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アイのかたち

1 - アイのかたち

2020年04月23日

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私は妊娠発覚後、彼氏に逃げられた いわゆる「ヤリ捨て」ってやつだ

病院で初めて心拍を確認した時 私はなぜだか涙が止まらなかった

この小さな命を守れるのは自分だけ 私が守らなくて誰が守るんだ・・・と

元々早くに両親を亡くしていた為 頼る伝手など無かったが、 私は一人で産むという決意をした

十月十日はあっという間に過ぎ 12月25日のクリスマス 私の赤ちゃんが産声をあげた

月日はあっという間に過ぎ、 さくらは子育てに追われていた

莉奈(りな)

「ゆき」ちゃんほんと大きくなったね~、私も子供欲しいなあ

彼女は、友人の莉奈。 さくらの唯一の信頼出来る友達だ 地元を離れて身寄りのないさくらの事を気にかけて時々手伝いに来てくれている

さくら

明日でちょうど6ヶ月なんだ

莉奈(りな)

もうそんなに経つんだ!?

さくら

可愛いけどやっぱり大変だよ~自分の時間なんて全然ないもん

莉奈(りな)

さくらは一人で家事から子育てまでやってるもんねーほんと尊敬するよ

莉奈(りな)

近くに両親が居てくれたらそれだけでも違ってたんだろうけど・・・

さくら

でも、自分が選んだ道だからね

さくら

「父親」が居たら少しは違ってたんだろうなとは最近つくづく思う

表には決して出さないが、さくらのメンタルは正直いっぱいいっぱいだった

夜泣き、授乳での寝不足 それでも子育てに休みなどある訳なく・・・ それが永遠ににループするのだ

体力的にも精神的にも限界だった

莉奈(りな)

「お父さん」ねえ・・・あ、さくら「AI」って知ってる?

さくら

AIって人工知能とかそういうやつ?

莉奈(りな)

そうそう、私のパパが今研究してる「人型AIロボット」があるんだけど・・・

さくら

人型AIロボット・・・?

莉奈(りな)

まだ試験段階らしいんだけど、システムテストの為に協力してくれる人募集してるんだって

さくら

へえ・・・莉奈のパパそういえば研究員だったね

莉奈(りな)

どう?さくら、テストに協力してくれない?

莉奈(りな)

そのロボット、家事や育児が出来るようにプログラミングされてて

さくら

凄いね、ベビーシッターみたい・・・

莉奈(りな)

そう!ベビーシッターをコンセプトに作られたみたいなの

莉奈(りな)

期限は半年、不具合があったら途中返してくれて大丈夫だからさ

さくら

(半年ロボットと生活かあ・・・)

莉奈(りな)

どうかな?もしかしたらさくらの役に立つかもしれないし

所詮はロボットでしょ?・・・そう思ったが、家事育児ができるという所はとても魅力的だ

さくら

うん、そのシステムテスト協力するよ

莉奈(りな)

ありがとう~!早速パパに連絡するね!

こうして、さくらは「人型AIロボット」のシステムテストに協力することになった。

翌日ーー

ピーンポーン

さくらの家のチャイムが鳴った

莉奈(りな)

さくら、連れてきたよ!

さくら

連れてきたって・・・?

扉を開けると莉奈の隣には 見た感じ20代前半くらいの男の子の姿

さくら

莉奈の彼氏?

莉奈(りな)

違うわよ!

莉奈(りな)

この子が例の「人型AIロボット」

さくら

えぇ!ロボット!?

さくらは正直とても驚いていた さくらの想像していた「ロボット」とは全くかけ離れていたからだ まさか、莉奈の言う「人型AIロボット」がこんなに細部まで丁寧にこだわったものだとは思ってもいなかった。

スカイブルーの髪に蒼い瞳で色白の男の子・・・いや、AIロボット。 ロボットと言われなければ全く分からない

蒼斗(あおと)

こんにちわ

さくら

こ、こんにちわ・・・って莉奈、会話も出来るの?

莉奈(りな)

人型ロボットだからね~勿論会話もできるよ・・・ただ

さくら

ただ?

莉奈(りな)

泣く、怒る、笑う、みたいな感情は無いの

さくら

ロボットだもんね・・・

さくら

(全然ロボットには見えないけど)

蒼斗(あおと)

ぼくの名前は、蒼斗(あおと)、よろしくお願いします

さくら

蒼斗くんね、私はさくら・・・今はお昼寝中だけど、あの子は「ゆき」

さくらは布団の中でお昼寝中の娘、「ゆき」に目をやり説明した

蒼斗(あおと)

さくら、ゆき・・・覚えました

莉奈(りな)

テスト期間は6ヶ月、もし不具合とかあったらすぐ返してくれて構わないから

さくら

具体的にテストって何をやるの?

莉奈(りな)

さくらはただ、この子と6ヶ月間過ごしてくれるだけでいいわ

さくら

それだけ?

莉奈(りな)

うん、それだけ。この子が何も問題なく人と過ごせる事が分かったらそれが成功ってこと

さくら

へえ・・・ロボットと生活するなんてなかなか経験出来るもんじゃないよね

莉奈(りな)

でしょー?それにさくらの事、色々手伝ってくれたら一石二鳥じゃない?

さくら

そうだね、莉奈ありがとう

莉奈(りな)

じゃあ、私は「蒼斗」置いて帰るね~

さくら

え!?もう帰っちゃうの?

莉奈(りな)

ごめーん☆この後彼氏とデートなんだよね

さくら

そっか、楽しんでね

こうして、今日から AIロボット「蒼斗」とさくら、娘の「ゆき」との三人(?)暮らしが始まった。

蒼斗(あおと)

さくら、なんでもやるからボクに命令して

さくら

いやいや「命令」って言い方はよくないよ

蒼斗(あおと)

どうして?

不思議そうな目でさくらを見つめる蒼斗

さくら

「命令」って上の人間が下の人間に指示を出すことでしょ?

蒼斗(あおと)

ボク、ロボット・・・さくら、人間

さくら

いや、そうなんだけどね!?

さくら

・・・私が嫌だからやめて?これでいい?

蒼斗(あおと)

わかった、さくらが嫌なことしない

さくら

今は特にやる事ないし・・・話し相手になってよ

さくら

(とは言ったものの、ロボットと何を話せばいいのかな)

蒼斗(あおと)

さくらのこと、おしえて

さくら

(空気読んだ・・・!!)

それから30分程経過しただろうか・・・ ゆきの泣き声が部屋に響き渡った

さくら

あ、起きたかな・・・

蒼斗(あおと)

ゆき、泣いてる

ママを探しながらハイハイでこちらに向かってくるゆきを蒼斗が抱き上げようとした

さくら

あ!蒼斗・・・ゆきは人見知りが凄いから・・・

それを見たさくらが慌てて止めに入ろうとした ゆきは人見知りが激しく、ママ以外の人を見るだけで泣いてしまう程だった

ゆき

・・・・・・

さくら

あれ?

蒼斗(あおと)

初めまして、ボク蒼斗、これからよろしく

抱き上げられたゆきは泣かなかった 泣く所かむしろ興味を示しているようにも思えた。

さくら

(なんで・・・?AIロボットだから?)

さくら

(小さい子って色々敏感って聞くし・・・)

蒼斗(あおと)

ゆきはいい子だね

蒼斗はゆきの頭を優しく撫でると、さくらに託した

蒼斗(あおと)

ゆきと遊んでて、ボクが家事するから

さくら

え?

蒼斗(あおと)

さくらは何もしなくていいから

蒼斗はそう言い残し台所に向かって行った

さくら

(任せちゃって本当に大丈夫かな?)

1時間後ーー

さくら

蒼斗これ・・・

ゆき

んっんっ

テーブルに並べられた、豪華なディナーに驚きを隠せないさくら

蒼斗(あおと)

ゆきはこっち

ゆきの前には手作りの離乳食が並べられた

さくら

離乳食まで・・蒼斗って凄いね

蒼斗(あおと)

ボクが食べさせるから、さくら食べてて

蒼斗(あおと)

食べたら、お風呂入って、準備しておいた

さくら

嘘・・・ありがとう

この半年・・・全てゆきが優先で ご飯なんてキッチンでササッと済まし、お風呂にゆっくり入る時間もなく、むしろそれが当たり前、そんな生活を続けてきたさくら

さくらにとって蒼斗が自分の為に作ってくれたこの、時間が嬉しくてたまらなかった

思わず込み上げてきた感情と共に涙が溢れる

蒼斗(あおと)

ないてる?さくら、悲しいの?

蒼斗はとても心配そうにさくらの顔を覗き込む

さくら

違うよ、ごめん蒼斗がしてくれた事が嬉しくって・・・

蒼斗(あおと)

嬉しいのに泣くの?

さくら

うん、悲しくても嬉しくても涙は出るの

さくら

人間って不思議だね

蒼斗(あおと)

さくら、笑って、泣かないで

蒼斗がさくらの涙を拭う

さくら

(・・・パパが居たらこんな感じだったのかな)

さくらは蒼斗とという「AIロボット」のお陰で久しぶりに有意義な時間を過ごせた

その夜、ゆきが寝静まった頃・・・ さくらは莉奈へと電話した

さくら

もしもし莉奈?

莉奈(りな)

あ、さくら!どう蒼斗の様子は?

さくら

ごめん、私莉奈に謝る。正直・・・所詮はロボットでしょ?とか思ってたんだよね

さくら

でも、蒼斗本当に凄いよ?ゆきも全然人見知りしないし、面倒もよく見てくれて・・・

莉奈(りな)

さくらの役に立ててるみたいで良かったよ

さくら

ううん、こちらこそありがとう

莉奈(りな)

いーえ!さくらの為だもん!

さくら

ん?どういうこと?

莉奈(りな)

っ・・・あ、いや、さくらの役に立てて本当に良かったなあて思ってさ

突然歯切れの悪い莉奈に「?」を浮かべるさくらだったが特に気には止めなかった

莉奈(りな)

じゃあ、またなんかあったら教えて!

さくら

うん、おやすみ~

時は流れあの日から5ヶ月が過ぎた

さくら達は蒼斗のお陰で心にもゆとりが持て、充実した生活を送っていた

ゆきが産まれて11ヶ月、ゆきは蒼斗にとても懐きそれはもうパパと娘の様な関係性

今日はさくら、ゆき、蒼斗の三人で公園にピクニックへ来ていた

ゆき

まっま・・・!

さくら

え!?ゆきちゃん!?

さくらは目を丸くした 今まで支えがないと歩けなかったゆきが一人で歩いてこちらへ向かってくるではないか、

蒼斗(あおと)

ひとりで歩いてる

さくら

ゆきちゃん!すごいね!一人で歩けたね!

蒼斗(あおと)

ゆき、こっち、おいで

ゆき

・・・ぱっぱ!

蒼斗(あおと)

・・・!

さくら

・・・!

ゆき

だっこ!

思わず顔を見合わせる二人 ゆきはニコニコ、手を広げ蒼斗に抱っこを求める

さくら

パパなんて教えたことないよね?

蒼斗(あおと)

うん、おしえてない

さくらは不思議でたまらなかった。 蒼斗のことを「パパ」なんて一度も教えたことないのに、ゆきはハッキリと蒼斗を見て「パパ」と発した

さくら

なんでだろ?

蒼斗(あおと)

わかんない

ゆき

ぱっぱ!ぱっぱ!

傍から見たら、間違いなく仲のいい「家族」 しかし蒼斗は父親でもなければ、人間でもない・・・ 人の手によって造られた「人型AIロボット」 それはもう変えようのない事実

さくら

(蒼斗が「AIロボット」じゃなかったら良かったのに・・・)

さくら

(あと一ヶ月か・・・)

始めは長いと思っていた6ヶ月 しかし時間はあっという間に過ぎ去った

システムテスト終了期間まであと1ヶ月ーー

12月25日ーー

今日は「ゆき」が生まれた日、 そしてさくらが初めてママになった日だ

さくら

ゆきちゃん、一歳おめでとう

蒼斗(あおと)

おめでと、ゆき

ゆき

ゆっちゃん、いっちゃい!

プレゼントの大きなクマのヌイグルミを抱え、ゆきは笑顔で人差し指を見せてくれた

さくら

もう一歳かあ~本当に早いね

蒼斗(あおと)

はい、さくら

そう差し出されたのは一輪の薔薇

さくら

え?なに?くれるの?

蒼斗(あおと)

さくら、ママになって、一年

蒼斗(あおと)

おめでとう、がんばったね

さくら

・・・っ

溢れ出した涙は止まらなかった 「がんばったね」 その一言で全てが報われた気がした

辛い想いも、苦しい想いもした しかし、それ以上に嬉しい、楽しい「思い出」も沢山できた それは勿論「蒼斗」のおかげ

ゆき

ままっよしよし

ゆきが涙を流すさくらを心配して頭を撫でてくれた

さくら

ごめんね、ママ大丈夫だからね

さくら

お花もらえたのが嬉しかったの

蒼斗(あおと)

ボク、さくらのこと、ずっと支えたい

さくら

・・・ありがとう

さくら

(でもそれは無理なんだよ)

蒼斗(あおと)

ボクが、壊れるまで、さくらを支える

さくら

嬉しいよ・・・凄く嬉しい・・・けどね

蒼斗(あおと)

ボクは、さくらが、スキ

さくら

え?

さくら

(ロボットに感情は無かったはずじゃ・・・)

蒼斗(あおと)

ボクが、さくらとゆきを守るから

蒼斗(あおと)

あなたのために生きてもいいですか?

確実に蒼斗の中でさくらとゆきに対する 「愛情」という感情が生まれていた

「人型AIロボット」が「意思」を持ったのだ

蒼斗(あおと)

ボクがシステムエラー起こしたんじゃって

蒼斗(あおと)

思ってるでしょ?

さくら

・・・うん

蒼斗(あおと)

そんなの、今に始まったことじゃない

蒼斗がゆっくり話し始めた ゆきに「パパ」と教えたのは自分だと言う事、 さくらに「愛おしい」という感情を持った事を今まで隠していた事を。

さくら

なんで?隠してたの?

蒼斗(あおと)

言ったら、システムエラーでリナの所へ戻されると思った

さくら

私も・・・蒼斗がパパだったらって何度も思ってた・・・でも、莉奈との約束は明日

蒼斗(あおと)

いや、離れない

そう・・・ ゆきが生まれて丁度半年の時に来た蒼斗 一歳の誕生日を迎えた今日でシステムテストは今日で終了なのだ

さくら

私だって、、離れたくないけど

ゆき

ぱぱ!ぱぱ!

蒼斗(あおと)

そうだよ、ゆきのパパは、ボク

ゆきにとっても蒼斗の存在は大きい それは勿論・・・さくらにとっても同じ事

さくら

とりあえず、明日莉奈の所で話しよう

翌日ーー

莉奈(りな)

蒼斗不具合とか大丈夫だった?

さくら

うん・・・その事なんだけど

さくら

蒼斗が「意思」を持ったみたいなの

莉奈(りな)

え!?どういうこと?

蒼斗(あおと)

リナ、ボクはさくらが、スキ

蒼斗(あおと)

さくらとゆきは、ボクが守る

莉奈(りな)

・・・パパ、また失敗しちゃったみたいだね

さくら

え?

莉奈(りな)

蒼斗がシステムエラー起こしてるって事

さくら

それじゃ蒼斗は・・・

さくら

(また莉奈のパパの所で創り直されるの?)

莉奈(りな)

エラーを起こして時間が経ちすぎてるみたいだから直すのは難しいかな

莉奈(りな)

さくら・・・このまま蒼斗の事引き取ってもらえたりしない?

莉奈のまさかの一言にさくらは驚きと喜びを隠せなかった

さくら

え!?ほんとに?

さくら

このまま連れて行ってもいいの!?

莉奈(りな)

(さくら、嬉しそう・・・良かった)

莉奈(りな)

勿論、こっちこそ逆にごめんね?

莉奈(りな)

なんか、押し付けるみたいな形になっちゃって

蒼斗(あおと)

さくらとゆきと、ずっと一緒

莉奈(りな)

そうよ、私に感謝しなさいよ

蒼斗(あおと)

ありがとうリナ、ボクとさくらを出会わせてくれて

莉奈(りな)

(・・・ちゃんとさくらの事守ってあげるのよ)

その後、仲良く帰る二人の後ろ姿をを見送る莉奈は嬉しさに揺れる様な微笑みを浮かべていた

莉奈(りな)

さくらが幸せそうで良かった・・・

お分かりだろうか・・・

全ての黒幕は莉奈

妊娠中から塞ぎ込み、人間不信になる彼女を救おうと考えに考え抜き辿り着いたのが・・・ 「人型AIロボット」

莉奈は全て分かっていた さくらの笑顔が嘘だということ 心から笑えない彼女を救いたい ただその一心だった

そして創り出されたのが 「蒼斗」 さくらだけの為の人工知能

システムエラーなんて嘘 彼女を支え、愛する為に造られたのだから

人間じゃなくてもいいじゃない、 愛のカタチなんて人それぞれでしょ? それが例え「AI」だったとしても・・・

END

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