あの日
僕は君に恋をしていた
片思いだった
華やかに笑う君は
まるでスポットライトが 当たったみたいに
明るく見えて
気付けばいつも 目で追っていた
君が口角を上げると
僕も自然に笑うことができた
ある日
僕は君に告白をした
僕
僕
たった二言で熱くなる僕の頬
果たしてこれでも僕は 君を守れるのだろうか
今更ながらそんな不安が 胸に宿った
君
君
僕
君
あの太陽のような笑顔が
目の前に見えた
僕
もっと言いたいことはあるのに
もっと堂々と言いたかったのに
消え入りそうな か弱い声になってしまった
君
君
薄く笑った顔
逸らした瞳
紅色の頬
僕
僕も釣られて
笑った
ある日
僕は君にプロポーズをした
ある高級レストランでの事だった
僕
告白したあの日のように
緊張と恥じらいで 顔の熱が上がった
君
泣きながら頷く君
ホッとしたのか 僕の目からも涙が出た
君
片思いしたあの笑顔で
君が笑って
僕
応えるように僕も笑った
あの日
僕と君は結婚式を挙げた
爽やかな初夏の風が吹く 6月だった
青空に映える 美しいウェディングドレスだった
君
そう言いつつも
幸せそうな笑みをこぼす君
僕
君
僕
僕
君
一瞬で頬を赤く染めた
僕
好きだな。
そういう素直なとこ。
君
口を膨らませて
ムッとする君
それとは相対的に
僕は幸せいっぱいの 笑顔が浮かんだ
ある日
僕との間に子供が産まれた
とても可愛い長女だった
丸い瞳が君とよく似ていて
愛くるしい声で泣いていた
僕
僕
思わず呟くと
君
その子を抱いて
自慢気に微笑んでいた
母の顔だ、と思った
僕
僕
なんとなく呟いた言葉
君
全てを察したように頷いていた
この夏できた新しい家族に
夫婦揃って微笑んでいた
あの日
僕たちの子が家を出た
少しシワの増えた君は
泣きながらも誇らしげに 笑っていた
幸せそうな 顔だった
僕
思わず嫉妬して呟くと
君
呆れながらもやっぱり
目を細めて口角が上がっていた
君
君
迷いのない表情で
誰よりも幸せそうだった
僕
僕は
照れながらも 少し嬉しかった
今日
僕の心臓が止まろうとしていた
君
君
君は僕の前で
初めて悲し涙を流す
僕
君
君の頬に触れると
目からの水滴で濡れていた
暖かくも
冷たい涙
あーあ…
泣かせちゃった
僕
君
僕は君が泣かないようにと
精一杯笑った
僕の伝えたいこと
君にちゃんと言わなくちゃ
僕
君
僕
言葉を遮って僕は続ける
君は納得したように頷いていた
僕
僕
僕
僕
途切れそうな声を
何度も張り上げた
僕
僕
そうなんだ
君の表情筋と僕の表情筋は
まるで連動してるみたいで……
僕
僕
君
あぁ…やっとだ
やっと笑ってくれた……
あの頃よりシワの増えた君
それはきっと
名前のとおり 「笑いジワ」だろう
僕
僕
君
悲し涙を流しながら
それでも幸せそうに笑っていた
良かった
良かったよ
最期に君の笑顔が見れて良かった
また、来世で
僕を笑わせてね
僕
その言葉を最期に
僕の目は二度と開かなくなった
コメント
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何なんですか神様ですか?涙腺崩壊しちゃいましたよぉぉぉぉぉ! 生きていって、こんな生涯一緒にいる人に出会えたらいいなぁ…。
やばいです涙腺崩壊です😭 素敵な作品読めて幸せですっ!
ですよね…幸せな人生がいいです