テラーノベル
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大日本帝国陸軍・帝都本部の奥深く。重厚な木造建築である陸軍館の一角に、その部屋はあった。
バァンッ!!
静寂に包まれていた廊下に、鼓膜を破るような烈しい音が響き渡る。
軍長室の強固な扉が、ノックの音すら置き去りにして思いっきり蹴破るようにして開け放たれた。
見張り兵
これは不敬罪に問われかねない暴挙。 しかし、彼らは乱入してきた男の姿を見た瞬間、言葉を失い、ただ息を呑むことしかできなかった。
そこに立っていたのは、いつもは無愛想でぶっきらぼうな男。 東風商店街を統べる特別武装警備部隊の隊長、梶蓮だった。
軍服の襟は乱れ、肩を激しく上下させているその顔は、見たこともないほどの焦燥と怒りに染まっている。
軍長室の主であり、この陸軍館の頂点に君臨する男。 梅宮一は、机の書類からゆっくりと顔を上げた。
梅宮は、いつも通りの穏やかで優しい、けれども全てを見透かすような鋭い声で言った。
梅宮一
梶蓮
主の言葉を遮り、梶は執務机へ大股で歩み寄ると、両手を叩きつけるようにして身を乗り出した。
梶蓮
普段の軽い口調は完全に消え失せ、飢えた獣のような声が室内に響く。
梅宮は微動だにせず、ただその深い瞳で真っ直ぐに部下を見つめ返した。
梅宮一
一刻を争う。それは分かっている。だが、軍を動かすには大義が必要だ。
問いかけられた梶は、拳が白く血の気が引くまで握りしめ、ギリ……と奥歯を鳴らした。
そして、悔しさと怒りを堪えるように、生まれて初めて見るほど深く俯いた。
梶蓮
絞り出すような声が、部屋の空気を震わせる。
梶蓮
その瞬間、いつも春風のような微笑を絶やさない梅宮の目が、大きく見開かれた。
壁一面に、仰々しいほど大きく桜の紋章が描かれた書斎。豪奢な調度品が並ぶ和室の漆塗りの机の前に、桜家の当主は傲然と座していた。
そこへ、一人の家来が慌てた様子で滑り込んできた。
家来
その報告を聞いた瞬間、桜家当主の顔が一気に険しく歪んだ。
桜家当主
舌打ちと共に吐き捨てられた言葉には、我が子への情など微塵もなかった。 ただ、自らの利益となる商品が予定通りに並ばないことへの苛立ちだけがそこにある。
家来
家来の言葉に、当主の口元が醜く歪み、にやりと残酷な笑みが浮かんだ。
桜家当主
桜家当主
当主は机の引き出しを開けると、厳重に保管されていた小ぶりな木箱を取り出した。
木箱を掴んだ当主は、冷え切った廊下へと足を進める。
ぎし、ぎし、と不穏な音を立てる床を踏みしめ、向かう先はただ一つ。
陽の光すら届かない、桜家の最深部、地下牢だ。
カビ臭い湿気と、鉄の匂いが充満する地下牢。
その中央で、桜は太い縄に全身を縛り付けられていた。
口を封じていたはずの猿ぐつわの布は、執念で食いちぎったのか、ボロボロに破れて足元に落ちている。
乱れた白黒の髪の隙間から、琥珀と紺碧のオッドアイが、爛々と怒りの炎を燃やしていた。
重い鉄格子の扉が開き、桜家当主が冷然と見下ろしてくる。
桜家当主
深いため息と共に向けられる蔑みの視線。
その言葉を聞いた瞬間、桜は喉が裂けんばかりの声で吠えた。
桜遥
縄が擦れて手首から血が滲むのを気にもとめず、桜は身を乗り出して当主を睨みつける。
桜遥
桜家当主
次の瞬間、目にも留まらぬ速さで当主の手が伸び、遥の細い首を容赦なく締め上げた。
桜遥
肺の空気を強制的に絞り出され、体が絞り始める
それでも桜は、牙を剥き出しにして当主の手を睨みつけ続けた。
桜家当主
当主は冷たく手を離すと、懐から取り出した木箱を開いた。
中から現れたのは、鈍く光る硝子製の注射器。その禍々しい液体を見た瞬間、桜の顔が恐怖と嫌悪で歪む。
桜遥
桜家当主
迷ヰもち
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迷ヰもち
コメント
1件
わあ…第4話、すごい熱量でしたね。梶くんが軍長室を蹴破って「遥が誘拐された」って叫ぶシーン、もう心臓がぎゅっとなりました。普段あんなに落ち着いてる人があそこまで取り乱すって、よっぽどなんですね…。そして地下牢での桜くんの「てめえのせいだろうがッ!!」には胸がすく思いでした。でも最後の注射器の不気味さ…続きが気になりすぎます。迷ヰもちさん、テストや勉強お疲れさまです。焦らず無理せず、息抜きしながら頑張ってくださいね🌸応援してます!