秘密の味

会社員の弓月が、密かに経営するバー｢ルーナ｣。その常連客の一人である高校生の凜人。ルーナには、様々な出会いを求めた人間たちがやってくる。

凜人は、隠す気など無く堂々と弓月を狙っていた。初めて出会った時、フリーだと聞いてからずっと。

PM:07:00

カランカラン 店のドアベルがなる。

入ってきたのは、私服の凜人だった。

凜人は、弓月がいるカウンターまで来て、耳打ちをする。

弓月も、同じように小声で返す。

凜人が来ると、店内は特異な空気に包まれる。弓月は凜人に対して、他の客とは何か違う接し方だった。

それから一時間ほど滞在した凜人は、また夜の街を巡るため、精算をし席を立った。

見送りにドアの前まで来ていた弓月。凜人が、シャツを掴んで背伸びをする。唇が重なり、チュッと音を立てる。

にこっと笑ってドアに振り返ると、サッと開けて出ていった。弓月は、頭上でなるドアベルを聞きながら、少し立ち止まっていた。微かな笑みがこぼれる。

ドアの前に立ち止まったままのマスターに、カウンターで飲んでいた客から注文が入る。弓月は、振り返って返事をする。