僕
僕
父は無言だ。
この時僕は、
初めて無言の恐ろしさを 知ることになった…。
父
父
僕
僕
父に逆らえず清流を流れる 笹舟の僕。
ああ、また君に会いたい。
そんな願いは儚く消え去る。
父
父
父
父
僕
父
僕
ごめんね。
君に、会いに 行けなくなった…。
あれから5年後。
父は亡くなった。
僕は、父に涙を流すことが できなかった。
僕は父が嫌いだから。
葬儀を終えて、僕はふと 思い出す。
あの日の事、君の事。
…僕は最低な息子だ。
死んだ父の事よりも、君の事を考えているんだ…。
行こう、かな…。
考える前に、足が動いていた。
僕
…着いた。
それと同時に
あの日の記憶が蘇る。
少し茶色が混ざった黒髪。
小麦色に焼けた、 少しヤンチャな肌の色。
優しい水の音。
…しかし、君は居なかった。
何処を探しても、居なかった。
その代わり、 1つの物を見つけた。
あの時の、笹舟…。
その上に、石が置かれていた。
若草色だった笹舟は、 いつのまにか色褪せていて。
大切な思い出さえも色褪せて しまったように感じた。
…でも、きっと君は 忘れてなんか居ないだろう。
僕は石を置いて 笹舟を手に取る。
すると…
笹舟の下に、小さな手紙が 隠れていた。
「拝啓、いつかの君へ。」
その文字は。
なんだか少し、
僕と似ている気がした…。