藤澤
えぇ?どういうこと!?
大森
…
藤澤
…
藤澤
え…?
大森
ね
藤澤
…
大森
キスしていい?
藤澤
…
藤澤
え?
大森
…
藤澤
…
藤澤
き…
藤澤
キス…?
大森
うん
藤澤
…
藤澤
元貴…
藤澤
あ…
藤澤
飲みすぎた?
大森
…
大森
そうかもね
藤澤
…
藤澤
ごめん…
藤澤
えっと
藤澤
真剣に言ってくれてる?
大森
…
大森
うん
大森
遊びとかじゃない
藤澤
そうだよね
藤澤
…
藤澤
うん
藤澤
いいよ
大森
…
大森
いいの?
藤澤
うん
大森
…
大森は少し近づいて 藤澤の瞳をのぞき込む
藤澤も大森を見つめ返す 瞳の温度が大森の心を優しく包む
大森
…
藤澤
…
大森はあと一歩の勇気が出ない 心臓の音がとてもうるさく感じる
大森
…
藤澤
…
しばらく無言でただ見つめ合う 時間が続く
大森
…
大森
ごめん
大森は耐えられず謝った
大森
やめよ
そもそも藤澤は 今の事を忘れてしまう それは何かが違う気がした
むしろ忘れるからと欲望を ぶつけている自分自身に冷めた
大森
…
大森
こんなの
藤澤
…
突然、藤澤が大森を押し倒した
大森
っ!?
藤澤
なんで
大森は驚いて藤澤の顔を見る 苦しそうな泣きそうな表情だ
大森
…
大森
涼ちゃん…?
大森が戸惑っている間にも藤澤の 瞳はみるみると涙で満ちていく
藤澤
元貴はいつも何と戦ってるの?
大森
…
大森
え…
大森
なに…?
藤澤
なんでそんな苦しそうな顔するの
大森
…
藤澤
いいよって言ってんじゃん
藤澤
それでもだめなの?
藤澤の瞳から涙が零れる 大森の頬に涙の粒が落ちた
大森
…
藤澤
さっき元貴がキスしたいって言ってくれて
藤澤
嬉しかったよ
大森
え
藤澤
…
藤澤
僕もしたい
藤澤
キスしたい
大森
…
大森
なんで
藤澤
…
藤澤
なんでって?
大森
だって
大森
…
大森
涼ちゃん女の人が好きでしょ
藤澤
…
藤澤
それこそなんで?
藤澤
僕が女の人と付き合ったの見たことある?
大森
…
大森
ない
藤澤
…
藤澤
ないよ
大森
…
大森
それは分かった
大森
でも…
大森
俺ではないでしょ
藤澤
好きな人?
大森
…
藤澤
元貴だよ
大森
…
大森
うそだ
藤澤
本当
藤澤
だからびっくりしたんだよ
藤澤
絶対無理だろうって思ってたから
大森
…
大森
なんだそれ
藤澤
…え
大森
…
藤澤
…
大森
なんで今…
この時間は大森は覚えていても 藤澤は忘れてしまう時間だ
それを利用して自分の想いを 無責任にぶつけた
藤澤はそれを真正面から受け入れて 自分の想いも話してくれたのだ
大森
ごめん…
大森
本当にごめん
大森は自分があまりにも 幼稚で汚く思えて吐き気がした
藤澤
元貴…?
大森は耐えられず手で顔を覆う
大森
…
大森
ごめん…
大森
帰って
藤澤
…
藤澤
え
藤澤
帰ってって言った?
大森
…
藤澤
…
藤澤
それはいくらなんでも酷くない?
大森
…
藤澤
なんで?
大森
…
大森
意味ないから
大森
こんなことしても
藤澤
意味ないって…
藤澤
そんなわけないじゃん
大森
…
藤澤
もとき
藤澤
こっち見てよ
大森は両手で顔を覆ったまま 首を振る