きゃぁぁぁぁぁ!!!!!
屋敷に悲鳴が響き渡っていく
悲鳴の下には、美しい花嫁が
「首を斬られております!!」 「それで息は?!!」 「水江ぇぇ!!!!」
薬売り
からんと、静かな音が響く
小田島
小田島
侍が薬売りに近づくと、薬売りは侍の背後に立っていた
薬売り
小田島
薬売りは札を取り出し、柱に貼り付けた
薬売り
徐々に札に文字が刻まれていく
薬売り
薬売り
半刻前
茶屋で休んだ後に、とある屋敷に通りかかった
時雨
背中に、冷たいなにかが突き抜けていくような感じがした
この屋敷、嫌な予感がする、
薬売り
番人
時雨
番人は私達に向けて声を掛けた
番人
薬は売れねぇで
そんな声を無視するように、薬売りは門を潜っていく
だが、門を跨ぐ途中に足を止めた
時雨
薬売り
薬売りはそう声を出し、屋敷の門を潜っていった
門を潜ると、屋敷内は大盛り上がりであった
「お!薬売りだぁ!」 「本当だ薬売りだな!」 「薬売りだ!」
私達を見て、そのような声が聞こえてくる
時雨
まだ、嫌な予感は消えてない、 なんなんだろう、
そんな事を考えながら、私は薬売りの後ろへとついていった
薬売りの後を追っていると、 突然怒鳴り声が聞こえてきた
さと
どれだけ手間取っていれば気が済むの!!
加世
さと
薬売りは声が聞こえた場所に歩いて行き、私もその後についていく
声の発端場所を追うと、厨房に 辿り着いた
加世
加世
とある女の子が私達の足音に気がつく
薬売り
加世
今日はそんな時間ないの!
加世
女の子がそう口を開き、薬売りは玄関を跨ぎ、再び立ち止まる
薬売り
薬売り
薬売りは上がり框に腰掛け、私は薬売りの隣に腰掛ける
加世
加世
ちりん
加世
ちりん
加世
水江
水江
笹岡
水江
笹岡
水江
笹岡
薬売り
加世
時雨
私と女の子は首を傾げる
薬売り
そう言うと、薬売りは女の子の耳に口を寄せ、
薬売り
加世
加世
時雨
女の子は顔を赤くさせ、薬売りを軽く叩く
な、なんの話だ、?
私が戸惑っていると、薬売りと目が合い、
私の耳に口を寄せ、
薬売り
内緒です
時雨
薬売りは耳から口を離し、人差し指を口に当てる
時雨
私は顔を耳まで真っ赤にさせ、俯いた
薬売り
加世
女の子は私に近づき、強く抱きしめられる
時雨
私が女の子に抱きしめられていると、
弥平
時雨
突然、中年の男性が声を荒げた
弥平
弥平
加世
そう言うと、加世さんは私を抱きしめたままそっぽを向いた
弥平
男性が慌てふためいていると、加世は先程より大きい声で
加世
弥平
酷く傷ついたように、男性が項垂れ、水をごくごくとのんでいく
弥平
そう言い、男性は去っていった
加世
怖かったねー、と加世に頭を撫でられる
時雨
私、何歳児だとおもわれてんだろ、
加世
加世
薬売り
加世
加世
切り替えたように、加世の表情が明るくなる
薬売り
ちょっとお待ちを
そう言うと、薬売りは箱の引き出しから様々な物を取り出す
私は加世の膝に乗せられ、その様子を見る
薬売りが取り出している時、
加世
時雨
加世
私は加世!
時雨
よろしくお願いします、
加世
加世は後ろから私の手を弄りながら、そう返事をする
、、私、絶対子供だと思われてる、
そんな事を考えていると、
加世
薬売りが道具を出し終えたそうで、 加世が歓喜の声を上げる
私は加世に耳を塞がれ、 薬売りさんと内緒話をする
時雨
き、気になる、、
その時耳から手が離れ、
加世
加世
加世
加世が話し出すと、今度は薬売りが私の耳に手を当てた
時雨
解せぬ、、
その後、話し終えたのか、薬売りが私の耳から手を離し
薬売り
加世
時雨
そんなの、お嫁さんが可哀想過ぎる、 でも、これは本人の意思。 私達が止める資格なんてないんだ、
小田島
かんっ
真央
真央
かんっ
伊顥
真央
水江
真央
薬売り
加世
加世
加世
加世
時雨
なんか、複雑、なのかな、?
加世
薬売り
薬売りは納得したように頷く
加世
うー、と私の頭に顔を乗せ、唸る加世
薬売り
加世
その時
ネズミの鳴き声が聞こえた
加世
時雨
加世が私を抱いたまま、薬売りに急接近した為、 薬売りと加世に挟まれてしまった
薬売り
ただの鼠ですよ
加世
時雨
加世
時雨
加世が手を離し、私は薬売りの膝に乗るような体制になってしまった
薬売りは私のお腹に手を回し、 降りれなくなってしまった、
薬売り
薬売り
薬売り
薬売り
辺りを見渡せば、確かに鼠取りが多い
加世
その時、薬売りの目が細められ
薬売り
加世
加世
その時、人が入ってくるのが見え、私は薬売りの膝から降りる
さと
加世
隣をみれば、薬売りが頭を下げているのが見え、私も慌てて頭を下げる
さと
こんな時に油を売っているなんて!!
薬売り
さと
さと
さと
先程の怒鳴り声とは打って変わり、物静かな声になる
加世
そう言い、加世は水を汲みに出かけた
さと
薬売り
薬売り
ちりん
薬売り
さと
女性は薬売りの顔をみて、みるみる頬を朱に染めていく
小田島
御興が参られました
真央はスッと目を開け
真央
伊行
真央
伊國
坂上家の縁はお前に任せた
伊國は盃を片手に、そう笑った
そんな伊國を、水江は鋭い目つきで伊國を睨んでいた
水江は苛立った様子で
水江
こんな時に!!
だが、我が娘の真央を呼ぶ声は、愛おしさで溢れていた
水江
薬売り
薬売り
さと
薬売り
さとという女性は、大きく目を見開かせていた
しゃらん
しゃらん
鈴の音のような美しい花嫁道中
さと
薬売り
ちりん
しゃらん
しゃらん
花嫁道中、そこに待ち受けるは、
鼠か、
小田島
真央
突如、大量の鼠が花嫁へ群がった
勝山
真央様に付いていかれるのですよ
水江
そうだわ!
最後に辿り着くのは、
しゃらん
猫か
真央
誰もがめでたい花嫁道中
その中、一人の美しい花嫁は
下駄の前で紅い花を咲かせた
薬売りは水を床に溢していた
さと
薬売り
時雨
次の瞬間
悲鳴が屋敷全体に響き渡った
時雨
さと
薬売り
そう言い、薬売りは厨房を後にし、私は薬売りへとついて行った
大玄関は大変な騒ぎになっていた
「真央様!!!」 「真央!!真央ぉぉぉぉ!!!」
勝山
そう言い、一人の男性が刀を抜こうとする
薬売り
薬売り
薬売りがそれを阻止する
時雨
さと
私は思わず驚いてしまった 外傷が、何処にもない あるのは倒れる際に 床にぶつけた頭のところだけ
勝山
さと
加世
その時物陰から加世が顔を出す
薬売り
薬売り
薬売り
薬売り
そう言い、薬売りは札を柱に張り、 札は朱くそまり、目を開く
「結界だと?!」 「それより早く医者を!!」
その時、
伊國
医者より坊主じゃねぇか?
伊國
時雨
何を、言っているの、?
その時、
水江
時雨
水江は伊國に罵倒を浴びせたが、 伊國は薬売りに問いかけていた
伊國
伊國
薬売り
伊國
こりゃあ良い!!
屋敷には、愛する我が娘の名前を泣き叫ぶ悲しき声と 狂ったように笑い出す愉快な笑い声で満ち溢れた