翌朝。
太宰 治
太宰 治
太宰 治
中原 中也
太宰 治
ドアノブに手を掛けた太宰が中也の言葉に僅かに頬を染めて不服そうにする。
其の様子さえ、可愛いと思って仕舞うのは末期だろうか。
中原 中也
太宰 治
少し心配そうに笑んだ太宰が答えた。
太宰 治
…此処迄は平和だった。
平和に見えた。
昨日、「罰を受けなければ」と。そう思った瞬間、妙に視界が開けた気がした。
辺りを見渡して、目的の物を探す。
中原 中也
心が不安定な子供が家に居るのに、養護教諭である彼が其れを隠さない訳は無かった。
中原 中也
ふと目に留まった、扉。
中原 中也
そう自分に言い聞かせて、其の部屋のドアノブを捻る。
広い部屋。
奥には机と椅子、全体的に物の少ない、シンプルな部屋。
太宰の自室だ。
微かな好奇心に胸を高鳴らせ 仄かな罪悪感に足が躊躇う。
でも、隠すとしたらこの部屋が確率として一番高いだろう…。
一歩、足を踏み入れた。
ふと、机の上に何かが置かれている事に気付く。
中原 中也
束になった原稿用紙が、五セットほど。
机の上に二セット、机の傍の棚に三セット。
中原 中也
一番上に乗った原稿の最後には全て 《了》 の文字があった。
中原 中也
中原 中也
小説家として働く事は出来ない。だから書いたとしても自分の部屋に溜めておくしか無いのだろう。
傍の大きな本棚に目を向けると、沢山の小説が目に入った。有名作家からマイナーな人まで、様々だ。
気になったのは、その大きな本棚ではなく、下の方に在った小さな本棚。
全て同じ作者の__其れも、知らない人は居ないのではないかと思う程の、有名作家の。
何故この作者の物だけ?
可能性は二つ__
その作者の大ファンであるか
その作者自身であるか。
どうにも気になって仕舞って、原稿用紙の束の一つを手に取り、一枚目から目を通し始めた。
中原 中也
語り口、表現、話の構成。
同一人物だ。
中原 中也
そう、思い出した。
この作者は約二年前から新作を出して居ない。
何とも言えぬ感情に、視線を暫く彷徨わせた。
正座をした足が痺れて来る。
本来の目的から離れてる、そう思い直して蹌踉めき乍らも立ち上がった。
何故其れを為したいのかも判らない。
ふわふわとした好奇心と、泣きそうな程の罪悪感とで必死に体を動かしていた。
ぴたりと其の足が止まる。
中原 中也
今日の朝、太宰を見送った時。
小さな鏡に、何かを物色する中也の姿が映る。
彼は何かを見付け、微かに笑んだ。
中原 中也
後から思い返せば、何をしていたのかと思う。
中原 中也
其の時は、そんな判断力も失う程、
追い詰められて居たのかもしれない。
コメント
35件
返信遅れてすいませんッッ!なんか…うん…最高☆こういうの好きです!これからも自分のペースで頑張ってください…
みかんだぁ!まってたよおう。更新してない僕もそろそろやばい、、、久しぶりのみかんの星希のストーリーさいこうすぎる美味しいよぉ