私は妊娠発覚後、彼氏に逃げられた いわゆる「ヤリ捨て」ってやつだ
病院で初めて心拍を確認した時 私はなぜだか涙が止まらなかった
この小さな命を守れるのは自分だけ 私が守らなくて誰が守るんだ・・・と
元々早くに両親を亡くしていた為 頼る伝手など無かったが、 私は一人で産むという決意をした
十月十日はあっという間に過ぎ 12月25日のクリスマス 私の赤ちゃんが産声をあげた
月日はあっという間に過ぎ、 さくらは子育てに追われていた
莉奈(りな)
彼女は、友人の莉奈。 さくらの唯一の信頼出来る友達だ 地元を離れて身寄りのないさくらの事を気にかけて時々手伝いに来てくれている
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
莉奈(りな)
さくら
さくら
表には決して出さないが、さくらのメンタルは正直いっぱいいっぱいだった
夜泣き、授乳での寝不足 それでも子育てに休みなどある訳なく・・・ それが永遠ににループするのだ
体力的にも精神的にも限界だった
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
所詮はロボットでしょ?・・・そう思ったが、家事育児ができるという所はとても魅力的だ
さくら
莉奈(りな)
こうして、さくらは「人型AIロボット」のシステムテストに協力することになった。
翌日ーー
ピーンポーン
さくらの家のチャイムが鳴った
莉奈(りな)
さくら
扉を開けると莉奈の隣には 見た感じ20代前半くらいの男の子の姿
さくら
莉奈(りな)
莉奈(りな)
さくら
さくらは正直とても驚いていた さくらの想像していた「ロボット」とは全くかけ離れていたからだ まさか、莉奈の言う「人型AIロボット」がこんなに細部まで丁寧にこだわったものだとは思ってもいなかった。
スカイブルーの髪に蒼い瞳で色白の男の子・・・いや、AIロボット。 ロボットと言われなければ全く分からない
蒼斗(あおと)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
さくらは布団の中でお昼寝中の娘、「ゆき」に目をやり説明した
蒼斗(あおと)
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
こうして、今日から AIロボット「蒼斗」とさくら、娘の「ゆき」との三人(?)暮らしが始まった。
蒼斗(あおと)
さくら
蒼斗(あおと)
不思議そうな目でさくらを見つめる蒼斗
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
それから30分程経過しただろうか・・・ ゆきの泣き声が部屋に響き渡った
さくら
蒼斗(あおと)
ママを探しながらハイハイでこちらに向かってくるゆきを蒼斗が抱き上げようとした
さくら
それを見たさくらが慌てて止めに入ろうとした ゆきは人見知りが激しく、ママ以外の人を見るだけで泣いてしまう程だった
ゆき
さくら
蒼斗(あおと)
抱き上げられたゆきは泣かなかった 泣く所かむしろ興味を示しているようにも思えた。
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗はゆきの頭を優しく撫でると、さくらに託した
蒼斗(あおと)
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗はそう言い残し台所に向かって行った
さくら
1時間後ーー
さくら
ゆき
テーブルに並べられた、豪華なディナーに驚きを隠せないさくら
蒼斗(あおと)
ゆきの前には手作りの離乳食が並べられた
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗(あおと)
さくら
この半年・・・全てゆきが優先で ご飯なんてキッチンでササッと済まし、お風呂にゆっくり入る時間もなく、むしろそれが当たり前、そんな生活を続けてきたさくら
さくらにとって蒼斗が自分の為に作ってくれたこの、時間が嬉しくてたまらなかった
思わず込み上げてきた感情と共に涙が溢れる
蒼斗(あおと)
蒼斗はとても心配そうにさくらの顔を覗き込む
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗がさくらの涙を拭う
さくら
さくらは蒼斗とという「AIロボット」のお陰で久しぶりに有意義な時間を過ごせた
その夜、ゆきが寝静まった頃・・・ さくらは莉奈へと電話した
さくら
莉奈(りな)
さくら
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
突然歯切れの悪い莉奈に「?」を浮かべるさくらだったが特に気には止めなかった
莉奈(りな)
さくら
時は流れあの日から5ヶ月が過ぎた
さくら達は蒼斗のお陰で心にもゆとりが持て、充実した生活を送っていた
ゆきが産まれて11ヶ月、ゆきは蒼斗にとても懐きそれはもうパパと娘の様な関係性
今日はさくら、ゆき、蒼斗の三人で公園にピクニックへ来ていた
ゆき
さくら
さくらは目を丸くした 今まで支えがないと歩けなかったゆきが一人で歩いてこちらへ向かってくるではないか、
蒼斗(あおと)
さくら
蒼斗(あおと)
ゆき
蒼斗(あおと)
さくら
ゆき
思わず顔を見合わせる二人 ゆきはニコニコ、手を広げ蒼斗に抱っこを求める
さくら
蒼斗(あおと)
さくらは不思議でたまらなかった。 蒼斗のことを「パパ」なんて一度も教えたことないのに、ゆきはハッキリと蒼斗を見て「パパ」と発した
さくら
蒼斗(あおと)
ゆき
傍から見たら、間違いなく仲のいい「家族」 しかし蒼斗は父親でもなければ、人間でもない・・・ 人の手によって造られた「人型AIロボット」 それはもう変えようのない事実
さくら
さくら
始めは長いと思っていた6ヶ月 しかし時間はあっという間に過ぎ去った
システムテスト終了期間まであと1ヶ月ーー
12月25日ーー
今日は「ゆき」が生まれた日、 そしてさくらが初めてママになった日だ
さくら
蒼斗(あおと)
ゆき
プレゼントの大きなクマのヌイグルミを抱え、ゆきは笑顔で人差し指を見せてくれた
さくら
蒼斗(あおと)
そう差し出されたのは一輪の薔薇
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗(あおと)
さくら
溢れ出した涙は止まらなかった 「がんばったね」 その一言で全てが報われた気がした
辛い想いも、苦しい想いもした しかし、それ以上に嬉しい、楽しい「思い出」も沢山できた それは勿論「蒼斗」のおかげ
ゆき
ゆきが涙を流すさくらを心配して頭を撫でてくれた
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗(あおと)
確実に蒼斗の中でさくらとゆきに対する 「愛情」という感情が生まれていた
「人型AIロボット」が「意思」を持ったのだ
蒼斗(あおと)
蒼斗(あおと)
さくら
蒼斗(あおと)
蒼斗がゆっくり話し始めた ゆきに「パパ」と教えたのは自分だと言う事、 さくらに「愛おしい」という感情を持った事を今まで隠していた事を。
さくら
蒼斗(あおと)
さくら
蒼斗(あおと)
そう・・・ ゆきが生まれて丁度半年の時に来た蒼斗 一歳の誕生日を迎えた今日でシステムテストは今日で終了なのだ
さくら
ゆき
蒼斗(あおと)
ゆきにとっても蒼斗の存在は大きい それは勿論・・・さくらにとっても同じ事
さくら
翌日ーー
莉奈(りな)
さくら
さくら
莉奈(りな)
蒼斗(あおと)
蒼斗(あおと)
莉奈(りな)
さくら
莉奈(りな)
さくら
さくら
莉奈(りな)
莉奈(りな)
莉奈のまさかの一言にさくらは驚きと喜びを隠せなかった
さくら
さくら
莉奈(りな)
莉奈(りな)
莉奈(りな)
蒼斗(あおと)
莉奈(りな)
蒼斗(あおと)
莉奈(りな)
その後、仲良く帰る二人の後ろ姿をを見送る莉奈は嬉しさに揺れる様な微笑みを浮かべていた
莉奈(りな)
お分かりだろうか・・・
全ての黒幕は莉奈
妊娠中から塞ぎ込み、人間不信になる彼女を救おうと考えに考え抜き辿り着いたのが・・・ 「人型AIロボット」
莉奈は全て分かっていた さくらの笑顔が嘘だということ 心から笑えない彼女を救いたい ただその一心だった
そして創り出されたのが 「蒼斗」 さくらだけの為の人工知能
システムエラーなんて嘘 彼女を支え、愛する為に造られたのだから
人間じゃなくてもいいじゃない、 愛のカタチなんて人それぞれでしょ? それが例え「AI」だったとしても・・・
END