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灰谷 蘭
夢の中
夢。また夢を見てる。
雪はやみ始めていたけれど、 まだ小さくてきらきらした 白い破片が宙を舞っている。
俺は近くの公園に向かって走っている。
その角を曲がればすぐ公園が見える。
公園の片隅で、お父さんが大きな背中を 丸めて何かを作っているのが見える。
「お父さん!」
俺の声に気づいたお父さんがゆっくり 振り向いて、笑う。
「蘭か、見てみろ!」
そう言ってお父さんが体に隠すように していたものを俺に見せる。
不格好な雪だるま。
「雪だるま…?」
「この辺じゃこんなに雪が積もることはめったにないし、蘭は雪だるま見たことなかっただろう?だから、ほんものを蘭に見せたかったんだ」
お父さんはにこにこしながらそう言う。
でも、その雪だるまは雪だるまというには なんだか不格好で、なんだか不細工で。
それが可愛くて、俺は笑ってしまう。
「なにかおかしいか?」
「だってお父さん、それ、雪だるまに見えない」
「正真正銘の雪だるまだぞ」
「だって、雪だるまって、ほら、目が黒い石とかがはめてあって、鼻はにんじんで、頭にバケツとかがぶってるじゃない」
灰谷 蘭