葛木くん
雨降ってんな
私
雨、降ってるね
葛木くん
傘は
私
持ってきてない
葛木くん
仲間だ
葛木くん
やまないのかね、これ
私
らしいけど
葛木くん
運がない
私
葛木くん
葛木くん
どした
私
私、雨の音好きだな
葛木くん
おお
葛木くん
そういえばしばらく聞いてなかったな
葛木くん
いや聞いてはいたな
葛木くん
いつからか、この天の涙を憂鬱だと思うようになってしまった
葛木くん
それは恐らく、私がこの身で涙の意味を、重みを知ったからだ
私
どうしたの
葛木くん
大人になるとは知ることで、知識とは想像を塗り潰すことなのかもしれない
私
ふふっ
私
ねぇ
私
どうしたの
葛木くん
む、
葛木くん
何か雨と一緒に降ってきたのかもしれねーな
私
しっかり
葛木くん
大丈夫だ
葛木くん
でも
葛木くん
雨の音って楽器みたいだ、なんて本当、ワクワクさんを見ていた頃には思っていたはずなんだよ
私
うん
葛木くん
そういう気持ちはもうなくなっちまったのかね
タツタツと降りしきる白雨
葛木くんの長い睫毛が息に合わせて震える
私
ずっと生きてきたから
私
他にも好きだと思えるものが増えて、そこに隠れて見えなくなってるだけかも
葛木くん
ふーん
私
多分
葛木くん
そうならいいけどな
私
私も思う
葛木くん
いや、でも
葛木くん
少なくともお前が『雨の音が好き』ってのは、そうだな
葛木くん
今までの上に今置いた
私
そう
葛木くん
おう
葛木くん
落ち着くな、雨
私
うん。落ち着く






