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仙石 伊澄
オレは扉にかけられた一枚の絵画に手を伸ばす。
そのときだった。
ぐにゃり
仙石 伊澄
手を近づけた瞬間、絵画が溶けた。
額縁の中にあった花はまたたく間に原型を失い濁っていく。
絵画から落ちたその液体は下へ垂れるほど黒ずんで、床へ落ちる頃には完全に黒くなり焼けるような音を残して蒸発していく。
唖然として見ていると、いつの間にか扉には中身のない額縁だけが虚しく残されていた。
仙石 伊澄
仙石 伊澄
そう呟いていたのもつかの間、扉の向こうから誰かの声が聞こえた。
…っ、ごほっ、げほっ!
なんだこれ、急に喉が…
…っげほ、オエッ……
仙石 伊澄
仙石 伊澄
俺が慌てて扉に手をかけると、その扉は他と違って簡単に開くことができた。
俺は勢いのまま中へ駆け込み、一目散に声の主へと近づいた。
大葛 晃
息が苦しい。呼吸がままならない。
首が締め付けられたようで、中で何かがつっかえて、思うように空気を吸い込めない。
楽な姿勢になろうと体をよじれば、肘や膝など全ての関節が尋常でないほど痛みだし、麻痺して動けなくなる。
大葛 晃
苦しい。動けない。どうにもできない。
突然やってきたその異常に、俺はただ床の上でのたうち回ることしかできない。
大葛 晃
その時だった。
この部屋にあった唯一の扉が、勢いよく開かれる音がした。
仙石 伊澄
その音とともに一人の女性の声が聞こえてくる。
その女性は俺を見つけると、すぐに俺の元へと駆け寄ってくる。
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
彼女は俺の背中をさすって安静を促してくれる。
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
ようやく呼吸が落ち着いてきた。
身体の痛みも収まっていく。
ほっと安堵していると、手伝ってくれた女の方が急に俺の顔を覗いてきた。
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
大葛 晃
俺は素早く顔を背ける。
助けて頂いたのは本当にありがたいのだが、いかんせん俺は童貞だ。
こんなにも女性と近づいた経験もなければ、女性との上手な接し方など一切知るよしもない。
大葛 晃
また体調を崩してしまいそうだ。
そう思いながら目を背けていると、彼女はまた口を開き、突拍子もないことを言い出した。
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
この人やけに冷静だな。
もしかしたら、こういう意味不明で危機的な状況を何度か切り抜けたことがあるのかもしれない。
いや、ただの一般人の考察に過ぎないけれど。
多分違うな。こんな少女がそんな人とは思えない、多分。
知らんけど。
彼女に連れられ廊下へと出た。
そこには、また目眩がしそうなほど大量の本が並べられていた。
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
俺はどうやら周りに影響されやすい癖があるらしい。
え、嫌がられたかな。
仙石 伊澄
大葛 晃
よかった、まだ嫌われてはなさそうだ。
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
あーあ、人前で自分の悪口言っちゃったー。
最悪じゃん、自虐は匿名のネットだけでしろっての。
リアルでも自傷話とかクッソきめぇやつじゃん。
あーイタイヤツイタイヤツ。ほんとにイタイキモイヤツ。
もうだめだ。俺の言葉行動全てがキモくて無駄に思えてくる。
てか俺そもそも要らなくね?
何もしない方がいいかもしれん。
でも何もしなかったらよりキモがられるじゃん絶対。
でもなにかしたとて絶対出しゃばりになるじゃん。どれほどまでの行動ならキモがられないかの加減が分からねぇんだから。
俺行動とか無理。目立つじゃん。キモイじゃん。
普段行動しないやつが急に自意識過剰になって動き始めるってのが一番怖くてキモいんだから。
あーーーー愚痴りてーーーースマホねぇーーーー
あーもういやだ。そもそもこんなゲームみたいな「急に知らない場所連れてきました」展開する方が馬鹿なんだよ。
なんで女と二人きりで行動しなければならないんだ。
コミュ障をこんな状況にほったらかすなよマジで頭おかしいだろ。
そんなことを考えていると、彼女が「あー」と共感の声を漏らした。
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
仙石 伊澄
彼女はそれを聞くと驚いた様子で、
急に俺の胸を触ってきた。
大葛 晃
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
大葛 晃
仙石 伊澄
仙石 伊澄
大葛 晃
大葛 晃
俺はあまりの情報量に、ただ叫ぶようにツッコミをすることしかできなかった。
舞 遥歌
俺は玄関扉につけられたステンドグラスを見つめていた。
小さな犬と小さな女性が追いかけっこをしていて、大きな女性と大きな男性がそれを優しく見守っている。
そんな、他愛もない家族の様子が象られた模様だった。
俺はその窓に釘付けになった。
ステンドグラスなんて、単語は知っていたけど人生で初めて見たし。
綺麗で、ずっと見ていたいし。
でも、何より。
舞 遥歌
いつの間にか、そんな言葉が漏れ出ていた。
そう、羨ましかった。
産まれてこのかた、ずっと病院で入院生活。
16歳にもなって、死ぬ兆しも、治る兆しも見当たらなくて。
ずっと病室に居座って、閉じ込もって。
申し訳なかった。
両親に入院費をずっと払ってもらって、
病院にも、16年も病室を1つ占拠し続けてしまって。
本当に、生きていることすら無念で、恥辱で、屈辱で。
だから両親が俺を捨ててくれたとき、正直安心した。
両親だけでも俺から自由になれたんだって。
それでもまだ、俺を引き取った祖父母と病院には迷惑かけ続けている。
病院も祖父母も、明らかに俺を面倒くさいような目をして見てくる。
俺の人生は、俺自身は、人への迷惑でできていた。
だからこそ、
俺は欲を閉ざした。
はやく治りたい、
外で遊びたい、
お母さんと一緒にいたい、お父さんと一緒にいたい、遊園地へ行きたい、水族館へ行きたい、ペットを飼ってみたい、ゲームをしてみたい、外で走り回りたい、キャッチボールがしたい、スポーツをしたい、楽器を弾いてみたい、友達と遊んでみたい、自立したい……
そんな欲を、全部閉ざした。
そんなこと言ったって叶わないから。
したいしたいって人に言い続けても、その人に迷惑なだけだから。
せめて、この病気以外は他の人に迷惑をかけないように。
反抗しないで、いい子ぶって、
病室生活を楽しいと思い込んだ。
実際楽しかった。他の子供達と一緒に戯れたり、お爺さん、お婆さんとお話したりするのは。
だから他は何も要らないと、自分に言い聞かせた。
でも。
舞 遥歌
どうしても、拭いきれなかった。
家族と遊ぶことの幸せ、
外で走り回る楽しさ、
それに対する内に秘めた憧れを。
舞 遥歌
舞 遥歌
俺はゆっくりとステンドグラスへ近づいた。
今の俺なら、できると思った。
きっと"この身体の俺"なら、窓を叩き割るくらい容易いことだと思った。
舞 遥歌
舞 遥歌
舞 遥歌
この身体を持ってから、欲を制御するのが難しくなった気がする。
そうだ、もう、我慢はやめにしよう。
だから、俺は、
舞 遥歌
自分の拳を、ステンドグラスに向かって力いっぱい振り上げた。
桂 美代
あたしとゆーさんは、さっき見つけたおしろの前まであるいてきた!
ゆう
桂 美代
ゆう
ゆう
桂 美代
ゆう
桂 美代
あたしはガシッとトビラをもつ。
それでちゃんと「おじゃまします」ていって、中に入ろうとしたんだ!
俺の拳がステンドグラスに当たりかけた、そのとき。
いきなりその扉が勢いよく開いて、俺は思わず後ろに仰け反った。
舞 遥歌
俺は睨むようにして扉の先を見る。
そこからやってきたのは、黒いパーカーを着た怪しい二人。
桂 美代
桂 美代
ゆう
二人は俺を見るなりズカズカと近寄ってくる。
舞 遥歌
桂 美代
ゆう
舞 遥歌
そのほんわかした雰囲気で警戒を解いた俺は、一度冷静になってから改めて二人に向き直った。
舞 遥歌
舞 遥歌
ゆう
ゆう
桂 美代
舞 遥歌
俺はそう言って愛想笑いを浮かべる。
下手に人を嫌な気持ちにしないように、迷惑をかけないように。
当たり障りのない笑顔。この16年間で身についた、唯一と言っていい特技だ。
ゆう
ゆう
舞 遥歌
桂 美代
ゆう
舞 遥歌
ゆう
桂 美代
俺たちは三人で頭を悩ませる。
そんなとき、突然辺りにキィンと甲高い音が響いた。
舞 遥歌
俺たちは同時に耳を塞ぐが、なにかがおかしい。
その甲高い音は手を貫通して……いや、そもそも耳の中で響いていた。
それじゃあ、どうして他の二人も同じ行動をしたんだ?
そんなことを考えていると、あの甲高い音はまるでチャンネルを合わせている最中のラジオのように、段々と砂嵐のようなノイズ音に変わっていき、そして人の声へと変化していく。
……あー、あー……
……これなら聞こえるか? マイクテスト、マイクテスト……
……チッ、はやく繋がれよ……
舞 遥歌
俺が思わず困惑の声を漏らすと、その声の主は慌てて咳払いをして声を作った。
あ、ああ、聞こえていたのか
すまない、まだ脳内通信に慣れていなくてね
その声の主は、意識のない俺らにルール説明をしてきた声そのものだった。
さて、気を取り直して……
どうやら参加者全員、誰かしらとは出会うことができたみたいだ
よって今からはステップ2。君たちに、"互いの体を入れ替える"方法を教えてあげよう
頭の中に響く声は、一方的にそのようなことを言い始める。
そしてその言葉が響いたとき、ゆうさんがどこか怪しい笑みを浮かべた気がした。
コメント
3件
自虐っぷりがすざましくて笑顔 ゆうと体真っ黒な子怖すぎて怖い
覚えてなくて最初から見てきたぜ いやはやデリカシーがないっすね伊澄くんは 次は色んな人がごちゃごちゃに入れ替わるってことっすか…!?
ひぃおもれぇ〜(ノ˶>ᗜ<˵)ノ 美代は口調とか性格がシリアスブレイカー(?)だなぁ⎛˶'ᵕ'˶ ⎞ ゆうさんが何を考えてるか分からなくて怖いけども()